サカナクションの
『GO TO THE FUTURE』で示された、
これまでになかった
混ぜ合わせを試みる音楽的実験
“マジョリティの中のマイノリティ”
とすれば、こうしてその楽曲が巷に溢れているのも当然のことかと思いつつ、サカナクション関連のネットの記事をあれこれ見ていると、件の『NEWS23』の関連で、山口一郎(Vo&Gu)の発言に興味深いものを見つけた。以下、ちょいと引用させていただく。
[マジョリティでいることってすごく大変だけど、マジョリティの中のマイノリティでいることっていうのは、できるんじゃないかなっていう][クラスの中の20人にイイネと言われるものを作るのは、ちょっと自分にはできないけれど、クラスの中の1人か2人に深く刺さる音楽を作ることはできそうというかんじです。でもそれが全国になれば、マジョリティになるじゃないですか]。
上記の通り、すでに彼らの楽曲の多くにタイアップが付き、自分のような者でも何気なく耳にする機会もあるわけで、サカナクションの音楽は一般的にはもはやマイノリティではないとは思うのだが、この発言にはなるほどと思わせられるところではある。マジョリティとマイノリティ。その絶妙なバランスは確実にこのバンドにはあるように思う。また、同じ記事の中で彼はこんなことも言っていた。
[新しい感情を発明するには、混ざり合わないものを混ぜ合わせた「良い違和感」がないと、人にひっかからないと思うんですよ。僕はそういった感情と感情の交ざり方みたいなものを音楽で作れたらいいなと思っています。喜怒哀楽以外の新しい感情を発明するのがテーマです。]
混ざり合わないものを混ぜ合わせる。これも確かにサカナクションの音楽から感じるものではなかろうか。[マジョリティの中のマイノリティ]もそれに含まれているように思う。
…そんなわけで、以下、その観点からサカナクションの楽曲を眺めてみたい。その際の音源は何にしようかと考えると、チャート初登場1位を記録した6thアルバム『sakanaction』(2013年)がセルフタイトル作だけあって自他ともに認める傑作だろうし、これが適切なように思えるが、ここはあえてデビューアルバム『GO TO THE FUTURE』をチョイスさせてもらうこととした。それは“デビューアルバムにはそのアーティストの全てがある”という当コラムで多用している仮説に基づいてのものだが、結成からあまり時間が経っていない時のほうがそのバンドのコンセプト、音楽性、方向性といったものがより露わになっているのではないかとも考えたからだ。正直に言えば、冒頭で述べた通り、筆者自身が熱心にサカナクションを聴いてきていないからでもある。一からこのバンドのことを考察しようとすると、やはり最初からなぞるしかないのである。その辺もお含みいただければ幸いである。
(ここまでの[]は『NEWS23』公式noteより引用)