L→R 廣瀬拓哉(Dr&Cho)、熊谷和海(Vo&Gu)、石川大裕(Ba&Cho)

L→R 廣瀬拓哉(Dr&Cho)、熊谷和海(Vo&Gu)、石川大裕(Ba&Cho)

【BURNOUT SYNDROMES】最初から最後
まで、リスナーへの思いで作ることが
できた

3ピースバンドBURNOUT SYNDROMESが、まさに“文学”というテーマが全編に渡って表われたアルバム『文學少女』を5月13日にリリースする。多彩な物語が全8曲収録された今作について語ってもらった。
取材:高良美咲

本誌初登場のため、まずは結成のいきさつを教えてください。

石川
中学生の時に同い年の3人で結成したバンドで、僕が体育の時間にペアだった熊谷を誘って、後に廣瀬を誘いました。そこから、オリジナルメンバーでずっと変わらずにやっています。
廣瀬
僕は小学校の同級生だった石川と、中学2年生の時に偶然ゲームセンターで再会したんです。その頃『ドラムマニア』というゲームにハマっていて、隣を見たら『ギターフリークス』をやっている石川がいました。そのままご飯を食べに行き、半ば強制的にドラムのスティックを買わされてBURNOUT SYNDROMESに加入しました。今思えば人生の分岐点であり、誘ってくれた石川にとても感謝しています。

そこからは、具体的にどのような活動を行なってきたのでしょうか?

石川
結成してしばらくはのんびり活動していたのですが、2010年に『閃光ライオット』に出場して準優勝をいただいたのが契機となり、しっかりとバンド活動を始めました。音楽性は、楽器の演奏技術の向上とともに少しずつ変化していっていると思いますね。いつの時も“熊谷が作った曲を3人でより良く完成させて届ける”というコンセプトを大切にしています。
廣瀬
僕が加入してから3カ月で右も左も分からないまま手探りでオリジナル曲を6曲ほど作り、中学3年生の頃にライヴハウスで活動を始めました。それからは石川の実家に機材を持ち込んで簡易スタジオを作って、楽曲制作や練習、リハーサルを行なって。高校生の頃には地元の大阪だけではなく、京都や奈良、神戸など関西各所でライヴを行なっていました。『閃光ライオット』の後は受験のためライヴ活動を休止しながらも楽曲制作は続けていましたね。

昨年7月2日にリリースされた初の全国流通盤アルバム『世界一美しい世界一美しい世界』は当時の集大成だったと思うのですが、どのような手応えを得ていますか?

熊谷
それまでの活動で生まれた曲からの5曲に新曲3曲を加えたアルバムだったので、結成から当時までのバンドの変遷なども垣間見える、歴史年表のような一枚になりました。このアルバムを作ることで自分たちの音楽性やバンドの向かう方向を改めて見つめ直すことができ、それをオーディエンスにしっかりと伝えようという意思を持ってライヴパフォーマンスを行なうことができるようになったと思います。
廣瀬
既存の5曲は音源化された時からライヴを重ねて進化していった完成形を改めて聴いてほしいという気持ちでアレンジを固めて、足し算を詰め込みました。新曲は積極的に新しいことに挑戦しながらもスムーズに作れたのですが、リード曲「LOSTTIME」の制作は苦労しました。アレンジや歌のメロディーを固めては壊しての繰り返しで、制作に1年以上かかりましたね。リリース前に行なった初の東阪ワンマンライヴで、このアルバムに入っている楽曲を全てセットリストに入れたのですが、“いける!!”という確信を持てたのがとても自信になったのを覚えています。このアルバムに関してはファンの方からさまざまな意見をたくさんいただいて、今までのBURNOUT SYNDROMESの集大成でありながらも、進むべき方向を明確にしてくれました。
熊谷
古い曲から新しい曲まで、それこそ古い曲は中学2年生の時に書いた曲から収録しておりますので、改めてBURNOUT SYNDROMESのやりたいこと、目指したいものなどが明確になったアルバムだと思います。このバンドが目指すべき一点の未来…まさに“世界一美しい世界一美しい世界”というものを示すことができて、ファンの方々ともその思いを共有するような作品になりました。

そして、5月13日にリリースとなるアルバム『文學少女』ですが、まさに“文学”というテーマが明確に表れたアルバムになりましたね。制作はいつ頃からしてたのでしょうか?

