THE MAD CAPSULE MARKETSが1996年に
発表した、国内ラウドシーンを触発、
牽引した誉れ高き名盤『4 PLUGS』

90年代初頭からメジャーフィールドで闘い続けたTHE MAD CAPSULE MARKETS。現在活躍中のバンドマンにも多大な影響をもたらしてきた革新的なサウンド、国内に止まらず海外に切り込んでいく行動力といい、彼らが開拓した道のりと功績は計り知れない。今回はその栄誉を讃え、数ある作品の中から国産ラウドのルーツ的一枚と言える『4 PLUGS』を紹介したい。

 現在、coldrain、SiM、CROSSFAITHなど新世代ラウド勢が衆目を集め、シーンを活気付けている。その源流は誰なのか。諸説あるだろうが、やはりTHE MAD CAPSULE MARKETS(以下MAD)の名前をハズすわけにはいかない。日本のラウドバンドで逸早く市民権を得たバンドと言っても過言ではない。前身バンドのBERRYの頃にRED HOT CHILI PEPPERS、MADと名を変えてからRAGE AGEINST THE MACHINEなど海外バンドのオープニングアクトを数多く務めた実績は評価したい。というか、この手のバンドの前座をやるからには、それ相応の音楽性を掲げてなければ声はかからないだろう。また、海外にも積極的に打って出るスタンスは、冒頭で上述したバンドにも絶大な影響を与えている。とりわけ、OZZY OSBOURNEがオーガナイズする2002年の『Ozzfest』に日本人として初めて出演した際は大きな反響を呼び、個人的にも誇らしい気分になったことを覚えている。
 バンドは1991年に3枚同時シングルでメジャーデビュー。ここがとても重要である。アンダーグラウンドに潜らず、コアな音でも正々堂々とメインストリームで勝負を賭ける。その潔さから他のバンドとは毛色が違った。音楽的にはザ・スターリンなどパンクからの影響を色濃く感じさせるサウンドでスタート。作品ごとに音楽性を広げ、雑食性を増していく。パンク精神はそのままに、ハードコア、ヒップホップ、ファンク、グランジ、ヘヴィロックなど我流に昇華し、逸早くデジタル音も導入したのもMINISTRYなどのインダストリアルロックから刺激を受けていたに違いない。90年代前半はロックとヒップホップのアーティストがコラボした名盤サントラ『JUDGEMENT NIGHT』、さらにRAGE AGAINST THE MACHINE、KORNとイキのいいアーティストがシーンのど真ん中を大手を振って闊歩していた時代だ。その波を敏感にキャッチし、ラウドロックの肌触りを見事に取り入れたMADのようなバンドは他にいなかった。
 そして、混濁したミクスチャーの面白さと、鼓膜をつんざくヘヴィな極太グルーブで聴き手の脳天を打ち砕いたのが、1996年に発表された傑作『4PLUGS』だ。KYONO(Vo)は荒々しいシャウトと瞬発力のあるラップを巧みに表現し、演奏は生音とデジタルを共存させたラウド/ミクスチャー音で楽曲クオリティーも申し分のない仕上がりだ。ギラギラした衝動、バネのように跳ねるリズム、地を這う激重グルーブ、そこに練り込まれたキャッチーなメロディセンスは群を抜いたオリジナリティーを放っている。そのバランス感覚が冴えた「神歌KAMI-URA」は、ライヴでモッシュ&ジャンプの光景を透けて見える躍動感満載の名曲だ。冷たいデジタル音と哀愁ダダ漏れのメロディーが絡み、一気にスパークする「ノーマルライフ」のロマン漂うドラマ性も白眉。それ以外にも当時ライヴで重要なレパートリーとなった佳曲が多数収録されている。その翌年1997年に『DIGIDOGHEADLOCK』(こちらも傑作!)を発表。揺るぎないデジタルハードコアを叩き付け、どこから聴いてもMADという強烈な個性を獲得した。その布石という意味でも、ヤスリで削る前の武骨な爆発力が『4PLUGS』には満ちあふれている。90年代後半に日本のラウド/ミクスチャー・バンドが雨後の筍のごとく出てきたが、間違いなくMADを通過し、そこにヒントを得て、鳴らし始めたアーティストたちは数知れない。海外進出、洋楽と連動したラウドな音像において、MADは残した遺産はとてつもなく大きい。Hi-STANDARDが復活した今、希望的観測を込めて、復活がもっとも待たれているバンドと言えるだろう。

著者:荒金良介

OKMusic編集部

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