白田一秀をはじめ、
HR/HMシーンの強者たちが集った
GRAND SLAMの
『RHYTHMIC NOISE』のインパクト

キャッチーな歌メロは色褪せない

同じくリズム隊の吉川のベースはどうかと言うと、これがまったくもっていい意味で、突飛な演奏がない。的確に楽曲を支えているという見方ができる。コードに沿っただけのまったく無個性な演奏をしているかというと、さすがにそんなことはなく、M7「LOOKIN’ FOR LOVE」は比較的派手なベースプレイが聴けるし、M11「KEEP ON DANCIN’」のサビでのギターとのユニゾンなどもなかなか面白い演奏を聴くことができる。しかし、本作においてはリズムキープ、低音パートを堅持しており、4小節目、8小節目に少し動きがあるというのが基本的なスタイルのようだ。おくゆかしいベーシストと見ることもできるが、これは先に述べたようにドラミングが派手で、変幻自在のギターサウンド(のちほど説明する)がGRAND SLAMの特徴でもあるので、サウンドのまとめ役に徹したという見方もできるだろうか。作曲はほとんど吉川が手掛けているので、その影響も少なからずあったように思う。メロディメーカーとして押し引きをわきまえていた──そういう言い方は語弊があるかもしれないけれど、全体のバランスを考えたところは確実にあったのではなかろうか。ヴォーカルとギターのメロディー、ドラムの疾走感に加えて、ベースまでもが派手な旋律を奏で、派手なアクションをキメたら、収拾が付かない。そんな考えもあったのではと想像する。

いや、そんなふうに想像したのは、それほど、『RHYTHMIC NOISE』収録曲のメロディーは秀逸なものが多いからでもある。個人的にはこのアルバムはリリースされた当時に聴いたきりで、その後、GRAND SLAMのライヴステージで何度か聴いたことがあったものの、少なくとも愛聴盤となって聴き続けたということはなかった。つまり、今回聴いたのは30年以上振りということになる。それにもかかわらず、多くの楽曲に聴き覚えがあったし、口ずさめるものすらもあった。加齢によって短期の記憶すら怪しい昨今、これにはちょっと驚いた。ヴォーカルパートにおいてキャッチーなメロディーラインを持っているのは間違いなかろう。それを、身を以て体験した。“それはお前の主観だろ!?”と言われればそうだし、それに対して返す言葉がないのも事実だけれど、少しでも興味を持った人は騙されたと思って聴いてみてほしい。

お薦めはM4「WITHOUT DREAMS」とM5「I WANNA TOUCH YOU」。前者はメジャー感があり、後者はややマイナーとタイプは違うが、ともにサビメロは聴き手を選ばない大衆性を帯びたものである。“サビまで聴くのは面倒”という如何にも最近のリスナーには、BメロまででいいのでM3「SPEND THE NIGHT」を聴いてもらうのがいいかもしれない。キャッチーさはM4、M5のサビほどではないかもしれないけれど、その楽曲には今のJ-POP、J-ROCKに通じる展開があることが分かってもらえるのではないかと思う。GRAND SLAMのルーツにはアメリカンHRがあって、Aerosmith、Bon Jovi、Journey、Van Halen辺りの影響を感じるところではあるし、その辺のバンド名を見て敬遠する人もいるかもしれない。そういう方にはメロウなバラードM9「TELL ME」がよかろう。歌メロに関しては、間違いなく“食わず嫌いはもったいない”と思わせるものがあるバンドである。気になったらぜひ探してみてほしい。

OKMusic編集部

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