日本のロックバンドの矜持を詰め込ん
だライヴアルバムの歴史的名盤、RCサ
クセションの『RHAPSODY』!

忌野清志郎率いる“KING OF LIVE”RCサクセション。彼らの代表作にこのアルバムを挙げることに異論のある人はいないはずだ。

邦楽ロック、メジャー化の転換点

RCサクセションの名盤紹介を…と言われて、“時節を鑑みれば、反原発ソングが収録されている『COVERS』かな?”とか、“個人的にリアルタイムで最もリピートしたという点では『BEAT POPS』だろう”とか、“変化球かもしれんが、『the TEARS OF a CLOWN』もいいぞ”とか、“『ザ・タイマーズ』もいいな。…いや、待て。アレはTHE TIMERSで、RCサクセションじゃねぇや”とか、アレコレ思案したのだが、RCサクセションの名盤一枚となれば、これはどう考えても『RHAPSODY』だろう。ロックバンドとしてのRCサクセション像を確立したアルバムであるばかりか、本作は邦楽ロックのメジャー化の転換点と言っても過言ではない。サザンや永ちゃんはすでにヒット曲を出し、欧米から逆輸入されるかたちでイエロー・マジック・オーケストラがブームになっていたとはいえ、まだまだ歌謡曲全盛で、R&Rにはっきりした日本語を乗せるバンドは少なかった1980年。一見取っ付きづらそうな、グラムロックからの影響を色濃く映すエキセントリックな風貌の男は、ソウルやブルースといった洋楽を下地にしながらも、“これが俺たちの音楽だ”と言わんばかりに自らの言葉をメロディーに乗せて堂々と歌った。日本の音楽シーンにおいてはすでに洋楽コンプレックスは払拭されつつあった頃だとは思うが、バンド編成になったRCサクセションが放ったサウンドはその決定打だったのだろう。この後年、横浜銀蝿やハウンドドッグ、あるいはチェッカーズや吉川晃司らがチャートを賑やかし、80年代後半にバンドブームを迎えることと無関係ではないどころか、その起点だったとすら思う。

ライヴあってのロックバンドである

また、まさに“よォーこそ”と、その自らが発信する音楽を聴きにライヴへ来てくれる者たちを歓迎し、受け入れてくれる作品であったことも、邦楽ロック史的には大きなポイントだろう。本作がライヴアルバムであるのは、スタジオ録音だと勝手に音をいじられてしまう可能性があり、メンバーがそれを恐れたためだったと言われているが、ロックというエンターテインメントにおいてライヴは欠かせない…というか、ライヴあってのロックバンドであるのは今も当たり前の考えであろうが、このアルバムを聴けばそれは一目瞭然、いや、一聴瞭然である。しかも、わずか9曲しか収録されていないにもかかわらず、開放的なオープニングチューンから疾走感ある2曲目につながり、途中ミディアム~スローナンバーを挟んで、馴染みあるヒット曲、会場が一体となって盛り上がるアッパーなナンバーでフィナーレという、今でも多くのロックバンドが定番にしているライヴの型がここにある。インターネットはおろか、ビデオすら普及していなかった時代である。頻繁にライヴへ行けるはずもなかった田舎の学生にライヴステージの空気感を伝えるには充分すぎる説得力があった。

聴く者を新たな世界へ誘う覚醒装置

そんな中からベストテイクを挙げろと言われれば、やはり01.「よォーこそ」に尽きる。凄まじいまでのグルーブ感で奏でられるR&Rに、この時点でのメンバーを紹介する歌詞を乗せたナンバー…と言ってしまうと簡単だが、ライヴのオープニングで演奏されてこそ輝きを放つ楽曲がまさに瞬間パックされているのが「よォーこそ」だ。この楽曲については“すごい!”のひと言で片付けたいくらいのだが、強いてそのすごさを言葉にするならば、“どこかに連れて行ってくれる”感覚がビシバシあるところだと思う。仲井戸“チャボ”麗市の“OK! Come On リンコ・ワッショー!”のシャウトからの林小和生のベースライン…からの各パートが密集していく様子、その広がりいくさまはバンドサウンドの豊かさ、大袈裟に言えばロックバンドの持つ可能性を雄弁に語っているThe Beatlesの『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』や『Magical Mystery Tour』がそうであったように、単にそのアルバムの導入というだけではなく、聴く者を新たな世界へ誘う覚醒装置である。清志郎はここで“久保講堂へよォーこそ”と歌っている通り、久保講堂で収録されたライヴ音源であるのは間違いないが、『RHAPSODY』を聴く時、おいらたちは何か得体の知れない亜空間に誘われた。そして発売から約35年を経た今聴いても同じ感覚が蘇る。やはり“すごい!”のひと言である。「よォーこそ」をジェイムス・ブラウンのパクリだとか揶揄する声もあるようだが、したり顔でそんなことを言う奴は相手にしないほうがいい。そいつは木を見て森を見ない典型。はっきり言って阿呆である。
収録曲について若干補足すると、セックス(=「雨あがりの夜空に」)、ドラッグ(=「キモちE」)があるという革新的、いや確信的なスタンスも実に素敵だ、

