【みねこ美根 インタビュー】
“そういうのもあるよね”って
寄り添う気持ちで歌いたい
やわらかく灯るランプをステージの真ん中に置き、薄暗い照明の中ギターを手に歌い始めたみねこ美根のライヴは、シンプルではあるが視覚からも流れ込んでくる演出が物語のような奥行きを感じさせ、引き込んでいく。そんなみねこ美根のライヴや楽曲制作、ルーツについて話を訊いた。
みねこ美根さんのライヴは曲を表現するというより、物語を表現しているようなライヴだなと思いました。
意識してやっているわけではないんですけれども、私自身、演劇や舞台、映画とか、映像としてもセピア色な感じのものがすごく好きで、そういうイメージの通りに雰囲気や曲順を決めたりしているので、そういうふうになっているんだと思います。そう言っていただけて、嬉しいです。ありがとうございます。
楽曲は生き方や息の吸い方みたいなところを歌いながら、“でも、全部は伝わらない”っていうのも分かっている歌で。
ありがとうございます! そういう意識的なこと…歌詞も聴いてもらえたんだと思って、またさらに嬉しく思います(笑)。
制作の際に意識していることは?
理性的でない部分とか、すごい非道徳的でモラルに反したことって外には出さないけど、そういうものとかってみんなあると思っていて。それを抑えながらちゃんと生活してる人って偉いなって思っていて。だから、そういうことを“分かってるよ”って言うと偉そうになっちゃうんですけど、撫でてあげるというか、“そういうのもあるよね”って寄り添うというか…そういう気持ちで歌いたくて。でも、歌ってる時はそれを出さないといけないので、反面教師で“こんなんになっちゃうのは嫌だ”って思われてもいいです(笑)。“こういうことを言ってもいいのかもしれない”っていうふうに思ってもらえるように歌ったり、作るように頑張っているところです。
楽曲はどのように作っていくことが多いですか?
テーマを決めて作ることもありますが、歌詞に広がっていきそうな言葉や、同じく広がっていきそうなメロディーやリズムのとっかかりを見つけて作り始めることもあります。テーマを絞るとまとまりが良くなって、絞らない時はまとめるのは大変だけど、新しい雰囲気を発見できるので、いろんなやり方で作るのが楽しいです。
《息をするために口ずさめ》とか、耳に残る歌詞も多くて。自分に対して歌ってる部分もあるのかな?と思ったのですが。
その曲は『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』っていう映画がすごい好きで、もともとはその主人公のヘドウィグに向けて作った曲だったんです。書いていくうちに自分が歌う理由じゃないけど、11歳とかの時から弾き語りの曲を作ってたりして、今では曲を作るのが生活の一部みたいになっている自分にも当てはまるなって思います。それは歌ってからなんですけど、今はそういうふうに歌っていますね。
先ほども言ったのですが、物語や世界観を表現しているので、ライヴで観ることによってより伝わるのかなと。
聴く人がどういう顔をして聴いてるのかも気になるし、自分の出していく叫びを繰り返して得るものもありますし。やっぱり直接感知できるので、そこでしか伝わらないことがあるなって私も他の方のライヴとかを観て思ったりするので、そう言っていただけて嬉しいです…って全部それですね(笑)。
MCは早口で鼻血について語るっていう独特さで(笑)。でも、常にいろいろことを考えながら生きてるんだなって思いました。
ちょっと今日は言葉が空回りしちゃったんですけど、あれは興奮状態みたいな感じなんです(笑)。“考えすぎ”って言われることが多いんですけど、そういうのを曲だったり出していく先があるので、考えすぎても楽しく書けているのでいいかなと。
美根さんは、どんな子供だったのかが気になったのですが。
私は匂いから思い出したりすることが多いんですけど、嫌な思い出ばっかりなんですよね…。幼稚園の匂い、小学校の埃っぽい感じから、先生にああ言われたとか嫌なことしか思い出さないので、考えすぎて内側に入ってしまってたというか。でも、半分で目立ちたがり屋なところもあったりとかして、なんかちょっと変な…でも、自分では普通に育ってきたと思います(笑)。
(笑)。自分の好きだったことに、他の子は全然興味がなかったこととかは?
