【3markets[ ] インタビュー】
他の人からは出てこない
自分だけのことって
やっぱり自分の経験なのかなと
生々しい実体験を豊かな物語へと昇華し、エモーショナルなバンドサウンドとして鳴り響かせている2ndミニアルバム『君の心臓になりたい』。その独特な作風は、どのようにして生まれているのだろうか?
前作のタイトルが“それでもバンドが続くなら”でしたし、あの時のインタビューは“この先も活動が続くか分かりません”という感じでしたが、続きましたね。
カザマ
なんで続いているかと言うと、前作がそこそこ売れたからです(笑)。期待していたほどではなかったんですけど、バンドを辞めるほどの理由にはならなくて。
MVのコメントとかを見ると、好きな人はすごく好きになっているバンドだなというのを感じます。
カザマ
コメントを書いてくれるのはありがたいです。まぁ、悪口を書かれるくらいにならないといけないなとも思うんですけど。
悪口を書かれるっていうのは、存在感があるっていうことでもありますからね。
カザマ
はい。でも、悪口を書かれても何とも思わないつもりでいたんですけど、昨日、バイト先でクソガキに“じじい!”って言われて、めちゃくちゃムカつきました。
金子
“じじい”って音楽じゃなくて見た目の話だけど(笑)。
矢矧
まぁ、とにかく3markets[ ]は続いています。とはいえ、今回のCDを出したあともどうなるのか分からないんですけど。
金子
毎回そうなんです。前作に関してはライヴの反響もあったので、こうして続けられているっていう感じです。
masaton.
4月にTSUTAYA O-WESTでライヴをやったんですけど、人が来てくれましたからね。求められていれば、やれるので。
その結果、新作も生まれたわけですね。今回の作品を出すにあたって、何か考えていたことはありました?
矢矧
メンバー間で話し合ったというより、レーベル側とのやりとりのほうが大きかったです。
ボツになった曲もあったみたいですね。「社会のゴミカザマタカフミ」っていう曲がボツになって、“俺が思ってることはちゃんと詰め込んだのに!”ってTwitterで嘆いていたじゃないですか。
カザマ
ちゃんと考えて作った曲だったんですけどね。“暗い”とか言われるのが嫌で、“だったら限界まで行ってやろう!”って思って作ったんです。
矢矧
レーベル側に最初に聴かせた曲ですけど、最初に聴かせるような曲ではなかった気がします(笑)。
カザマ
「社会のゴミカザマタカフミ」とかいろんな曲が外れていって、残ったのが今回のCDに入った7曲です。
実体験を色濃く反映した一枚になっていますよね。
カザマさんのソロの弾き語りでやっていた曲?
「メンヘラ女とクソ男」は昔のバンドメンバーが脱退した時のことが曲になっているんですよね?
masaton.
僕はその頃からメンバーでしたけど、こんな感じだったみたいですね。詳細はよく知らないんですけど。
こういう実体験を曲にしたくなる理由って?
カザマ
他に描くことがないんですよね。他の人からは出てこない自分だけのことっていうのは、やっぱり自分の経験なのかなと。
経験の描き方、切り取り方がとても面白いですよ。今作って面白い短編小説集みたいな感じですし。そういうものになっている自負、自信はあるんじゃないですか?
カザマ
ないです。“自分は負けている”っていう自負、自信はありますが(笑)。
(笑)。ネガティブに描くこともできる経験を、ユーモアもさりげなく利かせて面白く描いているのが、今回の7曲の粋なところだと思います。
「底辺の恋」も良いですね。《信じる いつの日か君は作る僕の味噌汁》とか、実に気持ち悪い愛の言葉を連発するじゃないですか。
カザマ
今の彼女に“お前はゴミだ!”ってよく言われるんです。それがきっかけになって作った曲です。僕としては《空中に夢中 宙に舞う君のCO2》のほうが気持ち悪いと思いますけど。
矢矧
《空中に夢中 宙に舞う君のCO2》って…このフレーズだけ切り取ると確かに気持ち悪い(笑)。
カザマ
この曲のこいつはきっとストーカーをするでしょうね。
金子
こんなことを言われる立場になったら…うわっ! めっちゃ怖い(笑)。
《君がいないとリライトしてえ》とかは若干、ASIAN KUNG-FU GENERATIONを巻き込んでいる感じもありますが…。カザマさんの書く歌詞に関してメンバーのみなさんはどのようなことを感じています?