熊谷
制作に取り掛かったのは去年の夏頃で、前作を出す時にはすでに次のレコーディングの日にちが決まっていたので、アマチュアとのスケジュールの組み方の違いを実感しました。また、僕は曲を書くのがあまり早くないので、そのスピード感に閉口してしまいました。そうやって翻弄されている今だからこそ、作品にはしっかりとした統一感のあるテーマを持たせて、それを僕自身の心の拠り所としたいと思いました。初心を忘れないという意味でも、僕の学生時代…本ばかり読んでいた文学少年であった頃の気持ちを思い出しながら作ろうと思い、テーマを“文学”、そしてそれを最もシンプルに表現できるワードとして、アルバムタイトルを“文學少女”と決めました。

タイトル曲の「文學少女」は、川端康成の『雪国』や太宰治の『人間失格』を連想させるフレーズや、多くの作家の作品名を取り入れた歌詞だったり、聴いたり読んだりするほど新たな発見ができて、いろいろな楽しみ方ができる曲だと思います。

熊谷
もともとこの曲は数年前に一度作ったのですが、文字量も多くて語りなども入ってくるという歌詞的に複雑な構成のため、しっくりくる詞が書けずにお蔵入りとなっていたのですが、アルバムのテーマをこの曲の歌詞にしたらいい雰囲気になったので、制作が決定しました。それでも歌詞制作はこの曲が一番苦労したのですが、最終的に名作文学の羅列などもあるので、リスナーそれぞれの受け取り方で楽しんでほしいと思っています。

疾走感のある「セツナヒコウキ」はライヴでも度々披露されていますが、その時はどのような反応を受けましたか?

熊谷
ライヴではまったくの新曲にもかかわらず、サビで手をあげてくれるお客さんが多数いましたね。“新曲が良かった”という声をたくさんいただいていたので、自信を持って制作をすることができました。レコーディング直前まで、ライヴごとに毎回歌詞を変えながら歌っていて、歌った時の語感やオーディエンスの反応などを感じながら、より良いワードや文章をピックアップしていくという、一風変わった作り方をしていました。それに気付いたお客さんに突っ込まれることもありましたね。とにかく、より聴き取りやすく歌いやすく、場面を想像しやすいようにという思いを込めて歌詞を書いたので、この曲を聴いて、青い空と自然の緑に囲まれた夏の情景を想像してもらえれば嬉しいです。

「ザ・ワールド・イズ・マイン」ではチクタク鳴る時限爆弾の音が人間の心臓の鼓動を連想させました。

熊谷
誰もが一度は“人生とは、自分が見ている夢や映画ではないか?”と考えたことがあると思うのですが、情報の氾濫するこの時代においてはとてもナンセンスで子供じみた発想に思えます。ただ、それをもし心の底から信じることができたなら、他人の評価や世間の目などを気にすることなく、“自分”というただひとりの観客のためのエンターテインメント性にあふれた素晴らしい人生を送ることができるのではないだろうか。そして、それこそが正しい人生の姿ではないだろうか。…という内容の歌です。“寿命”という意味合いでの時限爆弾の時計音や、アコースティックギターによる金属的、シンメトリー的なサウンドを楽しんでいただければ嬉しいです。

「数學少女」はヴォーカルも機械的なアレンジをされていて意表を突かれ、130桁を超えた円周率のインパクトもありました。

熊谷
この楽曲は、もともとライヴでの登場SEのために作った楽曲だったんです。アレンジのほとんどを僕が行なわせてもらえるということで、アルバムの中で最も異色で楽しい曲を作ってやろうと意識して作りました。ただ、打ち込みも含めてひとりで曲を作るのが初めてだったこともあり、知識的な面で苦労した楽曲でもあります。特にヴォーカルにかけるエフェクトの専門的な知識が僕にはなかったので、やりたいことをレコーディング中にエンジニアさんやメンバーに精一杯伝えて、それを汲み取ってもらい、ヴォーカルへのいろいろなアプローチを提案してもらうといった作り方をしました。そんなふうにいろんな人の力を借りて作った曲で、2分弱という短い時間の中にやりたいことを100パーセント詰め込めた楽曲になりました。“こんな音楽があるのか!”と驚いてもらえたら嬉しいです。

その中で“3=BURNOUT SYNDROMES”としているのも気になったのですが、これは3ピースバンドとしての意志の表れでしょうか?

熊谷
3ピースバンドとして音楽をするという意思表示と、この3人を媒介に…すなわち円周率として、聴いてくれたリスナーがひとつになって大きな円を描くことができればいいなという思いを込めています。

「100万回のアイ・ラヴ・ユー」「月光サンタクロース」は一緒に口ずさみたくなるコーラスがあって、ライヴが楽しみになる曲でした。

熊谷
「100万回のアイ・ラヴ・ユー」は、このアルバムで一番最初に作り始めた曲です。それまでの曲はマイナー調が多かったこともあり、“底抜けに明るい曲を作ろう”という方針で作りました。“ライヴでお客さんと一緒に楽しめるようなアレンジと詞”という方向性を初めてバンドメンバー全員で目指した曲で、この想いはそれ以降の他の楽曲にも大きく影響しましたね。このアルバムのカラーを決定付けた一曲になりました。「月光サンタクロース」はその逆で、このアルバムの最後に作った曲です。《少女の体は汚れていた》だの《少年は腹ペコに飢えていた》だの…ストーリー自体は“逆境”をテーマにした結構ダークなものなのですが、それを湿っぽく歌うのではなく、むしろ快活に、さわやかに歌い上げることによって逆境を吹き飛ばすという楽曲を目指しました。「100万回のアイ・ラヴ・ユー」も「月光サンタクロース」も、ライヴでのお客さんの反応を想像しながら書いた曲ですね。このアルバムは最初から最後まで、聴いてくださるリスナーへの思いで作ることができたのではないかと思います。

