『ZIGGY~IN WITH THE TIMES~』/ZIGGY

『ZIGGY~IN WITH THE TIMES~』/ZIGGY

ZIGGYが放ったメジャーデビュー作、
R&Rのカッコ良さの中に
確かな大衆性を湛えた
『ZIGGY~IN WITH THE TIMES~』

長髪に派手なメイクという日本ではあまり浸透しないハードロック畑のバンドながら、その親しみやすいメロディーでお茶の間にまで進出したZIGGY。日本のロックシーンが多様化していった80年代後半において忘れてはならないレジェンドバンドである。2014年、結成30周年を記念して過去の音源が再発するなど、にわかに再評価の機運が高まった感があるが、彼らの楽曲には決して風化しない普遍性があると思う。アニバーサリーイヤーのみならず、未体験者にはぜひ聴いてほしい代物である。

優れたメロディーを武器にシーンを席巻

 サウンドのみならず、その出で立ちまでがハードロック、ヘヴィメタルの影響下にあるバンドは、日本においてなかなか一般層にまで浸透しないイメージがある。そう思うは私だけだろうか。80年代、モトリー・クルーやガンズ・アンド・ローゼズ等のLAメタルは日本でも人気を博し、それこそアマチュアシーンにはそれらのコピーバンドも少なくなかったと思うが、国内メジャーシーンでこのタイプの音楽性を持ったバンドが受け入れられた印象がほとんどない。「X JAPANやTHE YELLOW MONKEYがいるじゃん!」と言われそうだが、ともにサウンドもビジュアルもモロにハードロック、ヘヴィメタルというわけではないので、何か違う気がする(あくまで個人的な印象ですので悪しからずお願いします)。それこそレッド・ツェッペリン、ディープ・パープル、クリーム等まで逆上って考えると、ハードロックはある意味でロックのカッコ良さの象徴のはずだが、日本で定着しないというのはおそらくそこには何かあるのだろう。
 まぁ、その辺りの考察はまたの機会に譲るとして、そんなことを薄ぼんやりと考えていたら、大事なバンドを忘れていたことに気付いた。そう、ZIGGYである。デヴィッド・ボウイの名盤『ジギー・スターダスト(原題・The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars)』から命名されたバンド名、その出で立ちもグラムロックやLAメタルからの影響が色濃く、洋楽ファンもイメージしやすいいロックバンドらしいロックバンドである。1989年、5thシングル「GLORIA」が所謂月9ドラマの主題歌となり、チャート最高位3位と大ヒットを記録。折からのバンドブームの後押しがあったことは事実だろうけれども、バッド・ボーイズ・ロックンロール・バンドがお茶の間に浸透したのは今思っても興味深いし、小気味よくも思う。
 「GLORIA」ヒットの要因はメロディーラインの良さ──ズバリ、これに尽きる。レベッカ、BOØWYに端を発したバンドブームは、一時期、相当数のバンドをメジャーシーンへと送り込んだが人気を得たのは畢竟、いい歌メロを持つバンドであった。THE BLUE HEARTSにせよ、Xにせよ、そのサウンドアプローチもさることながら、誰もが口ずさめるメロディーを有していたからこそ…である。その点、ZIGGYは所謂ハードロック、ヘヴィメタル影響下にありながらも、森重樹一(Vo)が手がけたメロディーは日本的な情緒感を漂わせるものがほとんどであった。キャッチーでいて適度にウエットなメロディー。日本人の琴線を刺激するに充分な印象で、個人的にはBOØWYのメインコンポーザーであった布袋寅泰の正統なる後継作曲者はZIGGYの森重樹一と確信していた時期があったほどである。メジャーデビューするとプロデューサーやディレクターからチャートインを意識した楽曲、所謂“売れ線”を作ることを強要される…なんて話を子供の頃よく聞いたものだが(メーカーにして見れば音源を売ってナンボなのだから、メジャーに居る以上“売れ線”を作らなきゃならないのは当たり前で、今や都市伝説にもならない話ではあろうが)、ZIGGYに関してはそんなメーカーサイドとの確執もなかったに違いない。「GLORIA」だけが特別にポップだったのではない。ZIGGYはインディーズ盤『それゆけ! R&R BAND』からして十分にポップだった。

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

新着