前作『PURE CURE SURE』から、約1年4カ月振りとなる新作アルバム『SPLASH』。“3人が今しっくりくる曲が自然と選ばれた”という今作について話を訊いた。
取材:高良美咲
前アルバム『PURE CURE SURE』リリース時には“今が(バンドとして)一番いい状態”とおっしゃっていたのですが、リリース後のツアーはどういった意気込みやテンションで回ることができましたか?
奥村
wash?らしく、きちんと誠実に全カ所やれたと思います。今までで一番手応えも広がりも感じられましたね。
河崎
いろんな場所でいろんな人にwash?を体験していただけると思い、ドキドキワクワクで臨みました。鹿児島まで車で23時間ぐらい運転して行った時は痺れましたが、手応えしかなかったです。
今改めて振り返ってどのような作品だと思いますか? また、それを踏まえて1年4カ月振りとなるアルバム『SPLASH』はどのような意気込みで制作されたのでしょう?
奥村
俺はどの作品も完成した途端に“もっとできたな”と思ってしまうタイプなのですが、ただあの時点でのベストはできたかなと。前作は特にトリオになって初の作品だったので、今回はトリオの良さをもっと活かそうとは思ってました。
河崎
無理せず、そのまんまの44歳を出そうと思いました。そのための努力は惜しまず。
杉山
ドラムは特に一音一打を大事にしました。勢いだけじゃねえんだ、と。今作はこれまでで一番こだわりました。
今作には7曲が収録されていますが、他にも楽曲がある中からの選曲ですか?
奥村
3人なので、2票以上入った曲が選ばれました。強いて言うなら、ライヴで映えるかどうかは全員考えたと思います。
杉山
3人が今しっくりくる曲が自然と選ばれたんだと思いますね。
河崎
全部書き下ろしで、ドキドキワクワクするような曲が好きなのでそういった楽曲を選びました。
歪んだギターが印象的な「水なしで一錠」はコーラスが楽曲にキャッチーさを生んでいるように感じました。けれど、歌詞は《リズムどおりのダンス踊って》など、取り方によってどこかアイロニカルなユーモアを感じました。
奥村
無茶苦茶怒ってる歌ですね。怒りすぎて笑っちゃうような感覚もあります。
とつとつと語りかけるように歌うスローテンポな「baby baby」はシンプルな中でもそれぞれの楽器の聴かせどころがあったりと、wash?の叙情的な部分が感じられる楽曲ですね。
奥村
俺の中に昔からある構想で、トリオならできるかな?と思って持って行きました。思いの外、河崎と杉山が気に入ってくれたので良かったです。
杉山
ドラムは、語りかけるように叩きました。とても好きな曲です。
前作に限らず、これまでのwash?と比べて一番変化や挑戦があった楽曲はありますか?
奥村
時間をかけて曲作りしたというのは、分かりやすい新たな挑戦かもしれません。それ以外にも毎回変化や挑戦はしていますが、気付かれることもあれば、“相変わらずだね”と笑われることもあります。それでいいと思っています。ただし、まだ生き残れているのは変わり続けてるからだと思っています。
河崎
全てが挑戦です。オルタナおじさんは一度こけたら終わりますので。
タイトルの“SPLASH”は、水や泥などが跳ねるという意味ですが、どういった想いから名付けられたのでしょうか?
奥村
必死に歯を食いしばり暮らしてれば無風ではないわけで、嬉しいことも悲しいこともムカつくことも気持ち良いことも、この身に降り注ぎます。隠してもあふれ落ちるし、すましてても降りかかる。そんなアルバムになったから“SPLASH”にしました。
自ら掲げたテーマに寄せて楽曲や作品を作っているわけではなく、wash?はロックや衝動に正面から向き合っているイメージがあります。wash?はどういったバンドであり続けたいと考えていますか?
奥村
服を着替えるようにいろいろな表現ができる人もいると思うのですが、我々はそのタイプではありませんでした。なぜならば、地に足を着けて、“今ここ”を歌にするのが誠実な表現なのではないかな?と思うからです。3人とも生きていることとロックバンドを切り離せないタイプの人間です。これからも日記のように曲を書き歌います。
杉山
珍しいのかは分かりませんけど、個人的にはこういう姿勢の人間が好きなだけです。年齢とか関係なく。
今作を聴いた方にはどういったことを感じてほしいですか?
河崎
今のwash?が詰まったアルバムなので、聴いて感じたことが全て正解です。
杉山
歌詞が入って、“すげぇ好きだな”と確信に変わりましたね。これをどう伝えようか、メンバーやドラムテックの安部川さんと調整しました。自分的には“責任感”も感じているので、そこも感じてもらえたら(笑)。
奥村
この3人じゃなきゃできなかったアルバムです。自己評価は難しいけど、聴いてもらった尊敬する愛すべき音楽人たちはみんな喜んでくれました。俺たちを愛してくれる人たちもそうだといいなと思います。
リリース後には9月24日よりワンマンツアーを開催しますが、どういったライヴが期待できそうでしょうか?
河崎
全力でやります! 打ち上げが寂しくならないように頑張ります!
奥村
いつも通り全力で臨みます。ライヴで分かち合って初めて完成ですから、完成させに来てください。このアルバムがどう化けるのか、俺たちも楽しみです。
- 『SPLASH』
- TWIG-0008
- 2016.09.07
- 1620円
ウォッシュ?:2002年活動開始。14年7月に、奥村 大、河崎雅光という数々のアーティストのプロデュースで知られるふたりと、杉山高規の3ピース編成となり、15年5月20日に新体制初のアルバム『PURE CURE SURE』を発表。16年9月7日、1年4カ月振りとなるアルバム『SPLASH』をリリースする。wash? オフィシャルサイト