中村雅俊の歌手キャリアの
スタート作『ふれあい』に
アーティストとしての
懐の深さはすでに備わっていた

『ふれあい』('74)/中村雅俊

『ふれあい』('74)/中村雅俊

1974年7月1日にシングル「ふれあい」で歌手デビューし、今年デビュー50周年を迎える中村雅俊。現在、特設サイトにて、50周年記念のベストアルバムへのリスエストを募集している。300を優に超える氏の楽曲の中から、“これぞ中村雅俊!”と思う楽曲を3曲まで投票できるというもの。リクエストした楽曲のメッセージやエピソードも併せて募集しており、こちらはWebサイトなどでも紹介される予定だとか。2月11日まで開催しているとのことなので、気になる人は訪れてみてはいかがだろうか。今週はそんな中村雅俊のアルバムを紹介。デビュー曲も収録された『ふれあい』である。

多彩な作家とのコラボ

 歌手・中村雅俊は偉大である。これは改めて喧伝すべきことだろう。ファンのみなさんは“何を今さら失礼なことを…”と思っていらっしゃるだろうが、非礼は承知。氏のデビュー50周年をより盛大にお祝いする意味でも、その偉大さをことさらに広める意義は十分にあるのではないかと思うのである。中村雅俊は1974年のデビュー以来、現在まで24枚のオリジナルアルバム、300を超える楽曲を発表してきた。その事実だけでも十二分に氏のすごさが分かろうというものだが、歌手・中村雅俊の偉大さは楽曲を手掛けた作家陣にも見出すことができる。それもまたファンのみなさんにとっては今さら…な話になろうが、氏の足跡を振り返る意味でもまとめてみたい。以下、主だったシングルナンバーをその作詞者、作曲者とともに列挙してみよう。

1st「ふれあい」(1974年) 作詞:山川啓介/作曲:いずみたく
3rd「いつか街で会ったなら」(1975年) 作詞/作曲:吉田拓郎
4th「俺たちの旅」(1975年) 作詞/作曲:小椋佳
8th「青春試考」(1978年) 作詞:松本隆/作曲:吉田拓郎
9th「時代遅れの恋人たち」(1978年) 作詞:山川啓介/作曲:筒美京平
10th「日時計」(1979年) 作詞/作曲:呉田軽穂
11th「激しさは愛」(1979年) 作詞/作曲:円広志
15th「心の色」(1981年) 作詞:大津あきら/作曲:木森敏之
17th「恋人も濡れる街角」(1982年) 作詞/作曲:桑田佳祐
19th「瞬間の愛」(1983年) 作詞:三浦徳子/作曲:平尾昌晃
21st「パズル・ナイト」(1984年) 作詞:秋元康/作曲:林哲司
23rd「日付変更線」(1985年) 作詞:阿久悠/作曲:タケカワユキヒデ
24th「想い出のクリフサイド・ホテル」(1986年) 作詞:売野雅勇/作曲:鈴木キサブロー
27th「さよならが言えなくて」(1987年) 作詞/作曲:高見沢俊彦
31st「あなたにあげたい愛がある」(1989年) 作詞:大津あきら/作曲:NOBODY
35th「風の住む町」(1990年) 作詞/作曲:飛鳥涼
38th「ほんとうに愛ができること」(1993年) 作詞:松井五郎/作曲:根本要
39th「迷いながら」(1994年) 作詞/作曲:米米CLUB
43rd「小さな祈り」(1998年) 作詞/作曲:小田和正
47th「虹の少女」(2002年) 作詞/作曲:曽我部恵一
48th「立ち上がれ」(2003年)作詞:後藤貴光/作曲:FOOT STAMP
49th「空蝉」(2005年)作詞:一青窈/作曲:マシコタツロウ
50th「コスモス」(2007年) 作詞/作曲:松本素生

以上はシングル表題曲だが、10th「日時計」のC/W「優しさの街角」の作曲に尾崎亜美、26th「もう一度抱きたい」(1987年)のC/W「想い出と呼ばないで」と35th「風の住む町」のC/W「ONE MORE HEART」それぞれの作曲者に織田哲郎の名前を見つけることができる。ほとんど昭和、平成の歌謡史を見ているかのような陣容である。歌謡曲の大家だけでなく、ヒット曲「恋人も濡れる街角」の桑田佳祐を始め、呉田軽穂(言うまでもなく、松任谷由実のペンネーム)、円広志といった1970年代のロック、ポップス勢の起用はよく知られるところだろう。

個人的に注目したのは1990年以降。飛鳥涼、根本要、米米CLUB、小田和正という確変に突入したかのように有名アーティストが登場していることもさることながら、曽我部恵一、FOOT STAMP、松本素生という面子である。20歳も齢の離れたアーティストから楽曲提供を受けている。アルバムではなく、シングルのタイトル曲なのだから、これは挑戦的なことだったと今になっても思う。聴いてみると、それぞれに作曲者の個性が発揮されているものばかり…というか(「立ち上がれ」はFOOT STAMP楽曲のカバーなので、それは当然として)、作家の灰汁みたいなものをあえて注入しているものばかりで、そこにはちょっと驚いた。歌手・中村雅俊の懐の深さを如何なく感じられるところである。これを偉大と言わず何と言おう。

OKMusic編集部

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