カーネーションが6作目で辿り着いた
『a Beautiful Day』は
ロックバンドならではの
マナーに大衆性を融合させた傑作

『a Beautiful Day』('95)/カーネーション

『a Beautiful Day』('95)/カーネーション

11月17日、カーネーションの18枚目のアルバム『Turntable Overture』がリリースされた。当コラムではそのカーネーションの名作を紹介する。最初期にアバンギャルドな趣向も見せたことで“和製XTC”との異名もあったバンドだが、この『a Beautiful Day』を前後の『EDO RIVER』『GIRL FRIEND ARMY』からポップさを解放。彼らからの影響を公言するアーティストも少なくない、今や日本のロックシーンに欠かせないバンドと言っていい。

硬軟合わせ持ったロックバンド

『a Beautiful Day』はカーネーション通算6枚目のアルバムで、1995年8月の発売。バンド結成は1981年。メジャーデビューは1988年である。本作はおそらくバンドひとつの到達点だったと言っていいはずだが、ここに辿り着くまでに結成から数えて14年、メジャーデビューからは7年を有している。“のんびり”と言ってしまうとやや語弊があるかもしれないが、決して早かったとは言えない道程であったとは言える。

しかしながら、“苦節14年”とか“7年間の下積みの末”といった如何にも…という形容があまり似合わないカーネーションではある。それは本作のオープニングナンバーで《毎日のように/あてがはずれちゃう/だけどそれもいいね/まぁ のんびりといこう》(M1「Happy Time」)と言っているから…というのは半分冗談ではあるけれど、この『a Beautiful Day』でもいい具合に力が抜けている印象は随所にあって、それがいい意味での本作の味わい、引いてはバンドの妙味に感じるところである。

だからと言って、カーネーションが脱力系のバンドなのかと言ったらそれもまるで違う。日本のロック、ポップスの王道を行くようなメロディーとサウンドメイクを持ち、ルーツミュージックからロック黄金期の洋楽にも忠実で、ヒップホップ以降の手法も臆することなく取り込んでいる。この時点では5人編成でもあって、ロックバンドらしいロックバンドであることは間違いない。つまり、硬軟合わせ持った、ちょうどいい塩梅のバンドなのではないかというのが、『a Beautiful Day』を聴いての感想だ。

軽快なオープニングナンバー、M1「Happy Time」から実にいい塩梅。キーボードのリフレインが楽曲を引っ張るファンクチューンで、ソウルフルな女性コーラスは明らかにブラックミュージックを意識したものだろう。サビもそうだし、中盤の《Get up! Stand up!》はまさにそんな感じだ。しかしながら、ルーツミュージックに寄っているかというと──言い方は語弊があるかもしれないが、本格派にしようとしているのではなく、あくまでもポップスにソウル、ファンクのテイストを取り込んでいる印象である。そう言うと、適当に拝借してきているのかと思われるかもしれないが、そうではなく、1番と2番とのブリッジでスラップを聴かせるベースがその象徴だが、グルービーなバンドサウンドに仕上げている。それでいて、頭のカウントは多分、何かのレコードのサンプリングだろう(サンプリングじゃないにしろ、生バンドのそれではなく、DJ的な手法を意識しているのは間違いない)。

ラテンフレイバーのM2「市民プール」はスチールドラムが印象的。ただ、「市民プール」とはよく言ったもので、これもまた、キューバ系、カリブ系、ブラジル系のどの感じもしないのがおもしろい。1990年代らしくリズムがパキッとしているものの、全体的には柔らかくもポップなナンバーとなっている。スチールドラムだけでなく、エレキギターのカッティングとエレピの鳴りも耳に残るし、否応にもバンドらしさを感じるところでもある。何よりも耳の残るのは伸びやかなメロディーがいい。2度も聴けば口ずさめてしまうほどにキャッチーでありながら、聴き手を急かす様子もなく、心地良く音階が流れていく。

OKMusic編集部

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