FLATBACKERがその特異なる
メタルサウンドで、
後世に大きな影響を与えた
『戦争 -アクシデント-』

『戦争 -アクシデント-』(’85)/FLATBACKER

『戦争 -アクシデント-』(’85)/FLATBACKER

今週は先日、Gargoyleの4人体制でのラストライヴを見たこともあって、久々にジャパメタシリーズを復活。日本のHR/HM史上において今も異彩を放つFLATBACKERの音源をチョイスしてみた。活動期間は短く、約5年間しかメジャーにいなかったFLATBACKERだが、海外挑戦、解散後のメンバーの去就を含めて、音楽シーンにおける重要バンドのひとつであろう。

札幌から現れた先鋭的HR/HMバンド

9月6日、Gargoyleのライヴを観た。この日を最後にメンバー4人のうち3人が脱退。結成31年目にして彼らが大きな転機を迎えるとは思ってもみなかったが、KIBA(Vo)が独り残るかたちでバンドは存続するとのことなので、脱退したメンバーも含めて、今後にも注目したいところだ。

和テイストを取り入れた音楽性&ビジュアルで、1980年代後半から1990年代前半のインディーズシーンにおいて異彩を放ったGargoyle。その発足時のコンセプトはどんなものであったのか。元メンバーでバンドの首謀者であった与太郎(Gu)に、それをストレートに尋ねたことがある。すると、彼は以下のように語ってくれた。

「当時、FLATBACKERに脳天を叩き割られた感じだったんですよ。まだ若く単純だったんで、“これしかない!”と思ったんですね」「最初は和音階というより何か変わった音使いで“面白いなぁ”くらいだったんですが、それがコアな音色で鳴っているのがドはまりしましたね(笑)。歌詞も強烈でしたし(笑)。で、自分も和音階的でやっても面白そうだなと、わりと単純な考えでしたよ」。

歌詞とヴォーカルのメロディーについてはKIBAに任せていたというから、全面的にFLATBACKERから影響を受けていたということはなさそうだが、好きなくともギターは多大な影響を受けていたようである。確かにそれを色濃く感じさせる楽曲もある。31年間、バンドとして休むことなく活動を続けたGargoyleも偉大だが、そのルーツのひとつと言えるFLATBACKERとはどんなバンドであったのか。

FLATBACKERは1982年、北海道札幌市にて結成された(当初は“FRATVACKER”という表記だったという)。最初の音源である7曲入りデモテープ『皆殺し』を発表したのが1984年。1stアルバム『戦争 -アクシデント-』がリリースされたのが1985年。日本における本格的なヘヴィメタルのブームはLOUDNESSがデビューした1981年から、EARTHSHAKERや44MAGNUM、MARINOら関西勢が盛り上がってきた1983年頃だと思うが、FLATBACKERはそれに続く世代と言える。また、ヘヴィメタルが多様化してきた頃で、東京・大阪だけでなく、全国各地から精鋭たちが現れてきた頃でもあり、まさしくそれを体現したバンドでもあった。先鋭的だったと言い換えてもいい。いや、言葉を選ばずに言うならば、ちょっと変なバンドという見られ方もしていたようだ。

遠藤ミチロウ直伝の歌詞世界

最初の音源のタイトルが“皆殺し”というのが何しろすごいが、『戦争 -アクシデント-』収録曲のタイトルもまたすごい。M5「追放」やM6「宣戦布告」辺りは、当時は“おやっ!?”と思うリスナーもいただろうが、今となるとその攻撃性も十分に理解できる範疇だけども、M3「ミミズ」、M9「なだれ」は今も他の追随を許さない独創的な楽曲名であろう。筆者は見ても聴いてもいないのだが、映像作品には『Burst 1986・巨大豚破裂』という、極めて興味深いタイトルもあるようで、“ちょっと変な”とした形容はあながち間違ってもいないように思う。

