L→R 岡村耕介(Gu)、宮崎良太(Ba)、アサノ チャンジ(Vo&Gu)、くまおかりお(Dr)

L→R 岡村耕介(Gu)、宮崎良太(Ba)、アサノ チャンジ(Vo&Gu)、くまおかりお(Dr)

【SHIFT_CONTROL インタビュー】
“さらに深いところまで見せられた”
SHIFT_CONTROLのさらなる広がり

再開したライヴ活動と並行しつつ、制作に注ぎこむ熱意を惜しむことはなかった3rdミニアルバム『inVisible』。今作でSHIFT_CONTROLのポスト・ハードコア~エモ系の激情ギターロックはさらなる広がりを見せ始める。

これまで以上に成長や進化を
ちゃんと表現したかった

自分たちらしいスタイルを磨き上げつつ、さらに新しいことにも挑戦しているミニアルバム『inVisible』からは、迷いみたいなものは一切感じられませんね。

アサノ
でも、今回もやっぱり作る上では苦労していて。3作目ということもあって、これまで以上に成長や進化をちゃんと表現したいと考えていたせいか、常に差し迫っているというか…焦りながら目の前の一曲を作ることに精いっぱいで、出来上がるまでどんな作品になるのか考えられなかったです。完成後に聴き返して、ようやくいい作品になったと思えました。
宮崎
ありがたいことに前作のミニアルバム『Slowmotion』(2020年10月発表)を作った時よりもライヴの本数が増えてきて、ライヴ活動も並行しながらの制作だったので、そのバランスをとるのが難しかったんです。
アサノ
移動中の機材車の中で歌詞を書いたりね。
くまおか
1枚目のミニアルバム『Afterimage』(2020年1月発表)から『Slowmotion』を経て曲の難易度もさらに上がっているんですけど、同時にキャッチーさも増しているんです。レコーディングにも慣れてきて、さらに良いものになったという手応えはあります。
岡村
前2作もSHIFT_CONTROLのいろいろな面を見せる曲が揃っていましたけど、今回はさらに深いところまで行っている。中でも「Novalis」は新境地というか、前2作にはなかったテイストの曲になっていて。
アサノ
1作目の時にデモはあったんですけど、寝かせておいて2作目のCDにそのデモをシークレットトラックとして収録したんです。それを今回、ちゃんとレコーディングして収録しました。
岡村
その一方では、「フラクタル」や「シグナル」のようなポップでストレートに耳に入ってくる曲もあって。そういう意味で、SHIFT_CONTROLのさまざまな面を見せられたと思っています。

苦労したとはいえ、迷いはなかったんですよね?

アサノ
1作目からこの4人で鳴らせる幅広い曲をやりたいと思っていたので、どう広げていくかというところで悩みました。やっぱりギターロックという、よくあるビート、よくある展開っていう、ある程度決まった枠の中で音楽を作っているので、その中でどれだけ今までになかったようなカッコ良さを表現できるかっていうのは常に課題としてあるんです。

聴きながら思ったのですが、曲を作っている最中、アサノさんはあまり眠れなかったのではないでしょうか?(笑)

アサノ
あははは。そうでしたね。やっぱり曲作りの作業って夜間が多いんですよ。静まり返っている夜中の空気感が好きで、散歩しながら歌詞を考えたこともありましたし、日中よりも集中できるんです。でも、そんなに夜に関するワードが多かったですか?(笑)

「inVisible」の《眠れないから》をはじめ、そういう類の言葉が歌詞に散りばめられているという印象でした。でも、それは曲を作っている時の気持ちがそのまま表れていたわけですね?

アサノ
意識していなかったですけど、感情を整理することも含め、何か考えることが多い時間帯が夜だからかもしれないです。

ギターロックという枠組の中で、さらに幅を広げるという意味で苦心したということですが、今回の7曲の中で今までにない幅が出たと思う曲を挙げるとしたら?

