ガロが「学生街の喫茶店」後に
発表した『CIRCUS』
THE ALFEEが敬愛を公言する、
そのバンドの本質

『CIRCUS』('74)/ガロ
本質は「学生街の喫茶店」ではない
https://okmusic.jp/news/431559
しかし、半可通以下である筆者はどのアルバムを選んでいいか分からない。「学生街の喫茶店」収録の『GARO2』は件の理由から何か違う気もするし…と思っていると、Wikipediaに[1974年にはコンセプトアルバム『CIRCUS』がリリースされる]、さらには[後期には「ソフトロック」というジャンルにおいて、またアルバム『CIRCUS』『吟遊詩人』ではプログレッシブロック的な、『三叉路』ではハードロック的なアプローチをしたこともあり、ロックバンドとしても再評価されている]とあるのを発見。全収録曲が作詞:阿久 悠、編曲:松任谷正隆の『吟遊詩人』も、ガロ以前に堀内 護、日高富明と共にGSバンドを組んでいた松崎しげるも参加している『三叉路』も興味深く思ったが、今回は『CIRCUS』を選ぶこととした。
『CIRCUS』は「学生街の喫茶店」がヒットし、[その年末には第15回日本レコード大賞大衆賞、第6回日本有線大賞新人賞を受賞。第24回NHK紅白歌合戦にも出場した]翌年の1974年にリリースされた。[「学生街の喫茶店」に相当するヒットには至らなかった]ともあるから、“「学生街の喫茶店」的なガロ”との比較においてもベターではあろうと判断した。今後、機会があれば、『吟遊詩人』も『三叉路』もしっかり聴いて文章にしたためたいと思うが、そういうことでご理解いただければ幸いである。まぁ、言ってしまえば、完全Wikipedia任せで何となく選んだことには違いないのであるが、『CIRCUS』を聴いた瞬間、このチョイスが適切であることをはっきりと確信した(上記の[]は全てWikipediaからの引用)。
ガロの『サージェント・ペパーズ』!?
M2「空中ブランコ」はガロらしい美しいハーモニーから始まるが、テンポといい、柔らかなメロディーといい、穿った見方かもしれないが『Sgt. Pepper's~』の2曲目「With a Little Help from My Friends」を彷彿させる。The Beatlesを参考にしたうんぬんというよりも、軽快な1曲目からややテンポが落ち着いた2曲目につなげるというのは、アルバムの構成として王道なのであろう。そこから、M3「オートバイの火くぐり」、M4「猛獣使い」、M5「ピエロの恋唄」、M6「曲馬団」…と、サーカスの演目さながらに曲が連なっていく。M3、M4はもろにロック。M3がソリッド、M4はややポップとタイプこそ異なるが、いずれもグイグイと迫る。そんな中でも、M4のコーラスワークはさすがだし、それぞれにバイクの音、ライオンか虎の吠える声が前の曲に被り気味に入っているのが、いかにもコンセプトアルバムらしい作りでもある。M5「ピエロの恋唄」で再びテンポがスロー~ミドルになるが、この楽曲での注目はストリングスだろう。M5まででも弦楽器の重ね方が十分に堂に入っていることは分かったが、このように若干サイケデリックな入れ方もするというのは、やはりガロが単なるフォークグループではない証拠と言えるかもしれない。
M6「曲馬団」のヨーロッパ民謡的な感じは、まさにサーカス。悲哀のあるメロディーもいい雰囲気だ。続くM7「なぞの女」がアメリカンフォークというのも面白い。「Norwegian Wood (This Bird Has Flown)」に近い進行を感じたのは、おそらくThe Beatlesのことが筆者の頭に残っていたからだと思うが、歌もギターも滑らかでスムーズに耳に入って来る心地良いナンバーだ。M8「大男の歌」もメロディアスなナンバーで、きれいなハーモニーと細かいギターのアルペジオによるアンサンブルが印象的。かと思えば、サビではヴォーカルの主旋律にエレキギターがユニゾン風に絡む。そして、これもまた絶妙な絡み方をするストリングスもいい感じで、短い曲ながらこのバンドのポテンシャルを感じざるを得ない楽曲と言える。エレキギターが主旋律を引っ張るM9「綱渡り」は少しプログレ風味のインスト。ガロのインストはバンド史上、本作に収められたこの楽曲だけだという。後半で聴こえてくる奥行きのあるコーラスワークはどこかゴスペルチックで、これまたさすがの貫禄と言えるだろう。M9終盤の拍手喝采からつながるM10「この世はサーカス」は、M1「団長のごあいさつ」のリプライズで、この辺からも本作が『Sgt. Pepper's~』の影響下にあることがうかがえる。ストリングスもそうだが、ブラスのアレンジもうまく、ドラマチックに仕上げているので、フィナーレに相応しくもあると思う。