歌詞はほぼMASAKI(Vo)が手掛けていたようだが、彼は遠藤ミチロウからの影響を公言していたということだから、そうした作風も十二分にうなずける。「ミミズ」や「Burst 1986・巨大豚破裂」はもろにミチロウ的である。もう“なるほどなぁ”と納得するしかない。今も残る当時のFLATBACKERのアー写を見ると、MASAKI以外のメンバーも目の周りに隈取があり、それはのちに“E・Z・O”と改名して以降の出で立ちから歌舞伎をモチーフとしていると見る向きがあるが(それはそれで間違ってはいないだろうが)、少なくともMASAKIに関しては遠藤ミチロウへのリスペクトがあるだろう。髪の立て方からもそれが分かる(2nd『餌 -ESA-』のジャケ写は特にそうだ)。

FLATBACKERが遠藤ミチロウから影響を受けていたことが分かったが、ミチロウが当時の音楽シーンに一大センセーションを起こしたザ・スターリンを結成したのが1980年。そのメジャーデビューが1982年だから、時系列を頭に置くと、さらに興味深いことも分かる。今のリスナーにはにわかに信じられないかもしれないが、その昔、ヘヴィメタルとパンクは相反する要素であり、それを相容れないものと考えるリスナーも少なからずいた。そもそもイデオロギーが違っていた。ヴォーカリゼーションも含めて比較的テクニックを必要とするメタルに対して、根底にDIY精神があって初心者でもわりと簡単にやれてしまうパンク。メタルはなびかせた長髪にロンドンブーツだが、パンクは短髪を立てて安全靴(この頃はまだラバーソウルが一般的ではなかったように思う)。肉体的な小競り合いがあったような話はあまり聞いたことはないが、お互いを蔑視するメタラー、パンクスは一定数いたように思う。

そんな時代において、HR/HMにパンクを融合させたFLATBACKERは実に懐が深いバンドではあったということができる。これは筆者の想像であり確証はないのでそう思って聞いてほしいが、これには彼らの出身地、活動拠点が札幌であったことも関係しているように思う。この頃、東京た大阪では出演するバンドのジャンル、動員によってライヴハウスの違いが生まれつつあったようで、とあるバンドマンからそんな話を聞いたことがある。しかし、もともとライヴハウスが多くない地方は別の話。地元のアマチュアバンドなら、HR/HMとパンクが対バンするなんてこともあっただろう。ことさら蔑視しなければ、ジャンルを横断してさまざまな音楽を吸収できたに違いない。

また、首都圏のように人口が多くない都市では優れたミュージシャンも多いわけではなく、ある程度のスキルを持ったバンドを組もうとすると、ジャンルにこだわらなくなってくる…というと流石に大袈裟だが、ボーダレスになる傾向はあったようだ。上手いメタルのドラマーがビートロックバンドに誘われて掛け持ちした、なんてことを聞いたことがある。当時、バンドが世に出るための手段としては、コンテストに出て上位となるというスキームがわりと主流ではあったので、そういうこともあったのだろう。FLATBACKER結成の背景にそうしたことがあったのかどうかは定かではないが、その音楽性は東京や大阪からは出現し得なかったのではないか。北海道だったから彼らの音楽性は生まれたという仮説を勝手ながら推奨したい。彼らはのちに改名したバンド名、E・Z・Oは北海道の旧国名、“蝦夷”から付けたものなのだから。

HR/HMの様式美にとらわれない音楽性

ここからは肝心のFLATBACKERの音楽性を、1stアルバム『戦争 -アクシデント-』から探っていこう。まず、これもまた今となっては、それこそフォロワーのひとつとも言える初期Gargoyleが披露しているので、その界隈を知るリスナーにとってはことさら珍しく思わないかもしれないが、やはりSHOYO(Gu)が操るギターのコード感、音階は格別だ。キャッチーだがポップではなく、メロディアスだが音色はズシリと重い。和風というか、アラビアンな雰囲気の旋律も多く、楽曲全体に強烈な印象を与えている。どれがと言うわけではなく、収録曲の全てがそんな感じといっても過言ではない。

ギターがヴォーカルと拮抗している様子も面白い。注目したのはM7「アクシデント」とM9「なだれ」。いずれもBメロで聴かせるギターは所謂バッキングというよりは、《複数の旋律を、それぞれの独立性を保ちつつ互いによく調和して重ね合わせる》対位法と言っていいではないかと思う(《》はWikipediaより引用)。M9「なだれ」では頭で吹雪の音などのSEを配している上にどこか民族音楽っぽいジャングルビート風のドラムスも聴けるところから考えると、その思想はプログレッシブロック寄りなのかもしれない。ちなみにM10「カムフラージュ」もイントロからして、変拍子気味…というわけではないが、面白いリズムが聴けて、若干プログレ風味を感じられる。

