『Johnny Hell』は
浅井健一にしか醸し出せない
独特なロックの世界に
魅せられる傑作アルバム

『Johnny Hell』('06)/浅井健一

『Johnny Hell』('06)/浅井健一

2月2日、浅井健一&THE INTERCHANGE KILLSのライヴアルバム『Mellow Party-LIVE in TOKYO-』がリリースされたということで、今週は浅井健一のソロ作品をピックアップした。1980年代後半、BLANKEY JET CITYとしての活動以来、常に日本ロックシーンの最前線で活躍を続ける、日本を代表するロックシンガーである浅井健一のすごさについては何を語っても蛇足となってしまうかもしれないけれど、本作に限らず、バンドマンのソロ作品にはバンド時代とは異なる味わいがある一方で、ソロになっても変わらずに、そのアーティストの揺るぎない核心がより強く宿るもの。その辺を個人的な思い出も含めて書いてみた。ちなみに当サイトには『Mellow Party-LIVE in TOKYO-』のインタビューも掲載されているので、是非こちらもどうぞ!
■浅井健一&THE INTERCHANGE KILLSインタビュー
https://okmusic.jp/news/458825

浅井健一的磁場はデビュー時から不変

何だろう、この感じは? 問答無用にカッコ良い、浅井健一のアルバムとしか言えないアルバムだと思う。かの糸井重里氏が付けたスタジオジブリ映画『紅の豚』の有名なキャッチコピー“カッコイイとは、こういうことさ。”じゃないけれど、このアルバムにはカッコ良さが詰まっている。そもそも浅井健一というアーティストが徹頭徹尾そうなのだろう。カッコ悪さを微塵も見せない人なんじゃなかろうか。何なら、この人が持っている磁場は、周りにあるダサいものさえもカッコ良くしてしまうのではないかと思ってしまうほどだ。

そこでちょっと個人的な思い出話。BLANKEY JET CITY(以下、BJC)時代の楽曲に「D.I.Jのピストル」というナンバーがある。アルバム『C.B.Jim』の3曲目。こんなフレーズで始まる。《メロンソーダとチリドッグ/そいつがあれば/生きて行けると/思ってるオレは/ケツの青い/最新型のピストル》。最初に聴いた時、まぁシビれた。初めてBJCに出会って以来、何度目かの “何だろう、この感じは?”という衝撃だった。それからというもの、チリドッグのあるショップでは必ずと言っていいほどチリドッグをオーダーするし、もちろんドリンクはメロンソーダにしている筆者である。実年齢はすでに結構なものになっているのだが、そこはケツの青いままだ。メロンソーダとチリドッグは最高にロックなコンボとして自分に刷り込まれている。どんなバーガーショップであれ、そこで仮にメロウなオールディズが流れていても、そのコンボをオーダーした瞬間からBGMはグレッチの音に変わるのだ(と、ちょっとカッコつけてみても何か今ひとつなのは、当人の貫禄のなさがそのまま文章に出るからだろう)。メロンソーダとチリドッグという、おそらくアメリカではありふれたケミカルなドリンクとジャンクフードを、まるで別次元の食べ物のようにカッコ良く思わせてくれたことは間違いなく、BJCであり、浅井健一である。筆者と似たような思いを抱いたことがある人は案外少なくないのではないかと思う。

ちなみに、お笑い芸人、バイきんぐの小峠英二氏の愛車は1960年代のシボレーだそうで、それはBJCのメンバーが古いアメ車や単車に乗っていたことに影響を受けたからだという。車を買ったら最初にかける音楽はBJCと決めていたというから筋金入りだ。で、実際にかけたのは「D.I.J.のピストル」。う~ん、小峠氏、間違いなく信用できる男だ。氏もバーガーショップでは必ずメロンソーダとチリドッグをオーダーしているに違いない。

OKMusic編集部

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