絢香の
シンガーソングライターとしての
所信表明『First Message』に
時代を超えた普遍性を見る
時代に流されないメロディーとサウンド
歌のメロディーは親しみやすいと書いた。サウンドも同様で、親しみやすい…というと語弊があるかもしれないけれど、変にこねくり回してないように思う。ファンクあり、ジャズあり。ロックもあるし、ピアノやストリングスを配したバラードもある。ジャンル的には比較的バラエティに富んではいるが、それぞれに悪い意味で突飛なものがないように思う。かと言って、平板かと言うとそれも違う。体温が感じられる音作りが成されている。そんな印象を受けた。アルバム後半、M10「時を戻して」からM15「message」が、それが分かりやすい。ホーンセクションの入ったソウル系ナンバーM10。ハードロックに近い雰囲気も感じられるM11「1・2・3・4」。ポップのロックチューンM12「Story」。オーガニックな空気感もありつつ、どことなく幻想的なM13「ライラライ」。言わずと知れたM14「三日月」はストリングス&ピアノでしっとりと奏でられ、M15は前述の通り、アカペラである。似たようなタイプが連続せず、しかも、それらは楽曲を構成する個々の音、そのキャラクターによって成立している。ベーシックはバンドサウンドで、そこにブラスや鍵盤、ストリングスをあしらっている。各々のプレイはあくまでも歌に寄り添い、過度な派手さはないものの、間奏やアウトロではしっかりと個性的な演奏を聴かせる。そういうタイプが多い。バンドの醍醐味と言えよう(M15を除く)。『First Message』を聴いて、いい意味で時代性を感じなかったのだが、その秘訣はこのバンドサウンドにあるのかもしれない。逆に言えば、普遍的なアルバムと言っていいのではないだろうか。
TEXT:帆苅智之