「島唄」で日本を代表するバンドとな
ったTHE BOOM、その音楽性の起点とな
った『JAPANESKA』

「島唄」「風になりたい」等のヒットで国内外にその名を知られるバンド、THE BOOM。「この4人でやれること、やるべき事は全てやり尽くした」と2014年いっぱいでその活動に終止符を打つ。残念ではあるが、彼らが音楽シーンに残した確かな足跡はこれからも色褪せることはないだろう。THE BOOMの特徴は世界中の音楽を巧みに取り入れた多彩なサウンドにあるが、その方向性はデビューまもない頃から試行錯誤を繰り返す果てに確立された。本稿では彼らの音楽性の起点とも言える3rdアルバム『JAPANESKA』を検証する。

 THE BOOM が2014年12月で解散する。解散理由は「今年5月21日のプロデビュー25周年を目の前にして、ふと立ち止まってみると、この4人でやれること、やるべきことは全てやり尽くしたのではないかという思いが心を支配するようになりました。そして、その声に頷く自分たちがありました」ということだが、これまで宮沢和史(Vo)のGANGA ZUMBA のほかメンバー個々にもソロ活動があり、THE BOOMは決して継続的な活動をしてきたバンドではないものの、彼らと同時期にデビューしたバンドのほとんどが今は活動していないか、活動しているにしても一度解散していたりする人たちが多い中、結成から28年間、宮沢、小林孝至(Gu)、山川浩正(Ba)、栃木孝夫(Dr)という不動のメンバーで活動し続けた実績は称えられてしかるべきだろう。「この4人でやれること、やるべきことは全てやり尽くした」という思いは偽らざるところではないかと思うし、その台詞に対しては「お疲れ様でした」という言葉しか浮かばない。
 一般的なTHE BOOMのイメージは…というと、やはり「島唄」になるだろう。2006年、中学校英語教科書に掲載されたり、国内外の多くのアーティストにカバーされたりと、少なくとも00年代の日本を代表する楽曲であることは間違いない(個人的には将来、平成を代表するナンバーになるのではないかと思う)。また、「風になりたい」を連想する人も少なくないだろう。未だに根強い人気を誇る楽曲で、最近までCMで流れていたような気もするので、邦楽のスタンダードナンバー化したと言っても過言ではないだろう。正直言って筆者もデビューから毎作品THE BOOMを聴いていたわけではないので、「島唄」「風になりたい」がまず浮かぶ、所謂半可通ではある。だが、半可通であるものの(もしかすると、半可通であるから?)、THE BOOMは決して「島唄」「風になりたい」だけのバンドじゃないし、そのイメージだけで語るのは少々もったいないという思いもある。教科書にその名が載ったり、国際的なイベントに出演したり、それはそれで疑う余地もない偉業であり、功績なのだが、彼らは元々ホコ天での活動からスタートしているのだ。誤解を恐れずに言えば、どこかアカデミックな匂いすら漂っているTHE BOOMではあるが、本来(という言い方をしていいのか迷うところではあるが)陽気でポップなバンド──そう、ロックバンドなのである。
 半可通ながら、そんなTHE BOOMのもう一面を知ってもらいたいと思いつつ選んだのが3rdアルバム『JAPANESKA』である。2nd『サイレンのおひさま』とどちらにしようか迷った末、コンセプトアルバムというだけあって、こちらのほうがまとまりがあると思い軍配を上げた(4thアルバム『思春期』はあえて外しましたが、これもなかなか興味深い作品なので未体験の方は是非。「島唄」は『思春期』が初出です)。『JAPANESKA』は沖縄音階を取り入れ、後の「島唄」のプロトタイプとも言われている「100万つぶの涙」で幕を開ける。三味線の音も目立つが、基本はバンドサウンドだ。軽快なテンポで、オープニングから景気のいい感じがよい。続く「過食症の君と拒食症の僕」はポップなカントリーナンバー。ヴォーカルのフェイクも楽しく、これも景気がいい。そして3曲目「逆立ちすれば答えがわかる」はスカである。デビュー時のTHE BOOMと言えばスカのイメージがあり、このナンバーは初期THE BOOMの王道と言った印象すらある。もちろん、これも弾けるようなポップさである。1~3曲目のドライブ感は『JAPANESKA』の肝だろう。前半にアップチューンを固めることで、この後に続く、ミディアムチューン「川の流れは」のドラマティックなメロディー、そしてTHE BOOM史上、屈指の名曲「中央線」の柔らかく奥行きのあるメロディーがより際立って聴こえる効果を生んでいるのではないかと思う。この中盤のメロディアス連発はとてもいい。「中央線」はメロディーだけでなく、後半に向けて密集していくサウンドアレンジも素晴らしい出来栄えだ。
 リコーダーの音色が耳に残る、ポップというよりもファニーなミディアムナンバー「夜道」、まさにウキウキさせるような軽快なシャッフルのリズムが心地良いアップチューン「ウキウキルーキー」と、所謂B面も景気のいいスタート。そこからラストまでの流れもいい。まず、ダイナミックなバンドサウンドが特徴なレゲエの「おうちバイバイ」、スリリングなバンドアンサンブルで迫る、これもまた名曲の「ルティカ」、そして唱歌風でたおやかなメロディーの「からたち野道」と、“よくもまぁ、これだけバラエティー豊かに仕上げたな”と思うほど、いい意味でバラバラであるが、それがアルバム内での抑揚につながっている。「ウキウキルーキー」と「おうちバイバイ」で上げ、「ルティカ」で最高潮に達したテンションを「からたち野道」で受ける並びはホント素晴らしい。
 沖縄、カントリー、スカ、フォーク、レゲエ、ロック、唱歌と、このアルバムの良さは、ジャンルの多彩さはもちろんのこと、メロディーやテンポを加味した上で、それらを見事に構成しているところだと思う。聴きやすい──というのとはまたちょっと違うが、『JAPANESKA』は1枚のアルバムとしてまとまりを意識してあると言ったらいいだろうか。「日本人であること、日本に生まれて日本で生きていることを音楽で出したかった」とは発売当時のメンバーのコメントだが、本作の雑多さも几帳面さも日本人らしい。このアルバムは歌詞も興味深い。THE BOOMと言えば、やはり前述の「島唄」や「風になりたい」のイメージから──これもまた誤解を恐れずに言うが、万人受けする言葉を発しているバンドと思われている方も少なくないかもしれない。確かに「中央線」や「からたち野道」には上記代表曲に通じる作風を感じるが、「過食症の君と拒食症の僕」「逆立ちすれば答えがわかる」「夜道」「ウキウキルーキー」辺りのシュールかつシニカルな表現は、所謂一般的なTHE BOOMのイメージにはないものではないだろうか。しかし、初期THE BOOMを知る者にとってはこれもまたTHE BOOMらしさと認識しているはずだ。この視点はロックバンドらしいとも言えるし、日本人らしい視点であり、表現であるとも言える。そんなアルバム『JAPANESKA』は、その後のTHE BOOMの音楽的変遷を語る上でも重要な作品であり、多くの人に聴いてほしい名盤である。

著者:帆苅竜太郎

OKMusic編集部

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