【strange world's end】秘密を共有
するような音楽になってほしい
strange world's endが約3年振りに2ndフルアルバム『やっぱり、お前が死ねばいい。』をリリース。そんな最新作を手掛かりに、活動10周年を迎える飯田カヅキ(Vo&Gu)の根幹に迫る。
取材:後藤千尋
最初から最後まで一気に聴きたくなるアルバムに仕上がってますね。テーマとして“死”は重いものですが、それがずっしりとリアルに響くというか。飯田さんって普段はどんな性格の方なのですか?
歌詞は全体的に過激なことを歌っているようで、誰しもが実は少しは思ったことがあるんじゃないか?って内容ですよね。
歌詞は実体験から始まってるものが全てです。とは言っても、自分の感情を描いただけではただの落書きになってしまって作品にはならないので、その人が普段の生活で聴けるような状態になるまで書き直します。殺傷能力のある言葉もありますけど、人に入りやすい言葉を選んで、難しい言葉は使わないようにしています。
なるほど。前作の1stフルアルバム『君が死んでも、世界は別に変わらない。』は“君が死んでも、世界は別に変わらないから生きていてもいいよ”といった前向きな側面もありました。今作は?
前作は“別に変わらないから死んでもいいよ”って意味と、“変わらないんだから生きてもいいんじゃない?”ってふたつの意味を込めてます。タイトルにふたつ以上の意味を持たせるのが好きで。
“やっぱり、お前が死ねばいい。”も強烈なタイトルですよね。
かなり強めに作りました(笑)。“お前”の部分が外側ではなく自分に向かって来たらもろ刃なので…そう考えるとだんだん意味が出てきて面白くなってきますよね。
なるほど。今作は1曲目「敗北」の歌詞《僕は怯えてた 外の世界を》やリード曲の「接触」のタイトルにもあるように、前作より外側に意識を向けた歌詞に感じられました。
タイトルの“やっぱり、お前が死ねばいい。”は外側へ向いている言葉なので、内向的な人の気持ちが外へ向かったということで、ポジティブに捉えられることではありますね。ただ、人に言った言葉は自分に返ってくるのでダメージも大きいです(笑)。
確かに、破壊力がありますね(笑)。1曲目「敗北」は“負け”から始まるブラックユーモアたっぷりな展開ですが、アルバムの物語は?
今作の歌詞カードのセンターページから色が明るく切り替わってるんですけど、それはテーマに合わせてます。「終了」で《みんな死ねばいい》って歌ったあとに、自分が死にたくなって起きる「コロニー」があったり。アルバムを通していろいろな感情があるんですけど、基本的に“なんで生まれてきたんだろう?”って曲が多いです。
やはり根底にはそういった想いが?
ある時期まで余りいい環境ではなくて…、“生まれてこなきゃ良かった”って…常に否定側の立場で生きてきたから、自分を肯定できなくなるんです。そういう想いはありますよ。
いろいろな感情が渦巻いているんですね。そんな全11曲の中から飯田さんが思い入れのある曲を選ぶとしたら?
「フロンティア」ですね。この曲でやっと話がひとつになるんですよ。歌詞のような感情も含めて、いつか人間は消えてしまう。そういった尊い感情がなくなることは寂しいことだなって。その感情も肯定してくれる一曲です。
どのような時に生まれた曲なのですか?
死んだあとの世界を“フロンティア”(新天地)と仮定して作ったんですけど、この歌詞を考えていた時にやたらと周囲の人間が死ぬことが多くて。自分も含めて新しい場所へ導いてくれるような曲で、今日も口ずさんでました(笑)。
お気に入りの曲なのですね。
この曲は自分の祖母が亡くなった時のとこから始まってるんですけど、死に目に会えなかったので辛かったんです。「灰」も祖父が亡くなった時の歌詞で、死に目にも会えなくて、すごく後悔があって。結局もう一度会うことはできなかったし、申し訳ないことをしたなってところから歌詞にしました。
飯田さんが描く世界には“死”を意識したものが多いですよね。それを意識し始めたのはいつ頃から?
骸骨の標本写真を始めて見た4歳か5歳くらいの時に、人って死ぬんだなって思ったんです。その時に悟ったんでしょうね。
歌詞の中でも、死は絶対的なものだと歌われていますよね。
死ぬことって誰しもが避けて通れない道なので、何で自分が存在してるんだろう?ってことは常に考えてました。どうせ死んでしまうのに、何を頑張らなきゃいけないんだ?って…嫌な子どもですよね(笑)。
(笑)。
人は生きている以上は死ぬんです。ただ、普通は死も生の一部って考えをしていくんだけど、今は逆に考えていて。この世界は死が正常であって、生というものがその中に入ってくるわけですよ。つまり、生が異常なんです。生が死の一部なんですよね。だから、生は尊いものだという考え方ができるわけで。
もともと、飯田さんはソロユニットで活動されていたんですよね。
最初はメンバーが上手く固定せずに気を病んでいたんですけど、“ひとりでやってみたら?”と言われて両A面のシングル「証明/コロニー」を出したんです。
そこからメンバーを探して?
音源を試聴サイトにアップして、それを聴いた当時のメンバーが見つけてくれて、バンドでライヴをするようになりました。ひとりの時からカウントすると、ちょうど活動10周年なんですよね。その「コロニー」が今回入っているんですが、アレンジはほぼその時のまんまです。当時の曲がこうしてアルバムに入ることは感慨深いですね。
今後バンドとして発信していきたいことは?
自分が死んでしまっても残るような曲を作りたいってスタンスは、今後も変わらずやっていきたいです。
今回も渾身の一枚になりましたね。
そうですね。自分たちの音楽を“親に聴かせたらヤバイなぁ”って思いながら聴いてもらえたら嬉しいですね。オープンに出してる音楽だけど、誰かと秘密を共有するような音楽になってほしいです。
- 『やっぱり、お前が死ねばいい。』
- SCRCD-004
- 2017.03.22
- 2160円