【ライヴアルバム傑作選 Vol.4】
斉藤和義の弾き語りライヴの良さが
凝縮された『十二月』
歌詞の普遍性に見る斉藤和義らしさ
個人的に最も斉藤和義というアーティストのぶれのなさを感じたのは収録曲の歌詞である。とりわけM1「tokyo blues」の内容にそれを感じた。「tokyo blues」は1st『青い空の下…』の1曲目でもあるので、本作『十二月』というよりも、デビュー時からまったくぶれていないというのが正確かもしれない。
《今朝も井の頭通り Bike Bon Bo Bo Boon!/環八越えたあたりで すでに10分の遅刻》《早いもんだなこの街に来てあっという間に2年半》《今日も込みっぱなしの首都高 これじゃ何時に着くことやら》《時計は回り続ける 俺にゃとても止められない》(M1「tokyo blues」)。
時間がよく出てくる。先日、斉藤和義にインタビューさせてもらい、22th『PINEAPPLE』について語ってもらったのだが、その最新作の収録曲も“時”や“時計”といった言葉が目立ったので、その辺りをストレートに尋ねると、無意識に口を衝いて出てきたものだという返答であった(是非そのインタビューの全文もお読みくださ!)。「tokyo blues」の歌詞にもまさにそんな印象がある。おそらく上京して2年半後の偽らざる気持ちやある日の情景が落とし込まれているのだろう。筆者の推測ではあるものの、そこに斉藤和義らしさを感じるところではあるし、この辺はデビュー当時から変わりがないところではないのだろうか。あと、M1の歌詞で言えば、斉藤和義は[自身の発言や、ミュージック・ビデオでのパロディなどから、下ネタ好きとしても知られる]とも言われているが、それを確認できるところではある([]はWikipediaからの引用)。オリジナルでは《飲んでくだまいて寝るだけ》のところがちょっとだけ変わっている(観客も笑い声も少し入っている)。
《馬鹿な事件を馬鹿が真似して/馬鹿が次々大袈裟にする/僕はといえばずっとソファで/そんな興味のない知識を見る》(M12「ソファ」)。
オリジナル音源の17thシングルが発表された1998年12月にはまだ炎上だ何だという現象もなかったはずだが、それらを揶揄したものと受け取ることもできる。斉藤和義がいかに普遍的なものの見方をしているかをうかがうことができると思う。
TEXT:帆苅智之
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