MARCHOSIAS VAMPの
『乙姫鏡』に刻まれた
完成されたグラムロック・
バンドのスタイル

『乙姫鏡』(’90)/MARCHOSIAS VAMP

『乙姫鏡』(’90)/MARCHOSIAS VAMP

平成がそろそろ終わるということで、それになぞらえて何か名盤を選べないかと考えて、今回はMARCHOSIAS VAMPをチョイスした。その理由は以下にクドクドと述べたのでそれをご参照してほしいが、彼らは現在まで続く音楽シーンの多様性──その礎を担ったバンドのひとつ。デビュー当時も高い評価を受けたバンドではあるが、令和を迎えても再評価されてしかるべき音楽性を持った偉大な存在だと思う。

平成初の音楽的ブーム“イカ天”

平成も残すところ2週間余り。テレビのバラエティー番組では“ヒット曲で振り返る平成”みたいな企画が散見される。多くのアーティストがLPを制作せずCDのみを発表することになったのが1990年代前半=平成元年以降。そして、音楽CDの生産金額が国内過去最高を記録したのが平成10年(1998年)で、以降は減少の一途であることはご存知の方も多いのではないかと思う。つまり、音楽業界的に振り返れば平成はCDの普及で始まり、その衰退で終わった時代と言えるかもしれない。

ちなみに、欧米に比べて日本では今ひとつ延びていない音楽ストリーミングサービスではあるが、昨年2018年には売上高でダウンロードを超えたというニュースもあり、令和はおそらくストリーミングの時代になるのであろうという予感はある。

多様なアーティストが平成を彩ってきた中、平成を代表するジャンルやカテゴリをひとつに絞るのはなかなか難しい作業ではあるけれども、あえてこれひとつを挙げるとすると、1989年の『三宅裕司のいかすバンド天国』、通称“イカ天”が起こしたムーブメントを推したいところである。番組自体、平成元年2月のスタートであり、そもそも『平成名物TV』という番組の1コーナーであったわけで、それだけでも平成の音楽史を語る上で欠かせないトピックではあろう(?)。

まぁ、それは半分冗談としても、まさしく新しい時代を迎えてから始まった深夜番組であり、しかも開始当初は関東ローカルとあって、冒険的、挑戦的な音楽番組であったことが思い出される。審査員の判断によって完奏できるかどうかを決めるシステムと、そこを勝ち抜いたチャレンジャーが前週でキングに選ばれたバンドと対戦するゲームのようなスタイルがウケたことがヒットの要因であろうが、番組の盛り上がりによって、それまでは世間一般に広まることがなかったバンドたちを巷に紹介したことは“イカ天”の大きな功であろう。所謂“バンドブーム”の到来である(第二次バンドブームとも言われる)。

800組以上のバンドが今で言う地上波のテレビ番組でオンエアされたが、それによってひと口にバンドと言ってもさまざまなタイプ、スタイルがあることを知らしめたこと──バンドの多様性、バラエティーさを示したことが何よりも大きい。その象徴は14代目イカ天キングであり、5週勝ち抜いて3代目グランドイカ天キングになった、たまであろう。その楽曲とビジュアルに通底するアングラ感、非大衆性からすると、いかに音楽性が特異なものであったとはいえ、はっきり言わせてもらえば、当時にしてもよくぞ世に広まったものだと思わざるを得ないが、たまはシングル「さよなら人類」でメジャーデビューし、NHK紅白歌合戦へも出場したのだから、ブームの破壊力は絶大だった。その他、歴代イカ天キングの顔触れを見ると、FLYING KIDSやJITTERIN'JINN、BEGIN、BLANKEY JET CITYら、日本の音楽史、ロック史にその名を残すバンドばかりだが、ザッと見渡してもバラエティー豊かな顔ぶれで、“イカ天”がけん引したブームはやはりバンドの多種多様さ、種々雑多さを示して、のちのシーンに大きな影響を与えたと言える。

OKMusic編集部

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