nobodyknows+の
『Do You Know?』は
個性が活きた5MCと
DJ MITSUのセンス溢れるトラックが
見事に合致した良作

個性的な5人のMC

nobodyknows+は、メジャーデビューの時点では5MC+1DJという編成であった(のちにg-tonが脱退するが、件の『THE FIRST TAKE』でのパフォーマンスには彼も参加している)。5MCというのは他にはあまりないスタイルだったらしいが、これがとてもいい。何がいいって、ホクロマン半ライス!!!(以下ほくろマン ※当時はHIDDEN FISH)、crystal boy、ヤス一番?、ノリ・ダ・ファンキーシビレサス(以下ノリ)、そしてg-ton、この5人の声がそれぞれに個性的なのだ。初めて聴いても異なるMCが順にラップしていることがよく分かる。ここからの意見は、ヒップホップに馴染みのない老害の戯言だと思って聞き流してくださって結構だが、ヒップホップの楽曲ではAメロ≒バースが長めなものがそれなり多くある気がする。他のポップミュージック以上に言葉を駆使するラップの場合、リリックが長めになるのは仕方がないのでそれはそれで理解できる。しかしながら、歌に比べて抑揚が薄いラップの場合、どうしても単調になりがちだし、MCが複数であったとしても同じタイプの声が続くと聴いていてちょっと飽きる(老害の個人的意見です)。トラックがそれを補うスタイルもあるにはあるのだろうが、それだけでは補い切れないものも中にはあるようにも思う(老害の個人的意見です)。

でも、nobodyknows+にその感じがない。似た声が連続しないからだ。メンバーの中で最もプレーンというか、音域的には真ん中に位置していると思われるのがホクロマン。いい意味で中庸である一方でしっかりと疾走感のあるラップをする印象だ。g-tonの音域はそれよりもやや高め。個人的には丸く柔らかな発声をする人であるよいに思う。ヤス一番?はg-tonよりちょっと高めで、メンバー中で最もポップなイメージがある。メロディアスという見方もできるかもしれない。ノリは俗に言うダミ声。デスボイスに近い。楽曲にレゲエ風味を与えているはもちろん、とにかく圧倒的な存在感を示している。Crystal Boyは低音でハスキー。これまたなくてはならない魅力的な声だ。これらのMCが相次いでやって来るだけでなく、バースであれフックであれ、ちょいちょい様々な声が重なるし、差し込まれる。ビートはトラックが担っているので厳密な意味でのそれではないけれど、ア・カペラやドゥーワップのグループの楽曲のような印象があるのだ。


その辺りはM7「ココロオド」や1stシングル「以来絶頂」、2nd「ポロン2」などでも確認できるが、個人的にそのnobodyknows+のMCのおもしろさを最も感じたのはM9「RASH feat.coba」だ。シングル曲に比べて抑制が効いた印象であり、冒頭から低音ボイスが引っ張る展開。それもこのグループならではかと思った矢先、2番の《一目で落ちる魅力 永遠の記憶 即セットオン》で高音になる(ここはg-tonのように思うが、間違っていたらごめんなさい)。誰の耳にも明らかに転調したことが分かり、それまで聴いていた楽曲の景色がガラリと変わるようなインパクトがある。加えて、それ以降ではその高音のフックに低音が重なることで、その箇所がコーラスワークを駆使しているようにも聴こえる。それには転調した効果があるように思うし、このグループの利点が発揮されている箇所と言える。シングル曲に比べて派手さは薄いものの、“5人もいるラッパーの個性が異なると、こういうこともできるのか!?”と思わず膝打ったところである。そうしたnobodyknows+の特徴はメンバー自身も自覚的であることは明白。リリックの中にメンバーの名前がちょくちょく登場するのがその証左だ。メジャーデビュー盤らしい意気込みを感じるところだし、何しろアルバムのオープニングナンバーの一番頭から以下の内容なのだから、よりアグレッシブになっていたことがうかがえる。

《五人フロントラッパーnobodyknows+ 左端にはアフロでオーバーオール/その反対右すみが Yas the number 1 派手目にイカシタ坊主の方 イエーイ!/のらりくらりよりもビッと決めるぜ ノリ クリ g-tonでfit/忘れちゃいけないビートリード 後ろで構えるdj mutsuと》(M1「innocent word」)。

OKMusic編集部

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