【Absolute area インタビュー】
多くの人に聴いてもらう
音楽を追求していく
今年4月に2ndミニアルバム『無限遠点』をリリースしたAbsolute areaから配信シングル「カフネ」が届いた。J-POP色を強めに出した前作に引き続きポップ感を大事にした心温まる3曲について、山口諒也(Vo&Gu)にインタビュー。
喪失感がこの歌を作る原動力になった
2014年の結成から今年で5周年となりますが、振り返ってみるとどんな5年間でしたか?
もともと部活動で組んだバンドだったので最初は小さい世界の中で音楽をしていたんですが、その規模感を少しずつ少しずつ拡大していくような5年間でした。
『未確認フェスティバル2017』のファイナリスト選出をはじめ、1stミニアルバム『あの夏の僕へ』、2ndミニアルバム『無限遠点』の制作、年齢的にも二十歳を迎えるなど、バンドにとってさまざまな転機があったのではないでしょうか?
そうですね。それこそ『未確認フェスティバル 2017』は僕らの意識を大きく変えてくれた大事なイベントだったと思います。ライヴもそうですけど、ラジオなどのメディアで紹介されたことによって規模感が急に大きくなったというか。たくさんの人が僕らのことを認知してくれたり、評価してくれたりして、それがライヴで可視化できたからこそ、僕らの音楽を届けていく場所を広げていきたいと強く思うようになりました。音源を作る上でもそれは意識していて、多くの人に聴いてもらう音楽を追求しています。
今回の配信シングル「カフネ」は前作ミニアルバム『無限遠点』(2019年4月発表)のリリースを経て、どんな心境で制作していきましたか?
僕らの音楽を好きでいてくれるファンは一体どういう音楽を望んでいるのかというのと、僕らの音楽をもっと広い世界まで届けるためにはどういう音楽を作ればいいのか、自分の作りたい音楽は何なのかを常に考えるようになって。『無限遠点』は全体的にJ-POP色が強くなったっていうのもあって、今までの反響とはまた違った声をいただいたので、Absolute areaに求められるサウンドと自分の作りたいサウンドのギャップを極力埋めつつも、新しい挑戦をしていきたいなと。
今まで単曲の配信リリースはありましたが、3曲入りシングルとしてのデジタル配信は初めてということで、何か意識したことはありますか?
『無限遠点』の「May」という曲が今までのサウンドと結構違うんですけど、サブスクでの反響が大きかったんです。だから、表題曲「カフネ」のサウンドは「May」に近付けたところもありますね。カップリングの2曲に関しては、今までの作品と同じようにポップさと温かみのあるサウンドの曲になっていて、それは素直に僕の作りたい音楽なんじゃないかと思ってます。
「カフネ」には“僕と君”のふたりが出てきますが、大人になって素直さを手放してしまった“僕”のコンプレックスが描かれているように感じました。
実はこの曲で歌っている“君”はもうひとりの自分について書いていてるんです。“僕”はいろんなことを諦めながら大人になっている僕。逆に“君”は純粋で無垢な少年のような僕。もちろん仮想的な存在ではあるんですが、そんな少年の頃のままの僕が今の自分を見たらどう思うのかと考えることが多くて。“きっと昔あった大切なものをたくさん失いながら生きているんだろうな”と思った時に感じた喪失感が、この歌を作る原動力になったんだと思います。
最初に聴いた時には大切な誰かと向き合っている曲にも感じましたが、自分自身を大切にしている曲でもあるんですね。大人になっていくコンプレックスに解放されていく描写がとてもリアルで、身をもって感じたことのある人にしか書けない曲だと思いました。
大人になる上で何かを我慢しないといけない場面って必ず来るじゃないですか。そんな時に今の僕が少年の心を持った“君”を押さえ込んでいると思うんです。たまには、そんな“君”と素直に向き合えたらなって。“本当はこうしたかったんだよね。分かってる分かってる”って(笑)。そうじゃないと心が麻痺していっちゃう気がするんですよね。サウンド面に関しては楽器の音に温かさがあるけれど、リズムには張り詰めた感じのハイハットを入れていて。意識というよりは感覚でできたことだと思います。
《描いた未来は漠然に 諦めるように過ごしていた》と過去形から始まる部分など、歌詞の展開が小説っぽいところも魅力的だなと。
特に意識してたわけではないんですが、小説はとても好きです。映像になっちゃうとひとつのイメージしか沸かないけど、文字は人によって違う景色が思い浮かぶところが好きなんです。