ガロが「学生街の喫茶店」後に
発表した『CIRCUS』
THE ALFEEが敬愛を公言する、
そのバンドの本質
フォークにとらわれない多彩さ
M14「通りすがり」はやわらかなメロディーが印象的で、そこからタイムラグなく入るM15「旅人が眠る丘」はスローで、どこか幻想的な雰囲気を醸し出す。M16「絵ハガキ」は歌がフォーキーというか、和風な印象なので、出だしこそ“B面はあまりロック寄りではないというコンセプトなのだろうか”なんて聴き進めていくと、後半に進むに従って、ハードロック、プログレ風に展開していく。Led Zeppelinばり…というと、いささか大袈裟過ぎるかもしれないけれど、グイグイと進んでいくリズム隊と、ノイジーだが流麗に鳴らされるエレキギターには、少なくともフォークグループの印象はない。最後にさまざまな動物の鳴き声が聞こえてきて、B面も『CIRCUS』というコンセプトアルバムに包括されていたことを気づかせられる。
……なるほど。アルバムを全てを聴き終わると、そこに「学生街の喫茶店」のイメージはほぼなく、それどころか、ガロは決してフォークグループの枠にとらわれることなく活動したバンドであることがよく分かる作品ではあった。
こうしたコンセプトアルバムを制作したということは、これがバンドとしてやりたかったことであり、もっと言えば、ガロがアーティストとして発信したいものがここにあったと言っていいだろう。その点も『CIRCUS』は明確だ。大きく分ければ、A面が“サーカス”をモチーフにした歌詞、B面はM12「演奏旅行」がその象徴だろうが、いわゆるツアーバンドのこと=おそらくガロ自身のことを綴ったものだろう。
《また汽車に乗り遠くの街へ/僕たちは行くギターを抱え/また初めての舞台が待つよ/ただ歌うのさ 僕らが今日も》《なぜ歌うかと訊かれたなら/生きているからと言うだけ》(M12「演奏旅行」)。
ガロの直系の後輩であるTHE ALFEEが“トラベリングバンド”を自称し、年2回のツアーを欠かさないのは、こうしたところにも影響があるのではないかと想像してしまった。
また、M10「この世はサーカス」で《サーカスはこの世に似ている》《サーカスはこの世のひな型》と言っているのだから、本作ではガロの活動そのものを“サーカス”に重ねていると見ることも出来る。そう思うと、以下の歌詞がなかなか興味深い。
《君はどうして僕のこの心を見ようとはしないのか/いつもおどけているがこの胸は悲しみに震えてる》《誰も仮面を被り生きてるよ その心秘めたまま/人の本当の姿 君だけは見極めてほしいのに》《形ですべてを君は見る人か/うわべですべてを君は見る人か/気付いて僕の愛に》(M5「ピエロの恋唄」)。
このアルバム『CIRCUS』は「学生街の喫茶店」がヒットした翌年に発表されたものだと前述したけれども、それゆえに今聴くと、“ヒット曲が本当の姿ではない”と言ってるようだと考えてしまった、果たして、それは穿った見方だろうか。
※手元に『CIRCUS』歌詞がなかったため、本稿の歌詞は全て聴き取りしたものです。正式なものではないことを予めご了承ください。