この時にしか生まれなかった“何か”が
ある

ちなみに、2005年には本作の完全版である19曲収録の『RHAPSODY NAKED』が発表されている。こちらには後にスタジオ録音盤に収録される「ロックン・ロール・ショー」や「たとえばこんなラヴ・ソング」「いい事ばかりはありゃしない」等も収録されており、中でも金子マリ参加のナンバーはソウルフルでとても素晴らしいし、ファン垂涎の音源であることは間違いないのだが、(あくまでも個人的な感想だけど)一作品の完成度は9曲入りのオリジナル『RHAPSODY』のほうが上だと思う。1970年にデビューしたものの、その後10年近く不遇な時期を過ごしてきたRCサクセション。1978年頃からロックバンドにスタイルを代えて、1979年にはそれまで古井戸のメンバーだった盟友・仲井戸“CHABO”麗市が加入し(チャボの加入が発表された古井戸の解散コンサートが久保講堂だったというのも何かの縁だろう)、ライヴハウスの動員が増えたことで再デビューとなるのだが、アルバムを出すにあたってはシーンに矜持を示す必要があったことは推測するに難くない。それに最も相応しいものはライヴである。しかし、端から映像作品など考えられるはずもなく、LP盤に収録できる時間には限界がある。では、どうすればいいか? 制作前に忌野清志郎は逡巡したに違いない。そんな与えられた条件の下でできることを最大限にやった結果に出来上がったものが『RHAPSODY』だと思う。時代や条件が異なっていたら生まれなかったセンス・オブ・ワンダーが備わっていると言おうか、周波数を超えた“何か”がオリジナル盤にはある。そうそう、『RHAPSODY』は仲井戸麗市加入後の最初のアルバムでもある。

求む、新世代のライヴアルバム!

さて、RCサクセション(ていうか、忌野清志郎)のフォロワーを挙げるとなると、それこそ枚挙にいとまがない。どんなアーティストがいるか知りたい人は、デビュー30周年記念のトリビュートコンサートを収録した『RESPECT!』(CD、DVD)や、映画『忌野清志郎 ナニワ・サリバン・ショー〜感度サイコー!!!』(DVD)で確認できるのでこちらをおすすめしたい。というよりも、本稿を書いていて思ったのは、最近はいいライヴアルバムがない…というか、ライヴ盤そのものがないということ。そりゃあ、ビデオが普及してからというもの、ライヴ音源は映像付きで出すのが当たり前になっているからなんだろうが、ライヴアルバムにはライヴアルバムにしかない味わいがあるのは間違いない。『RHAPSODY』以降も、BOØWY『“GIGS”JUST A HERO TOUR 1986』や尾崎豊『LAST TEENAGE APPEARANCE』、BLANKEY JET CITY『LIVE!!!』等、ライヴアルバムの名盤はリリースされているが、その後あまり振るった印象がない。直近ではザ・クロマニヨンズが『ザ・クロマニヨンズ ツアー 2013 イエティ 対 クロマニヨン』があり(昨年12月発売)、“あの人たちは分かってるなー”って感じではあるが、ヒロト&マーシーはそろそろ30年選手なわけで、それもさもありなん…ではある。世界に通用する新進気鋭のアーティストも増えている昨今の国内ロックシーン。ここらでいいライヴアルバムを制作するバンドは出てこないものだろうか? ニッチなニーズはあると思うぞ。

著者:帆苅竜太郎

OKMusic編集部

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