絢香の
シンガーソングライターとしての
所信表明『First Message』に
時代を超えた普遍性を見る

『First Message』('06)/絢香
若き本格派シンガーソングライター
…と、いきなり個人的な思い出話を絞り出してしまって申し訳なく思うが、今回、絢香の1stアルバム『First Message』を聴いて、彼女に対する自分のファーストインプレッションが蘇った。ファンにしてみれば何をか言わんや…であろうし、“絢香=本格派シンガーソングライターと思ったのに、そのあとで彼女の音源をちゃんと聴かなかったのかよ!?”と至極真っ当な突っ込みを入れられることだろう(いや、自分自身が取材しないアーティストの音源って案外聴かないものです…と言い訳)。お叱りを承知で筆を進めると、本作収録曲は、10代でデビューした女性シンガーソングライター、ルックスもいいという概形からイメージするものとは、やはり…と言うべきか、根本から異なっている。個人的な感想と言われればそこまでだろうけど、自分と同じような印象を持っている方は案外少なくないのではないだろうか。それは彼女の最大のヒットシングルである「三日月」の影響は大きいのではないかと想像する。遠距離恋愛を綴ったバラード。リリース当時、CMソングにもなっていて、巷でよく流れていたし、聴くともなしに耳に飛び込んできたので、「三日月」≒絢香のイメージとなっていたことは否めない。女性シンガーに限らず、日本のポップス、ロックの題材はほぼ恋愛なので、何も考えずにぼんやりと聴いていると“この人もそうなんだろうなぁ”と思うことになる。そこは改めて反省するところではある。『First Message』はミリオンセールスとなった作品だし、収録されているシングルナンバーはいずれもチャート上位を記録しているので、その内容は、ファンのみならず、ご存知の方は多いことだろう。だが、このアルバムの作品性、ひいては絢香のアーティスト性を整理する意味でも、まず筆者が本作の歌詞で気付いたことから記したい。
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