【ライヴアルバム傑作選 Vol.8】
THEE MICHELLE GUN ELEPHANT
らしいライヴの空気が
頭から最後まで詰まった
『CASANOVA SAID “LIVE OR DIE”』

『CASANOVA SAID “LIVE OR DIE”』('00)/THEE MICHELLE GUN ELEPHANT
各メンバーの卓越したプレイ
本作でもそれらは確認できる。アベのギターはTMGEサウンドの主役とも言えるものであって、本作でも随所で聴けるが、個人的にとても彼らしいと感じるのは、前半ではM2「ヤング・ジャガー」の間奏明け、M4「ソウル・ワープ」の1番と2番のブリッジ部分で聴こえてくるカッティングだ。右手をストロークさせるだけでなく、弦をかきむしっているかのような印象を受ける。おそらくコードを抑えている左手の力の入れ具合や、もしかすると右手も、例えばピックの持ち方とか、何か彼独自の工夫があったのかもしれない。あの高速で弦が擦れる音はアベフトシにしかできない奏法だった。とりわけM4は、DJのスクラッチノイズさながらで、そのカッティングで刻まれる音はギターとはまた別の楽器のニュアンスもあって、本当にすごいギタリストだったことを偲ばせる。
M2「ヤング・ジャガー」はベースもいい。ドラム~ギターに続くチバのシャウトから本格的にイントロが始まるが、そこで響くベースラインもまたウエノならではと言っていい。派手な動きながらも突飛な印象はなく、まさに楽曲の土台と言える低音部を堅持しながら、終始、楽曲を引っ張っていく。艶めかしいと表現してもいいかもしれない。メロディー的要素も兼ね備えているという点ではベースらしいベースと言えるのだろう。
手数が多いというか、忙しない印象のあるギター、ベースに対して、リズムはどうかと言うと、クハラのドラムもこれまた忙しい。しかしながら、ドラムがバンドの要であることを決して忘れることなく…と言ったらいいか、彼が司るリズムは正確無比。その上、スネアに限らず、シンバルもタムもバスドラムも、音がキビキビしている。抜けがいいという言い方もできるだろうし、音ひとつひとつがダラッとしていないと言えば想像してもらえるだろうか。前半ではM5「コブラ」、後半ではM16「ピストル・ディスコ」がいい。M5は楽曲全体がグイグイと迫っているのは間違いなくドラムの推進力によるところだろうし、M16は跳ねた印象のドラミングがちょっと面白く、決して直線的なだけでなく、クハラならではのニュアンスも感じられる。
チバの歌に関しては──その歌詞の持つ意味(?)のようなものについてはのちほど述べるとして、彼のハスキーな歌声とメロディーの相性は圧倒的だと思う。これもまたどれもこれも、それこそ本作に限らず、TMGEのどの音源でも確認できるところだが、本作はライヴ盤だけあって、スタジオ盤に比較して圧力や勢いといったものがより生々しく感じられる。個人的にはM3「ダスト・バニー・ライド・オン」に注目した。メロディー…というほどには歌の旋律に抑揚はなく、言葉を連呼している感じに近いパンクナンバーだけれども、それだけにチバの声がジャストフィットしているような気がする。また、全体的にシャウトが多いのもライヴアルバムならでは…で、その肉声が何か他の楽器の一部(例えが適切かどうかはともかく、サンバにおけるホイッスルとか)のように感じられて、楽曲全体を底上げしているかのようにも思ったところだ。