藍坊主がデビュー作にして
如何なく“自分らしさ”を掲げた、
瑞々しさあふれるアルバム
『ヒロシゲブルー』

『ヒロシゲブルー』('04)/藍坊主

『ヒロシゲブルー』('04)/藍坊主

今週は2023年5月24日に藍坊主の約4年振りのミニアルバム『月の円盤』がリリースされるとあって、彼らのデビューアルバムをピックアップした。2004年にメジャーデビューし、2011年には日本武道館公演も実現。CDチャートでトップ1獲得とか、アリーナツアー慣行とか、そういう派手な動きはないものの、確実に良作を送り出しているバンドである。単に筆者が好きなバンドなので、当初はコーナー内コーナーである【独断による偏愛名作】で紹介しようかとも思っていたけれど、それは現役で活動しているバンドに失礼な対応であると思い、レギュラー名盤として取り上げることにした。

小田原出身の幼馴染で結成

まずはちょっと思い出話。筆者が最初に藍坊主のライヴを拝見したのは、彼らがまだインディーズの頃。さすがに日付は覚えていないが、インディーズでのアルバム『藍坊主』の発売が2003年2月で、今回紹介するメジャーデビューアルバム『ヒロシゲブルー』が2004年5月ということは、その間だったと思われる。ライヴが終わってから関係各位に挨拶した時に“間もなくメジャーが決まりそう”だったか“トイズファクトリーにほぼ決まった”だったか、そんな話をしたことをわりと鮮明に覚えており、2004年だともうメジャー進出は決まっていただろうから、そのライヴはおそらく2003年だったのではないかと思う。2003年と言えば、バンド界隈では俗に言う“青春パンク”がブームとなっていた時期である。175Rの「ハッピーライフ」や「空に唄えば」がチャート1位になり、FLOWが海援隊の「贈る言葉」のカバー曲を発表したのも同年である。藍坊主にしても、今もWikipediaのジャンルのひとつに“青春パンク”とあるので、少なくとも当時はその括りで紹介されていたはずで、自分もそういう見方だったと思う。

地元のイベンターさんだったか、当時の彼らのマネージャーさんだったか、これも忘れたけれど、“小田原出身、幼馴染同士の活きのいいバンド”みたいな誘い文句があってライヴハウスに足を運んだんだと思う。正直言って、その演奏を見て雷に打たれたような衝撃を受けた…みたいなことはなかったが(ごめん)、歌のメロディーがしっかりとしたいバンドで、ヴォーカルも上手いと思ったことはちゃんと覚えている。とりわけ、『ヒロシゲブルー』にも収録されているM10「空」の印象が強く、ライヴが終わったあとで、そのイベンターさんだったかマネージャーさんだったかにその辺を伝えた記憶もある。たぶん“ひと口に青春パンクと言ってもいろいろあるんだな”とか思ってたんだろう。勝手にひと括りにしておきながら勝手に結論付けるとか酷い話ではある。

その後、メジャー3rd『ハナミドリ』、4th『フォレストーン』でメンバーにインタビューさせてもらう機会が訪れて、変なカテゴライズをすることはまったくなくなったわけだが、メロディーのいいバンドというイメージは新しい音源を聴いても薄れることはなかった。藍坊主にはhozzy(Vo&Gu)と藤森真一(Ba)というメインコンポーザーがふたりいる。両者ともに優れたメロディーメーカーである。両名が切磋琢磨しているという見方もできるかもしれない。たぶん、そうだろう。強いて言えば──『ヒロシゲブルー』を題材にして敢えてその特徴を述べさせてもらえば、hozzyはフォーキーであり、藤森はポップス寄りということができるだろうか。これはhozzyがヴォーカリストであって自分自身が歌うことが大前提であり、藤森の場合は自分が歌わないというところでの差異があるのかもしれないと少し思ったが、まぁ、それは個人的な感想で、実際のところはよく分からない。ただ、藤森が関ジャニ∞や水樹奈々などにも楽曲提供していることから、あながち的外れでもないかもしれない。

OKMusic編集部

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