【アルコサイト】僕らにしか歌えない
ことや鳴らせない音があると信じてい

アルコサイトが3月1日にリリースする初の全国流通盤ミニアルバム『CROW』は、これまでのバンドの歴史や想いが詰め込まれた会心作。メンバーチェンジなど紆余曲折を経て辿り着いた彼らの今を感じてほしい。

本誌初登場なので、まずはアルコサイトの結成のいきさつについて教えてください。

北林
僕が高校2年生だった2013年の10月に結成しました。メンバーチェンジを経て現在のメンバーになったのが2016年の12月です。もともとは高校生のコピーバンドの延長線上で組んだバンドでしたが、その瞬間その瞬間で自分たちが一番カッコ良いと思えることを追求してやってきました。音楽性も良い意味で今とほぼ変わっていないような気がします。
渋谷
僕が加入した時の話なのですが、(北林)英雄に突然呼び出されて牛丼屋に行った時に“単刀直入に言うと、俺とバンドしてほしい!”と言われました。当時、僕もバンドをしたいと思っていたのですが、その時は冷静に見極めようと思い“考えさせてほしい”と伝えて。でも後日、英雄の弾き語りライヴに行った時に見事に惚れてしまい“こいつの後ろでドラムが叩きたい!”と強く思い、メンバー加入を決意しました! 当時からそのくらい魅力のあるヴォーカルでした。

活動を続ける中で、バンドにどのような変化がありましたか?

北林
僕が主に作詞作曲を担当しているのですが、初めは周りにいる先輩バンドへの憧れや影響が強くて、真似事のように焦って歌を歌っていたように思います。例えば、以前は目に見えていない何年後かの未来に対して“きっと良くなってるよ、僕も絶対音楽を辞めないから”というようなメッセージを込めて歌っていたのが、“今、僕にしか歌えない歌ってなんだろう?”と自問自答をしていくうちに不確かな将来を歌うのではなく、悩んだり、失敗したり、挫折したり、そんな自分の弱さを隠すことなくリアルに歌にしようと制作し出してからは、自分自身の心も軽くなったような気がします。
渋谷
加入当初は英雄の歌、英雄が伝えたいこと、発したいことをそのままライヴでぶつけたいと思っていたんですが、何度かのメンバーチェンジやさまざまなものに触れたことで、“メンバー全員で作り上げ、感じたことを発して、お客さんと一体になれるようなライヴをしていきたい”という想いに変わってきました。今は4人でやる意味、喜びを強く感じることができるようになりましたね。

改めて、アルコサイトとはどういうバンドだと思いますか?

北林
“生き様で勝負する、誰よりも人間らしいバンド”です。本当に毎日真剣に生きていればいるほど、しんどいことがあふれてくる気がします。言いたくても言えないようなこともたくさんあるし、どうにもならないような不安を抱えることもたくさんあるし。でも、それは僕自身も思って生きてるし、それをカッコ付けたり隠したりするのではなくて、素直に自分の弱さと向き合ってそれを歌にできることが僕たちの強みだと思っています。失敗をしない完璧な完全なバンドを目指すのではなくて、失敗をしても立ち上がれるような誰よりも人間らしいバンドでいたいですね。

3月1日に初の全国盤ミニアルバム『CROW』がリリースされますが、制作前はどういった構想があったのでしょうか?

北林
今回は初の全国流通盤ということで、たくさんの新しい人と出会える機会になると同時に、ありがたいことではあるのですがアルコサイトのことを批判する方とも出会うことになるんじゃないかって。初めて聴いた方や今までも聴いてくれていた方に、良い意味での衝撃というか、胸ぐらを掴むような楽曲を提供したいということをかなり考えましたね。書き下ろした曲は“始まり”をテーマに制作して、自分が今までバンド活動をしてきたことや歌ってきたことは間違いじゃなかったということと、新しい一歩を踏み出すために今の自分はどんな歌を歌えるかを考えていました。タイトルである日本語にするところのカラスのように、たくさんの人から美しく見られない時もあるかもしれないけど、地べたを這いつくばってでも生きていく…カッコ悪かろうが失敗しようが、それでも立ち上がって生きていく、これからバンドを続けていく覚悟を込めて始まりの一枚を名付けました。

今作はこれまでのバンドの歴史が詰め込まれているということで、今作の収録曲で一番古い曲はどれになりますか?

北林
6曲目に収録されている「朝焼けに」です。この曲はだいたい3年前に、現在のメンバーとは違うメンバーと制作しました。制作した当時のことは正直詳しく覚えてはいないのですが…その当時の不安、焦燥感、それでも前を見て歩いていきたいという我がままな気持ちを“朝焼け”という儚いものにリンクさせて作った曲です。今改めて歌詞を見れば少し恥ずかしい部分もあるのですが、僕自身もこの曲に救われることが何度かあって。ライヴでも人気の高い楽曲で、頻繁にライヴでも歌う大切な曲になりました。

幕開けを飾る「蒼く染まる」はスリリングな展開、力強い歌声が印象的でした。

北林
この曲は自主制作で最後にリリースしたデモ音源のリードトラックとしてもともと書いた楽曲だったんですが、綺麗事があふれ返って嫌になるけど、その中でも僕たちは明日を待って生きているという事実や、この曲を待ち合わせ場所にして、会えなくなってしまった人とまた出会えたらいいなと思って制作しました。「朝焼けに」と少しリンクするような情景や、それでも前に進んでいるという証拠になるような楽曲になりました。

