『湘南乃風〜Riders High〜』に見る
4人のキャラクターとグループの本質

『湘南乃風〜Riders High〜』('06)/湘南乃風

『湘南乃風〜Riders High〜』('06)/湘南乃風

5月20日、湘南乃風にとって約2年振りとなるニューアルバム『湘南乃風 ~四方戦風~』が発売となった。関東、関西でも緊急事態宣言が解除されつつあるものの、巷は依然と鬱々とした雰囲気が支配している。湘南乃風の新作がそんな暗い空気を少しでも解消してくれることを期待したいところだ。当コラムでは、彼らが初めてチャート1位を獲得したジャパレゲエの金字塔的作品『湘南乃風〜Riders High〜』をピックアップしてみた。

4つのソロ楽曲の個性

とてもよくできたアルバムで、湘南乃風というのは一グループとして優秀であることもよく分かった。これが『湘南乃風〜Riders High〜』を聴いての率直な感想だ。言い換えれば、極めてキャッチーなアルバムとも言えるだろう。自分のような半可通でも、湘南乃風がどういうグループであるか──音楽性、スピリッツ、メンバー構成とそれぞれの個性までが、これを一枚聴けば全てが分かるとまでは言わないまでも、大体掴むことができる。自作を名刺代わりと表すアーティストがたまにいるが、本作について言えば、名刺代わりどころか、スペック入りのカタログや取扱説明書の代わりという気すらしてくる。そういう作品であると思う。以下、ファンにとっては分かり切ったことだとは思うが、その『湘南乃風〜Riders High〜』のキャッチーさを記していきたいと思う。

本作にはメンバー4人のソロ楽曲が収められている。本作に限らず、湘南乃風の全てのアルバムがそうであるから、それがことさらに『湘南乃風〜Riders High〜』の特徴ではないのだが、これは重要である。湘南乃風というグループはメンバーが4人で、それぞれの個性=キャラクターがちゃんと分かるからである。そんなことを言うと、湘南乃風のファン以外にも“何を当たり前のことを!?”と叱られそうだけど、これができているグループは案外少ない。メンバーのソロ楽曲を入れて“とりあえずやってる感”(?)を出すことは多々あると思うが、ここまでしっかりと入れてきているのは珍しいと言える。ていうか、しっかりとソロをやるなら、最近ではグループとは別のところで別個にやるだろう。湘南乃風の4人はもともとソロで活動していたし、グループ結成後もソロワークを欠かしていない。それなのに、こうしてグループのアルバムにソロ楽曲を入れるということには、そこに何らかしらのメッセージがあると見るのが素直な受け取り方であろう。それが何なのかを端的に述べるよりも、各ソロ楽曲を並べてみるのが分かりやすいと思う。

《Do you love reggae music? All right》《何はともかく相当デカく鳴らした"Boom Boom Bass"/乗って明るい未来へ繋げてくれと 今は亡き Bob marley が/俺らに残したヒントは? もちろん"One Love"》《死ぬまで叫ぶ"I love reggae"/人生全て こいつのおかげ だから決して忘れない んで渡さない》《マジ変えてやるぜ ジャパレゲ行くぜ 世界へ》(M6「サンクチュアリ」)。

《全力で遊べ 全力で働け 天国で笑うため/結局ごまかしてみたって 虚しいだけだろ/さぁ 笑いたきゃ笑えばいいさ 気にせず踏み出す お気に入りのビーサン/バカにする奴らはみんな 熱くなれる俺らがうらやましいんだ/好きな事しよう 本当に 今日も明日もGo for it/女神も踊る Big Wave に乗ってけ》(M8「晴れ波とSong」)。

《Oh… 負けたくねぇから/Oh… 全て捨てる覚悟はある》《野良犬達よ決して群れるな 弱いなんて誰でも同じさ/怖いから群れんじゃなくて 群れるから弱くなってるんだ》《首輪なんて付けたくねぇ俺 戻れる場所など求めちゃいねぇ/前しか向けなくなってもいいよね 走り続ける荒野で》《社会の中で勇敢に生きる 野良犬達にエールを送る/怒鳴り合う声で存在示す お前は逞しく見える》(M10「犬の唄」)。

《届くまで歌い続けるよ/長い夢は時々お前を不安にさせるけど/孤独はね 誰にでもあるもの/その寂しさよ いなくなれ》《そう俺は夢追うミュージシャンって/カッコつけてみたって/裏を返せばその日暮らし/悔しい時間持て余すだけの男さ》《泣き出しそうでも 投げ出しそうでも/震える小さな手をグッと抱き寄せるよ/泣き出しそうでも 投げ出しそうでも/大丈夫! 俺に任せてゆっくりとおやすみ…》(11「ワンルーム」)。

OKMusic編集部

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