GREAT3のデビューアルバム
『Richmond High』は
名うての3人の瑞々しい
アンサンブルが詰まった秀作

『Richmond High』('95)/GREAT3
ロックシーンに欠かせない3人
そして、そういうアーティストの作品は、当たり前のように早い時期から優れたものが多いことを知らしめたかったのだ。言い回しが失礼であったことは認めざるを得ないけれど、テレビのバラエティー番組がやりがちな“あの人は今”みたいな悪趣味なことをやりたかったわけではないので、努々誤解なさらぬようお願いしたい。どうして上記のような見苦しい言い訳から始めたかというと、今週のGREAT3においても若干先週と似たようなニュアンスが出てしまう恐れがあるので、事前に悪しからずご了承いただきたいからである。
そういうことでGREAT3である。今回紹介する『Richmond High』リリース時、つまりデビュー時のメンバーを記す。片寄明人(Vo&Gu)、白根賢一(Vo&Dr)、高桑圭(Vo&Ba)の3名である(2012年に高桑が脱退し、現在はjan(Vo&Ba)がバンドの一角を担っている)。この3人の中のひとりでもピンと来たら、あなたはわりと音楽通であろう。GREAT3自体に誰もが知るようなヒット曲はない。これはWikipedia情報なので正確ではない可能性があるが、これまで発表したシングルはオリコン最高71位である。アルバムは3rdアルバム『Romance』の29位が最高で、50位以下──その昔で言うところの右頁が大半だ。一般的にその名を知られているとは言い難い…と言っても大きく間違ってはいないだろう。だけれども、これは断言していいと思うが、もしこのGREAT3の3名がいなかったら今の日本のロックシーンはなかったと言っても過言ではない。もちろんロックシーンそのものは存在し続けていただろうが、現在のそれとは少なからずかたちを変えていたことは間違いなかろう。以下、ご存知の方はよくご存知だと思うが、ご存知のない方のために彼らのプロフィールを記してみる。
まず片寄明人。彼はChocolat & Akitoなるデュオでも活動する一方、プロデューサーとしての仕事に定評がある。フジファブリックのメジャーデビュー作『フジファブリック』(2004年)の他、GO!GO!7188、Czecho No Republicなど数多くのアーティストを手掛けている。最新のトピックとしてはDAOKOのプロデュースだろう。1stアルバム『DAOKO』(2015年)から先月末に発売されたばかりの4th『anima』(2020年)までサウンドプロデューサーを務めている。
白根賢一も自身の音楽活動の他、プロデューサーで活動しているが、何と言ってサポートミュージシャンとしての活躍に目を見張るものがある。[YUKI、高橋幸宏、THE BEATNIKS、Bonnie Pink、Caravan、Chara、LEO今井、KIMONOS、LOVE PSYCHEDELICO、Salyu、チュール、中田裕二、SOLEIL 、大沢樹生、Kotoko Tanaka Band など、数々のミュージシャンのライブサポート、スタジオサポートとして参加]([]はWikipediaからの引用)。幅広い世代のアーティストから信頼を寄せられている。
高桑 圭もサポートミュージシャンとして活動しており、その際は白根とともに参加することが多いのが興味深いが、彼のアーティストとしての真価は自身のソロユニット、Curly Giraffe、その参加メンバーからもうかがうことができるのではないかと思う。名越由貴夫(Gu)、藤田 顕(Gu)、堀江博久(Key)、奥野真哉(Key)、恒岡 章(Dr)、そして白根賢一(Dr)と、名うてのミュージシャンがズラリ。GREAT3は知らないけれど、彼らの中の何人かは知っているというロックファンは少なくないのではないだろうか。