『吉野大作ランプ製造工場』は
“幻の名盤”にしてはならない

『吉野大作ランプ製造工場』('74)/吉野大作

『吉野大作ランプ製造工場』('74)/吉野大作

吉野大作ランプ製造工場』が8月24日、ボーナストラックを大幅に加えたCD2枚組のデラックス・エディションとして再発。9月21日には初出の1974年以来、実に48年振りとなるLP盤での発売されることも決定している。今週は“幻の邦楽名盤”とも言われてきた、その作品を取り上げる。“ジャックス・ミーツ・夕焼け楽団”や“ヨコハマ・ロックの導師”とも言われている氏。一般的な知名度はあまり高くないかもしれないが、本作を聴き、邦楽史にその名を残す偉大なるアーティストであることを確信した。

欧州でも人気の日本のアシッドフォーク

自分が吉野大作と初めて出会ったのは『REBEL STREET』だった。『REBEL STREET』とは1982年に発売されたオムニバスアルバム。リザード、P-MODEL、町田町蔵、アレルギー、ZELDAら、当時の新進気鋭のアーティスト全11組がそれぞれ一曲ずつ楽曲を寄せたコンピレーション盤である。その10曲目に収録されていた「ここそしてここじゃない場所」が吉野大作&プロスティチュートの楽曲であった。“出会ったのは…”などと芝居染みた言い方をしたものの、そこで初めて聴いた吉野大作&プロスティチュートの印象は個人的にはあんまり芳しいものではなかったからでもある。前衛的というか、シュールというか、難解というか、何というか──。録音状態があまり良くなかったことも影響したのだろう。一度聴いたあと、繰り返し聴こうとは思わなかった。今回、本稿作成にあたって聴き直してみてそれなりにカッコ良いとは思ったけれど、それにしても今後、繰り返して聴くことはなかろう(個人の感想です)。『REBEL STREET』自体、吉野大作&プロスティチュート以外にもそれほど興味を惹かれず、そもそも自分で買ったのか、誰かから借りたのか忘れたけれど、そのあと、さっぱり聴かなかったことはよく覚えている。ちなみに、『REBEL STREET』の続編、『GREAT PUNK HITS ~REBEL STREET II』はよく聴いた。とにかくLAUGHIN' NOSEが良かったし、G-Zet「オキシジェン・デストロイヤー」も何か好きだった。

閑話休題。そんなこんなで、『吉野大作ランプ製造工場』である。自らのセレクトとはいえ、かつての『REBEL STREET』での体験もあり、なかなか音源を再生する気が起きない。しかも、資料を漁っていると、今回の復刻に関する惹句には“アシッド・フォークの名盤として主にヨーロッパで人気高く、よく知られている”ともある。アシッドフォークのことはよく知らないけれど、サイケデリックな感じが強いとしたら、これまた気が重い。ド○ッグでラリッた経験もないし、その辺の感覚もこれまたよく分からない。ちなみに映画『イージー・ライダー』はそんなにつまらないとは思わないけれど、例のトリップしているシークエンス(?)は気持ち悪くて、どうも生理的に受けつけない。吐きそうになる。また、アシッドフォークがプログレッシブロック方向のアヴァンギャルドだったとしたら、それもまた聴くのは難儀だ。そんなもんだから、包み隠さずに言うと、リリースタイミング的に他に何かあればそちらに差し替えてもいい。そんなふうに思ったものだ。

再び閑話休題。で、意を決して聴く。…全然ポップだ。いや、単にポップと言うのも語弊があるかもしれない。自分が子供の頃に聴いた『REBEL STREET』のような難解さはあまり感じられない。少なくとも一回聴いたあと、しばらく遠ざけてしまうようなところはほとんど感じなかった。それは、こちらの加齢によるものか。それとも、吉野大作のソロワークとプロスティチュートとでは大分、方向性が違うのか。そこはさておき、当コラムの主題であるところの本作『吉野大作ランプ製造工場』の収録曲を順に見ていこう。

OKMusic編集部

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