シンプルでストレートなメッセージが綴られている「こどものじかん」、鬱々としながら希望を抱く歌詞をポップに消化した「或るK大生の死」をはじめ、アルバム全体を通して1曲がひとつの物語りと思えるほどストーリー性に富んだ情景が想像できる歌詞も印象的でした。

熊谷
自分にとっては“これが最高だ!”というような歌詞も、いざ他人に見せてみると全然伝わらなかったりということが今まで多々あったので、今回はそれをできるだけ排除するという方針で取り組んだんです。“会心のアイデア”には固執せず、受け手の反応をより尊重するようになったと思います。言ってみれば、“こだわらない”ことがこだわりになったのかなと思いますね。今までは文字数や改行のタイミングなどをかなり意識していたのですが、今回は“文学”というテーマに準じて旧字体を時たま使用することくらいで、他はまったく意識していません。限りなく話し言葉に近い言葉で作詞を行なったのですが、いざ歌詞カードに乗せてみると、意識していた時よりも流麗に文字が並んでいる気がします。意識しないことで、より自然体に近い文章を書くことができたのかなという新たな発見に、自分でも驚いています。

今作には8曲が収録されていますが、中でも印象深い楽曲はありますか?

熊谷
全曲語りつくせぬほどの思い入れはありますが…強いて言うなれば「ザ・ワールド・イズ・マイン」が印象に残っています。この曲は“ザ・ワールド・イズ・マイン”(世界は私のもの)と唱えることによって、どんな困難も用意されたものと考え、乗り越えていけるという曲です。僕もこれを実践してみようと思い、緊張した時や感情がコントロールできなくなった時に“この世界は俺のものだから大丈夫…”と思い込んで平静を取り戻すことを繰り返していたところ、なぜか虚弱体質がすっかり治るという現象が起きました。今年に入って一度も風邪をひいていないことは僕にとっては奇跡なんです。楽曲の影響を一番に受けるのは、他でもない作曲者なのだなと実感できる大変貴重な経験ができました。

今作は出来上がってみてどのような一枚になりましたか?

熊谷
僕らがBURNOUT SYNDROMESとして歌うべきことが、今ようやくはっきりして、このバンドのこれからが楽しみになってくるようなアルバムになったと思います。僕自身すでに次のアルバムを作るのがとても楽しみになっています。また、今回収録した曲はダークな内容なものも悲しいテーマのものも、最終的にはそれを乗り越えて前を向くという曲になっているので、聴いてくれる方も元気になれるような一枚になったのではないかと思います。
廣瀬
レコーディングを終えてから改めて完成したものを聴いた時に、僕の知る限り今まで世の中になかった、斬新な一枚に仕上がったと思いました。リスナーの方には、ぜひ歌詞カードを見ながら聴いていただきたいです! 歌詞の中に“あぁ、そういうことか!”と思うような仕掛けがたくさんあるので、ニヤリとしながら楽しんでいただけると思います。

作り終えて何か得たもの、発見できたことはありましたか?

熊谷
“楽曲というものはひとりで作るより、いろんな人の意見を取り入れながら全員が満足するものを目指して作るほうが楽しいし、いいものが出来上がる”ということをはっきり実感できたことが一番大きな収穫になったのではないかと思います。その“いろんな人”の中にはもちろんリスナーも含まれていますので、このアルバムの発売後の反応なども敏感にキャッチして次に反映させていきたいです。

最後に、これからの展望や目標を教えてください。

熊谷
僕はとにかく良い曲を作り、次のアルバムを最高のものにすることが目標です。
石川
この3人で作ったバンドなので、これからもずっと3人で変わらずに頑張っていきたいと思います。
廣瀬
ひとりでも多くの方に僕らの音楽を聴いてほしい。そしてひとりでも多くの方にライヴを楽しんでいただきたいです。それを実現させるために、いい曲を作っていいライヴでお客さんに届けていきたいと思います。
『文學少女』
    • 『文學少女』
    • HMBS-0003
    • 2015.05.13
    • 1800円
BURNOUT SYNDROMES プロフィール

バーンアウトシンドロームズ:関西在住の3ピースロックバンド。2005年結成。日本語の響き、美しさを大切にした文學的な歌詞やヴォーカル、その世界を彩る緻密に計算されたアレンジで、スリーピースの限界に常に挑戦している。16年3月にシングル「FLY HIGH!!」でメジャーデビューを果たす。BURNOUT SYNDROMES オフィシャルHP

OKMusic編集部

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