アサノ
新しい要素はどの曲にも入っているんですけど、例えば「ボイジャー」はAメロでタムとバスドラだけでドドドドドドドってずっと連打しているんです。普通はドドッドドッタンというコンビネーションでリズムを感じさせると思うんですけど、そこを振りきってマシンガンみたいにずっとドドドドと鳴っている。そこからサビでシンプルな8ビートになってパッと開けるという、緊張と解放とも言えるメリハリが新たな試みとしてあったりとか、あとやっぱりドラムの話になるんですけど、「Novalis」のビートがたぶん世界初だったりとか(笑)。
くまおか
そうなんですよ!
アサノ
「Novalis」のドラムは基本的にずっと同じ調子で、同じフレーズを繰り返しているんですけど、そのフレーズそのものが結構複雑で、このビートを発見したのは世界で僕が最初だと思います(笑)。 
くまおか
僕の概念ではドラムのビートって一本の線なんですけど、チャンジが作るドラムのビートは点線というか、パズルみたいに細かくて複雑なんです。それにもかかわらずキャッチーというか、一回聴いただけでも“なんじゃこりゃ!?”って耳に残るインパクトがあるんですよ。
アサノ
自分も普段“こんなアプローチの仕方があったんだ⁉ やられた!と思うことがあるんですけど、それと同じ想いを自分たちの楽曲で他の音楽好きの人にもしてほしいんです(笑)。

「Novalis」はループミュージックをバンドサウンドに落とし込んだ印象がありました。

アサノ
そうなんですよ。決して聴きやすいわけではない。変拍子というか、急にテンポが速くなりますしね。1作目の時は“そういう曲を入れるのはちょっと…”という判断になったんですけど、曲の幅を広げるという意味で今回、入れてみようとなったんです。

今回のハイライトなんじゃないかと思います。ドラムももちろんですが、ギターとベースも難しかったのでは?

岡村
1カ所、実際にライヴで弾けるかどうか分からないくらい難しいところがあるんです(笑)。
アサノ
そこをライヴでカッコ良く聴かせられるように、今、練習しているところです(笑)。
宮崎
僕は初めて5弦ベースを使いました。チャンジが作ったデモの段階でドロップC#(4弦を1音半落としたチューニング)くらいの低音が出ていたので、それまでは“ギターロックと言えば4弦ベースでしょ”と思っていたんですけど、チャンジが言う発明という意味で、イメージしていた低音をしっかりと出すために思いきって5弦ベースを使ってみたんです。

ところで、タイトルの“Novalis”とは何かと思って、検索してみたらドイツのロマン主義の詩人が引っかかったのですが、その人の代表作が『夜の賛歌』で…。

アサノ
それ、いいですね(笑)。めちゃめちゃ曲に合っている。とらえ方は聴く人それぞれで構わないんですけど、僕が意図していたのは昔よく遊んでいたPlayStationのゲーム『ラチェット&クランク』で、その中にノバリスという星が出てくるんです。楽曲の壮大な規模感を表現するタイトルをつけたいと思った時、その言葉がパッと浮かんだんですよ。僕が調べてみたら“放射線治療装置”が出てきたんですけど、一度破壊されて、そこから再生していく環境に身を置く人の壮大な物語の歌にぴったりだと思って。

歌詞の内容はSF映画を思わせるところがありますね。

アサノ
他の曲とはまた違いますよね。それが不思議なことに深く考えることもなく、一晩でスルッと全編ができちゃって。

前々からなんとなくこういうストーリーを考えていたわけではなく?

アサノ
そうなんですよ。最初にメロディーが出てきて…普段はやらないんですけど、歌詞と曲を同時進行で、歌詞の辻褄も気にせずに作っていったんですけど、書き終えたらこんなストーリーが出来上がっていたんですよ。そういう意味では不思議な曲ですね。

その「Novalis」の次の「inVisible」は前作の「アイウォンチュー」同様、英語の歌詞なのですが、「アイウォンチュー」は2割ぐらい日本語が混じっていたじゃないですか。

アサノ
あぁ、「inVisible」はほぼ英語になりましたね。

《眠れないから》というひと言だけ日本語で歌っているのは、その言葉を際立たせたいからなのですか?

アサノ
いえ、これはアンサンブルとメロディーが先にできて、それから歌詞を書いたんですけど、最初は英語にするつもりはなかったんです。ただ、作りながらこのメロディーには英語が合っていると感じて、なぜかそこだけ日本語になっちゃって(笑)。これと言った理由があるわけではなく、そこに一番ハマったのが“眠れないから”という言葉だったんですよ。日本語の歌でサビだけ英語ってアプローチもあるじゃないですか。それの逆なのかな?(笑)
L→R 岡村耕介(Gu)、宮崎良太(Ba)、アサノ チャンジ(Vo&Gu)、くまおかりお(Dr)
ミニアルバム『inVisible』

OKMusic編集部

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