NEWEST MODELの雑種魂を詰め込んだ、
ロックのハイブリッド進化『CROSSBR
EED PARK』

“バラエティーに富んだアルバム”といった煽り文句はよく見受けられるが、本来は今作のような作品を形容する言葉だろう。ソウル、ファンク、ジャズ、フォーク、カントリー、沖縄音楽、そしてロックンロール。『CROSSBREED PARK』はさまざまな要素をごった煮にして、ポップかつダンサブルに仕上げた邦楽ロックアルバムの大傑作だ。発表から四半世紀を経てもなお、これほど豊潤なサウンドは他ではなかなか聴くことができないと思う。

 “ミクスチャー・ロック”という言葉は所謂和製英語で、海外では通じないということだ。筆者はそれを最近知ったのだが、その日本で言うところのミクスチャーロックとは、概ねラップ+パンク、メタル+ファンクなどといった音楽性を漠然と指していると思われるので、そりゃあ伝わらないだろうとも思うし、そもそもロックとはミクスチャー=混合の音楽なので、ミクスチャーロックは“頭痛が痛い”や“後で後悔する”みたいなものではないかとちょっとひねくれた物言いのひとつもしたくなった。エルヴィス・プレスリーが黒人の音楽であるリズム・アンド・ブルースと白人の音楽であるカントリー・アンド・ウェスタンを混ぜ合わせたのがロックンロールの始まりとも言われているし、その米国人の創造した新しい音楽に憧れた英国のバンドがビートルズである。ローリン・ストーンズもジミ・ヘンドリックスもクリームもレッド・ツェッペリンもロックンロールにブラック・ミュージックを混ぜたし、例を挙げたら枚挙に暇がない。
 日本においては、はっぴえんど以降、日本語でロックをやっているバンドは全てミクスチャーではあると思うが、こと日本の場合は “洋楽コンプレックス”なる概念が潜んでいたりして、これがちょっとひと筋縄ではいかない感じでもある。もともとロックは欧米発祥のものであるため、国内のバンドの多くは洋楽への憧れを払拭できず、メロディーと歌詞──つまり、歌は日本調でも、音色やリズムは洋楽のまま…なんてものも少なくなかったと聞く。70年代(だったと思う)の音専誌に以下のような内容のコラムがあったと聞いたことがある。とある外タレが来日公演を行なった際、その楽曲に合わせて手を打つ観客の拍手が頭打ちであったことを指摘し、「それはおかしいので止めよう。後打ちにしよう」といった提言だったそうだ。ロック黎明期の日本ならではの珍記事としてなかなか興味深いが、評論筋がそんな状態であったということは、国内シーンの状況も推して知るべしといったところだろうし、少なくとも旧世紀中はそれをなかなか払拭できないでいたと思う。
 1985年結成のNEWEST MODELはその洋楽コンプレックスを拭い去った数少ないバンドと言うことができる。当初はパンクバンドと言われていたものの、89年のメジャーデビュー作『ソウル・サバイバー』からモータウンやニューオリンズ・サウンドを取り入れるなど、所謂パンクバンドとは完全に一線を画す存在であったが、その翌年にリリースしたメジャー2ndアルバム『CROSSBREED PARK』でレッドゾーンを振り切るかのようにその才能を全開。ロックバンドとしての勢いはそのままに、実に豊潤なサウンドを完成させた。ソウルフルでファンキーなM1、そこに沖縄民謡を加えたM2、アイリッシュなM3と、冒頭からバラエティーに富んだ楽曲群が畳み掛ける(超余談だが、このM1~2は2曲でワンセットとの趣がある。タイプこそ異なるが、さながらビートルズの「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」から「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ」、あるいは「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」から「ペニー・レイン」のつなぎに近い印象だ。NEWEST MODELのベスト盤でも「ひかりの怪物」「みんな信者」は連続しているし、ビートルズの青盤でも上記ナンバーはつながっている。余談でした)。M4で再びファンク、フォーキーなM6、ソウル+カリプソ=ソカのM8、M10でジャズ、M11でカントリー・ミュージック、M5とM12ではロックバンド然とした重いギターサウンド──単にそのジャンルを演奏するのではなく、さまざまな要素を組み合わせており、ハイブリッドと呼んでいい様相だ。CROSSBREED=雑種とはよく付けたものである。それでいて、それらはギミックを意識した実験的なものなんかではなく、あくまでもポップでダンサブルな作品に仕上がっている。聴いていて単純に楽しいし、発表から25年を経た今でもアガるアルバムだ。これが最も素晴らしいと思う。強いて付け加えれば、個人的には、どことなく日本土着のメロディーやリズム、楽器の音色を隠しているのが、『CROSSBREED PARK』、いやNEWEST MODEL最大の特長であり、他に比類なきすごさだと思っている。彼らの作り上げたものは、世界中のどこにもなかった、堂々たるオリジナルの日本のロックであったと思う。NEWEST MODEL=最新モデルの名は伊達ではなかったのである。
 本作は歌詞もいい。《そいつの憎むべきは そいつの心の中/頭をかえて 家を離れたら あー つまらない 自分が見えるだろう》(M2「みんな信者」)。《いろんな奴がいるのも ええじゃないかって気分さ》(M8「雑種天国」)。《あーこの島じゃ忘れそう 元来全てが同じということを》(M11「乳母車と棺桶」)。サウンドに呼応するようなスピリッツが貫かれている。中川敬(Vo&Gu)はインタビューなどで反権力的な発言も多く、それゆえに好き嫌いがはっきりと分かれるアーティストである…とは当時から言われていたが、その思想がどうあれ、自らの主張を貫き、(ここが重要だが)やはりそれをポップさに乗せて展開しているのはすごいことだと言わざるを得ない。例を挙げた上記フレーズにしても非常にキャッチーに耳朶を打つものばかりだ。政治的なメッセージを歌に込める音楽家は世界中にいるが、真摯にそれを伝えたいと願う余りに…だろうか、攻撃性が強くなりすぎたり、どこか辛気臭さが抜けないものも少なくないと思う。だが、中川敬のそれは、その内容にシンパシーを得るかどうかはともかく、東西の老若男女が素直に口ずさめる、分かりやすさがある。繰り返しになるが、これも『CROSSBREED PARK』、いやNEWEST MODELのすごさであろう。
 ご存知の方も多いだろうが、その後、NEWEST MODELは次作『UNIVERSAL INVADER』のリリース後、それまでお互いの創作活動に参加し続けてきた盟友、メスカリン・ドライヴと統合するかたちで、新バンド、ソウル・フラワー・ユニオンを結成。有言実行。自らも混ざりものに進化した。95年の阪神大震災の際に被災地を回り、チンドンスタイルで戦前の流行歌や民謡を演奏したことは音楽ファン以外にも知られている(この際のユニット名はソウル・フラワー・モノノケ・サミット)。この被災地を巡る中で生まれた名曲「満月の夕」は、その後、多くのアーティストにカバーされ、歌い継がれている。それはNEWEST MODELから続いているCROSSBREED=雑種の精神が今もなお衰えていないことの証左でもあろう。NEWEST時代、中川敬は「ジョン・レノンは25歳の時に『Rubber Soul』を作っているというのに、同い年の俺たちに何でそれができないのか!?」とメンバーに発破をかけていたということだが、そこから20余年。幾度かのメンバーチェンジはあったものの、ソウル・フラワー・ユニオンを母体にさまざまなスタイルで表現活動を続ける中川敬は、決してジョン・レノンに劣ることのない音楽家だと思う。日本のロックアーティストとして世界に誇りたい人物のひとりである。

著者:帆苅竜太郎

OKMusic編集部

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