【ライヴアルバム傑作選 Vol.10】
アリスの偉大さを実感できる
『栄光への脱出〜武道館ライヴ』

『栄光への脱出〜武道館ライヴ』('78)/アリス

『栄光への脱出〜武道館ライヴ』('78)/アリス

シンガソングライターで、アリスのメンバーでもあった谷村新司が10月8日に亡くなっていたことが発表された。今週は当初予定していた原稿を急遽差し替えて、追悼の想いを込めて、アリスの名盤を紹介する。代表作である『ALICE VII』、当コーナーでは2020年に、全国ツアー『ALICE AGAIN 2019-2020限りなき挑戦―OPEN GATE―』のファイナルを前に寄稿したので、今回はアリスが数多く発表してきたライヴアルバムの中から、チャート1位を獲得した作品『栄光への脱出〜武道館ライヴ』をピックアップしてみた。これもアリスというグループの何たるかを見事に収めた傑作である。
■アリスの多彩な魅力が詰まったヒットアルバム『ALICE VII』
https://okmusic.jp/news/371217

日本人初の武道館3日間公演を収録

『栄光への脱出〜武道館ライヴ』は1978年10月5日リリース。1978年8月29日、30日に行なわれた日本武道館でのライヴを収録したものである。この頃は、アリスの勢いがまさに最高潮に達しようとしていた時期だったと言ってもいい。谷村新司はラジオパーソナリティーとして人気を確立していたし、その前年1977年10月リリースのシングル「冬の稲妻」が初めてチャートトップ10入りを果たし、同曲で当時、絶大な人気を誇った音楽番組『ザ・ベストテン』へも出演していたので、アリスはすでに一定の評価を得ていたと見る向きもあろう。だが、アリスの快進撃が本格的に始まったのは間違いなく1978年だ。客観的データがそれを物語る。日本武道館公演に先駆けて、同年4月に発表した6thアルバム『ALICE VI』(1978年)が初のチャート1位を獲得。堀内孝雄のソロ作品として発表されたシングル「君のひとみは10000ボルト」も1位となり大ヒットしている。ファンのみなさんはご存知の通り、この「君のひとみは~」は資生堂のキャンペーンソングとして当初アリスに制作を依頼されたものだったが、谷村が入院を余儀なくされ、アリス側から堀内のソロで…と提案があって実現したものである。歌詞は谷村が手掛けており、ソロ楽曲ではあるものの、その経緯を考えれば、半分アリスの楽曲と言っても大きく間違ってはいないだろう。この『栄光への脱出〜』にも収録されている。

そして、その日本武道館公演。ライヴ収録された8月29日、30日に加えて、翌々日の9月1日にも開催されている。日本武道館3日間公演というのは当時、日本人アーティストとしては初めてのことで、快挙だったと言える。そのわずか1カ月余りで発売された『栄光への脱出〜』も当然のことながらチャート1位を獲得する。同年12月にはシングル「チャンピオン(King of Kings)」をリリース。アリス史上、初めてシングル曲でチャート1位となった。『ザ・ベストテン』でも1位となって、完全にその人気をお茶の間にも広げたと言える。アルバム作品では、以降、7th『ALICE VII』(1979年)、8th『ALICE VIII』(1980年)と、4作品連続で1位となった上、今回調べて分かったことだが、カセットのみで発売されていた(らしい)『BEST NOW』(1977年)、『best10』(1978年)も1位となっていたようである。1978年、アリスは音楽シーンのトップを走っていたのだ。

アリス自体の盛り上がりもさることながら、この1978年下半期頃から音楽シーンの状況も変化している。いわゆるニューミュージックが台頭してきたのも同時期だ。1977年頃までは、年間シングルチャートにおいては演歌、アイドルが上位を占めていたが、この1978年を境に顔触れが変わっていく。トップ20にアリスの他、世良公則&ツイスト、サザンオールスターズの名前も見えるし、1979年になるとそれに加えて、ゴダイゴ、甲斐バンド、桑名正博、松山千春などもヒット曲を送り出している。ちなみに、アルバムチャートでは1975年から井上陽水、荒井由実らの作品は年間売上で上位にランクインされていたので、ニューミュージックの台頭の始まりは1970年代半ばだったと言えるが、シングルチャートでもプレイヤーがチェンジし始めたのは1970年代後半であり、データを振り返る限り、アリスがその先陣を切ったアーティストだったというのは大袈裟な物言いでも偏った見方でもなかろう。

OKMusic編集部

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