《音楽はファッションじゃない、武器だ》と歌う「ジャパニーズスタンダード」は、まさにその言葉の通りアグレッシブに切り込んでいくイメージがありました。

北林
この曲は邦楽ロックの新基準、アルコサイトの新しい代名詞とも言える曲です。嫌な現実をぶち壊せるような、まさに音楽を武器にして未来を切り開いていく、そんな力強い一曲になりました。
浜口
英雄が書いてきた歌詞を初めて見た時はヤバイと思いました(笑)。先行でこの楽曲のMVが公開されているのですが、みんなどう評価してくれるのか楽しみです。

「コトノハ」はコーラス部分が今後のライヴで肝になってきそうだし、耳に残りやすいそれぞれの楽器のフレーズにも注目してほしいですね。

北林
この曲はライヴを観に来てくれている人のことを考えて作りました。どうやったら笑ったり、泣き止んでくれたり、どんな歌を歌ったら救えるのか…“もっとあなたのこと知りたい”って気持ちを歌にしたんです。僕たちが歩んできた道は間違ってなかったって確認しつつ、ライヴではみんなで笑顔で拳を突き上げているようなイメージして制作しました。
小西
僕はとにかく前を向ける曲としてイメージしていて。どんな音やフレーズだったら明るくなれるかを考えていました。

「青二才」は弱さを歌いつつ、バンドを続けていく意思のようにも感じました。

北林
これからも感謝を忘れず誠心誠意音楽を鳴らしていくということは変わりなく、だからこそ初心をしっかり思い出せるような楽曲を作ろうと思って。初めて歌った歌、初めて歌で涙をした瞬間、あの日に誓った夢…思い出してみれば音楽を始めた頃って単純に何よりも音楽が好きだから音楽をやっていたんだよなって。本当に忘れたらダメだなと思います。音楽をもっともっと続けたいし、死ぬまで歌を歌っていたいです。だからこそ、決意と大切なことを思い出せる備忘録のような曲になるこの曲を制作しました。

最後を締め括る「雨は止んだ」は元気良く始まりを告げていて、今作リリース以降の今後のアルコサイトにもさらなる期待を高めてくれる一曲なのではないかと思います。

北林
ライヴで一緒に歌いたいと思って作りました。自主制作のデモ音源などは“生と死”のような比較的シリアスな楽曲を作りたくて作っていたのですが、心機一転して一緒にスタートを切れるような、不安も笑い飛ばせるような一曲になればいいなと思って。この曲を歌っている時は本当に心から笑顔になれるし、たくさんの可能性と始まりの鐘を鳴らしてくれるような曲なので、立ち止まることなく進んでいくという意味を込めて今回の音源の最後の曲にしました。

収録曲は全編日本語詞で、叙情的だからこそメッセージがダイレクトに伝わってきます。歌詞を書く際に意識していることはどういうことですか?

北林
言いにくいことや、自分の弱さなども正直に歌詞にしようと心掛けています。不確かな未来を描くんじゃなくて、よりリアルな現在の話を描くようにしていますね。アルコサイトより演奏が上手なバンドはいくらでもいるし、僕より歌が上手い人もいくらでもいると思います。だからこそ、僕らにしか歌えないことや鳴らせない音があると信じているし、そのひとつの武器がリアルな僕の歌詞だと思っています。ふとした瞬間に思い付くことが多くて、小説を読んでいる時や散歩をしている時、バンドの機材車で移動をしている時などいろんな時に思い浮かんだことを取り入れています。

特に思い入れのある曲はありますか?

北林
僕は3曲目の「メランコリーガール」が一番思い入れが強いです。今まで歌詞に登場する一人称が“君”とか“あなた”だったのに対して、この曲では初めて“おれ”と“お前”で書いてみました。よりリアルに感情的に描くことができた楽曲かなと思っています。ぐちゃぐちゃになった時に落ち込むだけじゃなくて前に進む力をくれる楽曲です。
小西
僕は「花鳥風月」が一番印象深いです。リフやフレーズは深く考え込まずに、ふと思い付き、“これだ!”と思いました。イメージしたものを忠実に再現できたことと、自分が鳴らしたい音をしっかり表現できたと思います。

制作に向けて、バンドとして改めてどのようなことにチャレンジをしましたか?

北林
今までやったことのないようなこと、作ったことのないような楽曲をどんどん作ってみようと思って制作しました。メンバーチェンジが重なっていた辛い時期を乗り越えて、今正式メンバー4人で音楽ができることの幸せを改めて認識できましたね。自分とバンドが持っているものを全部出したので次回の音源を制作できるのか不安ではあったのですが、いざ完成してみると、むしろ次はこんな曲を作りたい、こんな可能性に挑戦してみたいという欲が出てきました。これからの道しるべとなる自信作ができたなと思います。

リリース後にはどのような活動を予定していますか?

北林
リリースツアーを回ります。ツアータイトルが“50本未満はドライブやろ?ツアー”なんですけど、ツアータイトルまで喧嘩売ってます(笑)。文字通り50本回る鬼のツアーで武者修行をして、ライヴバンドとして猛烈な進化を遂げて帰ってきます。ツアーが終わればまた新しい音源の制作が始まります。たくさん楽しいことも考えていますし、可能性しかないこれからのアルコサイトに期待していてください。
『CROW』
    • 『CROW』
    • STR-1043
    • 2017.03.01
    • 1890円
アルコサイト プロフィール

アルコサイト:2013年結成。結成後3カ月後の2014年1月に「ゴールド/P.S.」をライヴハウス限定でリリース。その後もリリース、ライヴを意欲的に行ない、計50本近くに及ぶ全国ツアーも敢行。定評のあるライヴでその名を全国に広め、16年3月に初の全国流通盤ミニアルバム『CROW』をリリース。アルコサイト オフィシャルHP

OKMusic編集部

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