カーネーションが6作目で辿り着いた
『a Beautiful Day』は
ロックバンドならではの
マナーに大衆性を融合させた傑作

さまざまな面で懐の深さのあるバンド

M3「It's a Beautiful Day」はギターのカッティングと跳ねたピアノが引っ張るファンキーなナンバーで、ヴォーカルのAメロでのややフリーキーな歌い方であったり、サビでの女性コーラスであったりは、ブラックミュージック要素を感じさせるところではある。楽曲全体の構成として、それをJ-POP的と言い切ってしまうとかなり語弊があるだろうけど、A、B、サビという展開がはっきりとしている点は親しみやすさに直結しているのではないかと思う。とりわけBメロのちょっと落ち着いた感じがサビの突き抜けた様子を助長しているように感じる。また、間奏でのブラスセクションも歌メロを凌駕するほどにキャッチーで、メロディのつるべ打ちといった様相もあって、簡単にまとめると超ポップということになるが、この「It's a Beautiful Day」がカーネーション初のシングル曲としてスマッシュヒットしたという事実にも十二分にうなずけるところではあろうか。一方で(※この原稿、“一方で”とか“しかしながら”とか“とは言え”とかが多くてすみません…)、ベースラインのうねりといい、後半のサビのリフレイン箇所で聴かせる演奏といい、なかなか熱がこもっていることも確認できて、単なるポップチューンに留まっていないところも注目に値する。バンドのポテンシャルの高さを如何なく示していると思う。

ややミドルなM4「未来の恋人たち」はループミュージック的作りで、少しアダルトな雰囲気。キーボード(シンセ?)がどことなく前世紀っぽい気もしたが、実際に前世紀のものなので仕方がない。これもアウトロに近い演奏が、楽曲のタイプが違うこともあってか、M3ほどではないにしろ、熱が入っている印象で尺も長め。ここもバンドサウンドの注目ポイントだろう。M5「車の上のホーリー・キャット」ではそこからさらに落ち着いた印象に転じる。ダークと言っていいかもしれない。ハーモニカから始まってアコギが前面に出つつも、エレキギターが他曲に比較してもエッジーであり、フォークロックと言ってしまうと簡単だが、M1、M3辺りとは対極にある印象ではあって、また別の意味でバンドの懐の深さをうかがわせるところではある。ちなみにこのM5でのこぶしを回す歌い方が──演歌っぽいという意味ではなく──日本のロックを感じてしまうのは自分だけだろうか。

M6「ハイウェイ・ソング」はリフものR&R。ハードロックと言っていい。ピアノの跳ねた感じといい、間奏でのギターソロといい、これもまた米国南部的であって、彼らの音楽的根源をダメ押しされた思いである。M5からの流れも納得。ドラムは頭から随分と暴れている印象があるが、後半さらに暴れていく。そのダイナミックな感じもとてもいい。

M7「VIVA !」はインスト。真ん中辺りに置いたということは、アナログ盤でのA面、B面の境目といったところだろうが、いわゆるインタールード的なものではない。実にメロディアスな代物で、歌詞を付けても十分にイケたと思わせるほどポップなナンバーである。ボサノヴァタッチではあるものの、まったりとした感じはなく、後半に進むに従って演奏がスリリングになっていくところもカッコ良い。この辺もロックバンドの面目躍如たるものだろう。

ミドルテンポのM8「Hey Mama」はブルースと言っていいだろうか。M5以上にダークというか、渋めなナンバー。歌詞の気怠さに当てられてか、ヴォーカルも気怠い印象ではあるが、その一方で、楽曲が進むに従ってギターがどんどん存在感を増していくのが興味深い。それがまたM9「GLORY」で一変。メロディー、サウンドともに突き抜けている。特にサビ周りはさわやかでありながら力強さがあるし、ブラスが溌剌とした感じに拍車をかけている印象。女性コーラスは相変わらずソウルフルで、これもまたルーツミュージック感は隠し切れないものの(ゴスペル要素強め)、ほとんど泥臭くないところは流石と言ったところだろうか。大衆性の強い楽曲だと思う。

OKMusic編集部

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