音楽は同世代の子たちよりも親の影響で聴いてるものが多いので、あまり分かり合えなかったりしましたね。小学校高学年の時に宝塚にすごくはまって、写真とかをランドセルのところに挟んだりとかしてたんですけど、周りの子が“なんだこれは!?”とざわつくみたいなこともありました(笑)。
家ではどのような音楽が流れていたのですか?
父は洋楽が好きなので80~70年代くらいのアメリカとかのロック、Billboardのチャートに入っているような曲が家で流れてたりとか。母はTHE YELLOW MONKEYとかBLANKEY JET CITYとか邦楽のほうが好きなんですけど、私もすごい好きで、高校生の時とかはムシャクシャする帰り道にBLANKEY JET CITYを聴くっていう(笑)。あとはクラシックが流れてたりとかもしましたけどね。
幼い頃からピアノをやっていたとのことですが、そういった環境の中から楽曲を作り始めたというのは自然な流れだったのでしょうか?
初めてピアノで作曲した時は6歳だったのではっきりとは覚えていないのですが、習っていたピアノの先生が作曲をする方だったので、影響を受けたのかなと思います。小学校5年生になって“シンガーソングライター”という言葉を知ってから、ピアノ曲ではなく、歌詞とともに作ってみたら面白そうだと思って弾き語りの曲を作り始めたんです。
自分で作った楽曲を初めて人に聴かせた時はどうでした?
初めて作った弾き語りの曲は、絶対にシンガーソングライターとして生きていくんだ!と決心したことを書いた、わりと前向きな曲でした。とにかく緊張して、半泣きで親に聴かせた記憶があります(笑)。
そこから今と何か変化はありました?
自分のことだけを歌っていた当時に比べて、考え方や好みも10年経ってたくさん変わったので直線では結べないですが…今でも新しく作った曲を一番最初に聴かせるのは親で、とにかく緊張するのは変わってないなと思います。
なるほど。アクセサリーの制作もしていますけど、これはいつ頃から?
2年前くらいから作り始めました。その時はライヴの時の衣装のために粘土を使って人の顔を作ってネックレスにしたり、他にも身に着ける小道具的なものを作ったりしていました。アクセサリー制作は私にとって気楽にできる大事な息抜きで、楽曲制作はいろんなことと向き合って考え尽くさないといけないので、まったく別のイメージなんです。
では、最後に今後の展望などがあれば教えてください。
とにかくたくさんの方に聴いていただきたいです。まずはライヴを一度観ていただきたいです。今年はたくさんお知らせができるように、ライヴ活動、楽曲制作など頑張っていきますので、Twitterなどチェックしていただけると嬉しいです!
取材:高良美咲
★1st. Band Live「暗合」
2/27(火) 神奈川・横浜ベイシス
3/01(木) 東京・吉祥寺RJGB
3/07(水) 東京・原宿ストロボカフェ
3/08(木) 東京・下北沢ERA
★弾き語りライヴ
3/05(月) 東京・下北沢laguna
3/15(木) 北参道ストロボカフェ
3/19(月) 横浜関内ベイシス
ミネ:オルタナティブ・シンガーソングライター。6歳の時にピアノで初めて作曲、11歳からはギターでの作曲も開始し、現在はピアノとギターを用いてライヴ活動中。2017年より、みねこ美根名義で本格的に活動を開始し、15曲の楽曲を配信。22年4月からは〝美根〟に改名し、5月に「零れる光」、8月に「本当は人魚」、9月に「バスタブ・タイムワープ」を配信リリース。2023年3月に最上級ドライビングソング「syrup」、7月には「この世界に」を発表。同年12月に東京・duo MUSIC EXCHANGEにてワンマンライヴ『A Special Day of Mine 【焔心の砦】』を開催する。〝美根〟オフィシャルSNS
「線路」リリックビデオ