ゼリ→、衝撃のデビュー作
『RODEO★GANG』に
音楽的センスの萌芽と
揺るぎないスタンスを窺う

『RODEO★GANG』('00)/ゼリ→
スタッズ革ジャンのパンクバンド
その後、何度もライヴを拝見させてもらったが、そこで披露された本作収録曲は、いい意味でずっと印象が変わることはなかった。この時点でのゼリ→はある意味で完成されていたのかもしれない。というのも、ファンならばご存知のことと思うが、2nd『NO NEED』以降、彼らのビジュアルもサウンドも変わっていく。革ジャンとジーンズでなくなっただけなら、“まぁ、暑い時は仕方がないだろう”くらいに気にも留めないだろうが、音楽的なアプローチはどんどん変化していった。いや、それは進化もしくは深化だったと言うべきだろう。アッパーなナンバーがまったくなくなったわけではないが、ミドル~スローテンポも演奏するようになり、そればかりか、いわゆる8ビートや4ビートだけでなく、リズムも多彩になっていった。5th『青空は突っ立ったまま眠っている』(2004年)でファンクの乗りを取り入れた時、筆者は若干面食らったけれど──それはデビューのインパクトが強く筆者の意識に焼きつきすぎていて、それ故にその進化、深化の速度にうまくついていけなかったからだが、後期はもはや単純にパンクバンドと呼べない存在となっていった。それもまたカッコ良かったことは強調しておきたい。
さて、今回ゼリ→の名盤を紹介するにあたって、個人的にもインパクトが強かったこともあるし、何しろデビュー作にしてチャートトップ10入りを果たした作品ということで『RODEO★GANG』を選んだ。解散後、メンバーは新たなバンド、LAID BACK OCEANを結成して、そこではいち早くピアニストをメンバーに取り入れ(ちなみにピアノロックバンドとしては、●●●●や○○○○よりも結成は早い)、まさに彼らならではと言っていいオリジナリティーあふれるサウンドを構築するに至ったわけで、その始祖であるゼリ→がどうであったかを紹介することに意味があると思ったからだ。言ってしまえば、“ヤンチャなバンドマンが20年経ってこうなりました”という成長具合を示すことができるのではないかと、わりと簡単に考えて本作をチョイスしたのが正直なところである。だが、改めて『RODEO★GANG』を聴いてみると、随所にのちの才能の萌芽が感じられる。なかなか興味深いアルバムであることを再発見することができた。以下、その点に留意しながら本作を解説していこうと思う。