村上“ポンタ”秀一でしか
成し得なかった記念碑的作品
約100人の有名音楽家が集結した
『Welcome to My Life』

『Welcome to My Life』('88)/村上“ポンタ”秀一

『Welcome to My Life』('88)/村上“ポンタ”秀一

今年3月に亡くなられたドラマー、村上“ポンタ”秀一のアルバムを紹介する。1970年代前半からプロとして活動を始め、数多くの有名アーティストのライヴ、レコーディングをサポートしてきた氏。レコーディング総数は1万4,000曲以上と言われる日本を代表するトップドラマーだ。そうしたサポート参加作品以外でも、そのキャリアのスタートである赤い鳥、自身のバンド、PONTA BOXの他、さまざまなユニットで音源を残してきた氏だが、その偉大さを知ってもらうには、『Welcome to My Life』が最も分かりやすいのではないかと思う。

デビュー25周年記念の超豪華盤

村上“ポンタ”秀一(以下ポンタ)のデビュー25周年を記念して1998年に発表されたアルバム『Welcome to My Life』。長らく廃盤になっていたようであるが、先月、再プレスされた模様だ。高値で取引されることもあったそうなので、ようやく適正価格で購入できることを喜んでいるファンも多いではないだろうか(ネット上ではまだ高値が付いているところもあるようなのでご注意を)。というか、音楽ファン、特に日本のポップス、ロック好きを自認する人であれば、この機会に本作を手に入れないという選択はないのではないかとも思う。決してマニアックな作品ではないので、一家に一枚あってもいいのではないかと、やや大袈裟かもしれないがそう思ったりもする。

以下で収録曲を解説していくが、その前に言っておくと、山下達郎、矢野顕子、井上陽水、大貫妙子、沢田研二、忌野清志郎、桑田佳祐(※並びはアルバム収録曲順)という日本音楽史にその名を遺す、これだけのヴォーカリストたちがゲスト参加したアルバムは間違いなく本作だけだ。ギタリストにしても、白井良明、CHAR、仲井戸“CHABO”麗市、渡辺香津美、高中正義と(※並びはアルバム収録曲順)、レジェンド級ばかりが並ぶ。主だった方の名前を挙げただけでもインパクトは相当だろう。CDの裏ジャケに参加ミュージシャン全員がずらりと紹介されていて、その様は圧巻である。しかも、本作は深夜のTVショッピングで紹介されている“昭和のベストヒット”みたいな既発曲を集めたコンピレーションではなく、ほとんどがカバー曲ではあるものの、本作用のセッションを収録したものだ。おおよそ20年前だったとはいえ、それにしてもこれだけのメンバーを集めるのは尋常じゃなかっただろう。この事実だけでも、いかにポンタが大勢のアーティストに可愛がられ、慕われていたのかが分かろうかと言うものだろう。

ここから『Welcome to My Life』を解説していくが、そうは言っても、“このヴォーカルのシャウトが…”とか“流れるようなギターソロが…”とか細かく述べる必要もないと思う。もちろん、気になった箇所は取り上げるが、多分“ここが…”“あそこが…”とやっていくとキリがない。いつものように詳細は語らない。特に歌詞に関しては割愛する。また、楽曲毎に参加ミュージシャンが異なるだけでなく、ジャンルもスタイルも異なるので、例えば、“M2とM7とで見せるベースにこの人らしさが光る”みたいな分析もできないというか、あんまり意味がない気もするので、楽曲毎にその概要を含めて説明していくのがいいと思う。その方が、駄文をこねくり回すよりも、本作ならびにポンタの凄さがより伝わるはずである。

1.JACO PASTORIUS MEDLEY

【参加ミュージシャン】バカボン鈴木(Ba)、佐山雅弘(Key)、三沢またろう(Per)、ヤヒロトモヒロ(Per)、村田陽一(ソリッドブラス)、村田陽一(Trb&B.Tb&Euph)、山本拓夫(B.Sax&B.Cl&Picc)、本田雅人(A.Sax)、竹野昌邦(T.Sax)、小池修(S.Sax&T.Sax)、西村浩二(Tp)、荒木敏男(Tp)、佐藤潔(C.C.Tu)
音楽ファンならその名を知らない人はいないであろう、天才ベーシスト、JACO PASTORIUSのカバー(「SOUL INTRO」~「THE CHICKEN」~「ELGUANT PEOPLE」~「LIBERTY CITY」)。ド頭の音からすでに圧巻。その超豪華ブラスセクションと対峙して会話するように叩かれるポンタのドラムの何と軽快なことか。ピリリと効いたパーカッションもさすがの存在感を示している。

2.I WANT YOU BACK

【参加ミュージシャン】NOKKO(Vo)、白井良明(Gu)、バカボン鈴木(Ba)、佐山雅弘(Pf)、斉藤ノブ(Per)、亀淵友香(Chor)、MOCA(佐藤涼子、三松亜美、窪田玉緒)(Chor)
 The Jackson 5のデビュー曲…というよりも、米国モータウンレーベルを代表するナンバー。NOKKOの歌声が子供の頃のMichael Jacksonにそっくりなのも驚き。演奏もカバーというより完コピといった代物だ。

3.TRAVELLING

【参加ミュージシャン】近藤房之助(Vo)、Char(Gu)、バカボン鈴木(Ba)、佐山雅弘(Pf)
 サックスプレイヤー兼キーボーディストのRay Gaskinsのナンバー。これをライヴの定番曲にしている近藤がPONTA BOX、Charとともに行なったセッションだ。ラストの笑い声は近藤だろうか? 演奏の満足度が相当に高かったことがうかがえる。ギターソロに沿ったドラムのフィルが示す高揚感がたまらない。知らない人も多くなってきたかもしれないので、念のために説明すると、近藤は「おどるポンポコリン」のB.B.クィーンズの髭のヴォーカリスト。

OKMusic編集部

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