どれもこれも単純なHR/HMではなく、とても面白いのだが、再注目をひとつ挙げるならM6「宣戦布告」を推したい。アップテンポで、それ自体はスラッシュメタル辺りを彷彿させるものなのだが、Aメロのヴォーカルパートにメロディーの抑揚がほとんどない。ラップっぽいというと流石に語弊があるが、歌というよりは歌詞の朗読に近いだろうか。サビでハイトーンに展開するにはするのだが、それにしてもメロディーを追っているというよりは“叫び”といった雰囲気で、そのスタイルだけで見たら全体的にはハードコアパンクに近い楽曲と言えるかもしれない。FLATBACKERが様式美にとらわれない彼ら独自の音楽性を追求していたことがよく分かる事例であろう。

ヴォーカリスト、MASAKIの存在感

上記説明だけだとFLATBACKERは単純なHR/HMでないというより、まったくHR/HMではないと思われる読者も少なくないかもしれないが、彼らは紛うことなきヘヴィメタルバンドである。それは一重にMASAKIのヴォーカリゼーションによるところが大きい。レンジが広く、突き抜けるようなハイトーンは正しきメタルバンドのヴォーカルと言った面持だ。それでいて独特のウエット感を有し、ワイルドにも情感たっぷりにも歌い分けることができる。その歌のポテンシャルがなければ、分厚いバンドサウンドに拮抗できなかったことはもちろんだし、歌詞にしても上滑りしていたに違いない。

《ゲロを吐き出すなら 死んだほうがましだぜ/何処を見回しても 逃げ口などないんだ/腐った女にすがり ほら捜すんだ/欲望の吐け口》《地を這うミミズでさえ 俺にとっちゃ手ごわい/そうさ おいらは ちょっと弱気になっている/卑しいガキに殴られ 輝くナイフ握り/奴の首 締め上げ》《歯をくいしばり 顔をゆがめて 放り出せよ/血染めの過去 かなぐり捨て 走り去れよ》(M3「ミミズ」)。

最高にインパクトがある上記「ミミズ」だけでなく、《You! a block head!/堪らない 節操のない 馬鹿面が/You! a block head! /たて続け メスブタ追い掛け 人間選び》と叱責しつつ、《いい加減にしなさいよ/今に 痛い目にあうわよ》とお姉言葉も飛び出すM1「ハード・ブロウ」も、《雪崩を呼んだ俺たち》《誰も止められない 止めることはできない》と大変興味深い比喩を見せる(M9「なだれ」)も、MASAKIでなければ今も音源に残るシリアストーンに収まらなかったとも思われる。MASAKI はFLATBACKERがE・Z・Oに改名し、その解散後、第3期、第4期LOUDNESSにも参加している(2000年に脱退)。その日本のメタルシーンにおいてなくてはならない圧倒的な存在であったことは早くからFLATBACKERが証明していた。

さらに付け加えると、HIRO(Dr)も樋口宗孝が脱退したあとの第4期LOUDNESSに加入し、2001年には再結成したANTHEMに参加。彼もまたメタルシーンの重要人物であったし、ミュージシャンを引退したSHOYOとTARO(Ba)は、SHOYOは米国で実業家として成功、TAROはレコード会社のA&Rディレクターといった具合に、全員が解散後の経歴も半端ないFLATBACKERなのであった。

TEXT:帆苅智之

アルバム『戦争 -アクシデント-』1985年発表作品
    • <収録曲>
    • 1. ハード・ブロウ
    • 2. デスウィッシュ
    • 3. ミミズ
    • 4. ダンス
    • 5. 追放
    • 6. 宣戦布告
    • 7. アクシデント
    • 8. ガス
    • 9. なだれ
    • 10. カムフラージュ
『戦争 -アクシデント-』(’85)/FLATBACKER

OKMusic編集部

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