『グレイテスト ビーナス』/GO-BANG'S

『グレイテスト ビーナス』/GO-BANG'S

GO-BANG'Sの
『グレイテスト ビーナス』は
ガールズバンドのひとつの到達点

ガールズバンド華やかし現在のミュージックシーンの礎を築いたバンドのひとつ、GO-BANG'S。コンポーザー、パフォーマーとしていかんなくその才能を発揮した森若香織が中心となって、谷島美砂、斉藤光子とともに活躍した3ピースバンドである。忌野清志郎がアマチュア時代の彼女らのデモテープを聴いて気に入ったことがGO-BANG'Sデビューのきっかけだったと言われているが、その逸話にも十分頷けるほど、そのメロディー、歌詞、サウンドのいずれにもR&Rスピリッツを隠し持つ才女たちである。

ガールズバンドシーンの
礎を作ったバンドのひとつ

 SCANDAL、ねごと、赤い公園等、音楽性もキャラクターも異なるバラエティー豊かなガールズバンドが揃う現在の日本ロックシーン。30年前、バンド自体がメインストリームに居ることさえままならず、メンバー全員が女性という編成自体が珍しかった頃を知る者にとってはまさに隔世の感がある。80年代半ばにプリンセス プリンセスやSHOW-YAの台頭によってガールズバンドがシーンに定着し、現在につながっているわけだが、メンバーが読者モデル出身のSilent Sirenや、(バンドではないが)長身のレディスドラマー、シシド・カフカの活躍を見ていると、否が応にも思い出すのはGO-BANG'Sだ。まぁ、GO-BANG'Sのドラマーである斉藤光子が長身でファッションモデルもやっていたことからの連想なのだが、彼女らもまた現在まで続くガールズシーンの礎を作ったバンドのひとつである。

 個人的には、女性だけのバンドとして初めて日本武道館でライヴを行なうなど大ブレイクを果たしたプリンセス プリンセスよりも、ハードロック路線でバンド然としたルックスのSHOW-YAよりも、GO-BANG'Sをよく聴いていた記憶がある。当時そんな言葉はなかったが、所謂サブカル文系男子はそんな傾向だったのではなかろうか(筆者はサブカルだったかどうか分かりませんが、間違いなく文系&非体育会系でありました)。
 90年にアルバム『グレイテスト ビーナス』でチャート1位獲得したGO-BANG'S。ここにも収録されているシングル「あいにきて I・NEED・YOU」の印象から一般リスナーからは一発屋のイメージでも見られているようだが、彼女らのディスコグラフィーを見ると、「あいにきて I・NEED・YOU」が突出したヒット曲で、むしろこれが特異であったことが分かる。『グレイテスト ビーナス』までに、インディーズ時代を含めて8枚、それ以後は94年の解散まで6枚のアルバムを発表している。活動期間約10年間でアルバム15枚とは多作であったし、GO-BANG'Sがどの程度の全国ツアーを展開していたか資料が残っていないのではっきりした回数や規模は分からないけれども、筆者の住んでいた街にも来ていたことを覚えているから、基本のバンドスタイルはアルバム制作とライヴという極めて真っ当なロックバンドではあったようだ。それ故か当時のファンの中には『グレイテスト ビーナス』や「あいにきて I・NEED・YOU」のヒット時には「GO-BANG'Sが手の届かないところへ行ってしまった」と嘆いた人もいたとかいなかったとか──。

OKMusic編集部

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