カザマ
“この曲、こういう曲だよ”ってあんまり説明しないから、正直なところ“この歌詞の意味、分かってんのかな?”って思うことがありますけど。
金子
結構マジな話をするなら、俺は共感はしていないですよ。だって俺、こんなこと思っていないし(笑)。でも、切り口が独特で面白いっていうのは感じています。
masaton.
僕は「底辺の恋」の《開発してください 君の声をしたAI》はめちゃくちゃ共感しました(笑)。
(笑)。こういう内容の曲たちを彩っているサウンドが、すごくカッコ良いのも3markets[ ]ならではですね。例えばギターは多彩な単音フレーズを連発するじゃないですか。
矢矧
「拝啓、1メートル。」とか、ずっと弾いていますからね。歌が絶対的なものとしてあるのでリードギターっていらない存在なのかなと、このバンドに入った時から思っているんですよ。だから、音の引きと足しのバランスに関してはずっと悩んできたんです。最近、そういうのがちゃんとかたちになってきたのかなと思います。
「拝啓、1メートル。」はギター以外の楽器の聴きどころも満載ですね。
金子
ベースもスラップをしていますからね。スラップをした時、“これ、いる?”って言われたんですけど。“どっちでもいい”っていうことになったので入れました(笑)。
(笑)。MVをよく観ると目でも確認できますが、ドラムに関してはハイハットをめちゃくちゃ速く叩いていたり、かなり細かな技を利かせていますよね?
masaton.
でも、そんなに派手なことはやっていないんですよね。
この曲に代表されるように各パートがかなりパンチの利いたことをやっているのに、ちゃんとバランスよく成立しているのが3markets[ ]のサウンド面の面白さです。
矢矧
そういうふうになれているのは歌が“どーん!”とあるからですね。だから、最終的に成立しているんだと思います。
今回のアルバムはバンドの特色がすごくバランス良く出ていると思います。タイトルは“君の心臓になりたい”ですけど、どんな意味を込めています?
カザマ
このタイトルって“あなたのために”っていうような感じですけど、そういう意味というよりは“心臓になったらいいな”って自分自身が思っているというか。つまり、承認欲求の塊ですよね。もっといいタイトルがあったかもなとも思うんですけど。でも、レーベル側が“これにしよう”って言うからこうなりました(笑)。
金子
聴きやすい曲が入っているアルバムにはなったなと思っています。
カザマ
最初、違うタイトルにしようと思っていたんですよ。タイトルを決めてくれるTwitterの診断メーカーみたいなのをやったら“虚像、自虐のファントム”っていうのが出たから、それにするつもりだったんです。
金子
メンバーの意見も“これいいじゃん!”って一致しました。でも、“そういう自分たちの押し出し方をしているから駄目なんだ”ってレーベル側に言われたんですよ(笑)。
(笑)。今作によって、リスナー層が広がったらいいですね。
カザマ
はい。スタッフやレーベルのみなさんが頑張ってくれているのを感じるんです。だから、僕らも頑張りたいですし、“今やらないでいつやるんだ?”っていう気持ちが強いです。中途半端にやっても後悔するだけですからね。とりあえずこのCDをいろんな人に聴いてほしいです。聴いて、考えてほしいと思っています。
masaton.
でも、聴かないと始まんないですからね。
取材:田中 大
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ミニアルバム『君の心臓になりたい』2018年9月26日発売
Low-Fi Records
スリーマーケッツ[ ]:2014年10月10日、新メンバー加入をきっかけに3markets(株)からバンド名を現在の名前に変えて始動。15年6月に3markets[ ]として初の全国流通盤アルバム『眠りたいもう眠りたい』を発表。17年12月6日に初のフルアルバム『それでもバンドが続くなら』をリリースした。3markets[ ] オフィシャルHP
収録曲「拝啓、1メートル。」MV