横浜銀蝿の『ぶっちぎり』は
日本のサブカルに
ヤンキーカルチャーを根付かせた
決定的一枚

『ぶっちぎり』('80)/THE CRAZY RIDER 横浜銀蝿 ROLLING SPECIAL
邦楽史に名を残すヤンキーバンド
初出からわりと時間を置いて実写映像化されたヤンキーコミックには『クローズ』という前例もある。『今日から俺は!!』ほど長いスパンではなかったが、1998年に連載が終了し、そこから約10年後に初の実写映像化作品である映画『クローズZERO』(2007年)が公開された。そこから『クローズZERO II』(2009年)、『クローズEXPLODE』(2014年)と、映画独自の続編も制作された上に、それがまたコミカライズされ、現在まで続く息の長いシリーズとなっている。コミックのスピンオフも少なくないばかりか、『クローズ』の続編である『THE WORST』はEXILE TRIBEの『HiGH&LOW』シリーズとコラボレーションを実現。『クローズ』シリーズは、その映画『HiGH&LOW THE WORST』以前から、アパレルやフィギュアとのコラボも積極的に行なっており、この辺もまさしくヤンキー文化の浸透、その証のひとつと見ることもできるだろう。
このまま漫画『ビー・バップ・ハイスクール』から那須博之監督版の映画の話に突入して、城東工業のテルと“ボンタン狩り”について延々と語りたいところなのだが、当コラムは邦楽名盤紹介であるから、残念ながら(?)話題を音楽へと進めよう。ヤンキーの存在は当然、日本の音楽シーンにおいても無視できるものではない。今、その筆頭と言えばやはり氣志團だろう。平成生まれにしてもさすがにこれが氣志團のオリジナルと思っているような人はいないだろうが、氣志團がメジャーデビューした2002年でも巷で彼らのようなリーゼント姿を見かけることはほぼなくなっていたので、氣志團は現在のこのスタイルの筆頭というよりも、音楽業界でのヤンキースタイルはもはや彼らの独壇場と言っていい。
ただ、昭和生まれの方にはご理解いただけれると思うが(昭和60年辺りだと厳しいかもしれないが)、氣志團はその遅れてきた正統なる系譜であって、日本の音楽シーンにおけるヤンキーアーティストのアップデイト版と言える存在である。彼ら以前にもヤンキーなアーティスト、バンドはわりといた。地元でヤンキーやってて音楽活動を本格化させる内にファッション的にはヤンキーを脱した…なんて人を含めると相当数いたと思うし、たぶん今活躍しているバンドにもそれなりにいるんじゃなかろうか。結論から言えば、ヤンキーなバンドの元祖はキャロルであろうし、その親衛隊からバンドと成ったクールスもそのひとつだろう。一応、諸説ある…と断っておくけれども、たぶんそれが最有力説であろう。だが、自らヤンキーであることを明確にシーンに示したという観点で言えば、THE CRAZY RIDER 横浜銀蝿 ROLLING SPECIAL(※以下、横浜銀蝿)以上にヤンキーバンドらしいヤンキーバンドはいないと思う。横浜銀蝿がいなかったら氣志團はなかった…とまでは言わないけれども、少なくとも今のようなビジュアルではなかったことは間違いなかろう。その継承の意味でも重要な存在ではあるし、暴走族で使われていた専門用語などヤンキー文化を日本語ロックに持ち込んだ特異性、独自性において邦楽史にその名を残す存在である。
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