L→R 井田恵輔(Dr)、筒井翔平(Gu)、もうぇっぴぃ(Ba&Cho)、ワカメケイナ(Vo&Gu)

L→R 井田恵輔(Dr)、筒井翔平(Gu)、もうぇっぴぃ(Ba&Cho)、ワカメケイナ(Vo&Gu)

【初恋モーテル インタビュー】
私にとって歌うことは息をする感覚

2018年に結成された4人組バンド、初恋モーテルが1stアルバム『ピース オブ キッチン』を完成させた。飾り気のない“そのままの自分”が落とし込まれた収録楽曲は、普段は何てことない顔で過ごしながらも、本当は心に引っかかっているモヤモヤとした気持ちが見え隠れする。フロントマンのワカメケイナ(Vo&Gu)がインタビューに答えてくれた。

アルバム『ピース オブ キッチン』は初恋モーテル初のアルバム作品となりますが、コンセプトや全体のイメージはありましたか?

今までのようにライヴができなくなりましたが、ここで止まるわけにはいかないと思い、昨年10月から毎月吉祥寺WARPで自主企画『青春構想』を始めたんですね。そこで必ず新曲を発表するという目標を作ったんです。なんかもう、ライヴができないからこそ曲をたくさん作らなきゃいけない気がして。アルバムを出して、会いに行けない人たちやライヴハウスにこれない人にも初恋モーテルを届けたいという想いで完成したのが『ピース オブ キッチン』でした。コンセプトは特にですが、ずっと日常に寄り添った曲を歌ってきたのでそこに変わりはありません。

歌詞で普遍的な日常を描く「peanutbutter」は後半のテンポが加速していくところや、曲全体を映画のワンシーンのように彩るギターなどから、“何かが起きそう”という気持ちを掻き立てられる一曲でした。

淡々とした日常をそのまま心地良く音に変えたくて、曲のメリハリはあえてつけませんでした。そこはなんとなくメンバー内でも一致していたような気がします。アウトロも作っていく流れのままに“こうしたら気持ち良いかも”という感じでできました。

「orange room」は曲調の緩急やワカメさんの歌声の変化に惹きつけられました。「10月」のサビで雪崩のように言葉が押し寄せてくる迫力にも圧倒されましたが、感情が込められているからこそ壊れてしまいそうな脆さも感じるのが魅力的です。

性別と声質と、女の子らしくなれない自分とのギャップにずっとコンプレックスがあって、だからこそ泥臭い歌い方ばかりしていました。「10月」はその泥臭い部分を全面に出しています。それに対して「orange room」は、ライヴで歌った時にふと“あれ? できることをしないのは、もしかしてもったいない?”と思った瞬間があって。“落ちサビで可愛くやさしく歌いながら、ラスサビに向かう直前にいつもの泥臭さが急に現れたらめっちゃ面白いやん!”と考えたら、そんな声の出し方も好きになれたんです。だから、歌う時は性別に左右されず、歌詞とメロディーでどんな表情でも出せるように心がけています。

ちなみに“251”というタイトルはライヴハウスが由来でしょうか?

実はライヴハウスはまったく関係ないです! 本当の由来はすごく単純なので、気になった方は想像してみてください(笑)。

そうでしたか(笑)。「251」は本当は言いたいことがあるのに《本当都合がいいよね》《なんでもいいけど》と搔き消しているような、小気味良い曲調も相まって本音をなかったことしているような印象でした。“あの時言えなかった本音を音楽にして歌う”というよりも、“言えなかった本音はそのまま言わない”ほうが近いような。

そのままでいることや日常を切り取ること、後悔も嬉しかったこともそのままを出す、誰かの何かになろうとしない、大それたことはしない、弱さを認める、自分になりすぎない…ということは、曲を作る時に意識していますね。

今作を聴きながら、初恋モーテルの楽曲には歌詞に出てくる“君”や“あなた”と一緒にいる風景があまりないように思いました。「コインランドリー」はピュアな感じもありますが、一緒に下着を洗うことにも慣れてしまったふたりが、“またあの頃みたいにコインランドリーもデートになったら”という想像を描いているように感じます。

意識したことはなかったですが、ひとりにならないためや、ひとりになりたくないから曲が書けるのかもしれません。

「再生」の《さよなら、もう全部抱えて歌っているから/行っておいで》というフレーズが心に残りました。歌うことで自分の中に留めておくような、“自分が全部預かるからあなたは気にしなくていい”というニュアンスを感じたのですが、ワカメさんにとって“歌う”とはどういう感覚なのでしょうか?

息をする感覚です。歌が歌えなくなったら、たぶん生きることができなくなると思います。すがっているだけかもしれないし、ありきたりな答えかもしれませんが、やっぱり自分にはそれが一番なので、命を燃やしながら歌っています。

ご自身で特に印象に残っている曲は?

「peanutbutter」ですね。幸せな日々もありきたりな毎日も不安定なところにあるから、あんまり愛しすぎてはいけない。“いつかの準備をしなくちゃいけないな”っていう、優柔不断な心情をそのまま表現しました。曲の内容には全然関係ないんですけど、ピーナツバターが出てくる理由は、深夜にひとりでバターピーナッツをポリポリと食べていた時に“こんなつまみの名前もひっくり返せばお洒落になるんだよな”とふと思ったからです。結構、曲ってそういう瞬間にできたりします。

今作を引っ提げて、11月28日には吉祥寺WARPでワンマンライヴが開催されます。意気込みはいかがですか?

『ピース オブ キッチン』で素晴らしい材料は揃いました。ワンマンを皮切りに、年を跨いで続く全国ツアーが始まるので、そこで美味しい料理に仕上げていきます。

取材:千々和香苗

アルバム『ピース オブ キッチン』2021年11月3日発売 hippopotamus records
    • HIPO-0002
    • ¥2,750(税込)

ライヴ情報

『1st Full Album「ピース オブ キッチン」release ONE - MAN LIVE』
11/28(日) 東京・吉祥寺WARP

初恋モーテル プロフィール

ハツコイモーテル:2018年結成。21年11月に東京都内で音楽スタジオやライヴハウスを運営する株式会社リンキィディンクが発足した新たな音楽レーベル『hippopotamus records』より1stアルバム『ピース オブ キッチン』をリリースし、11月28日に吉祥寺WARPで行なうワンマンライヴを皮切りに全国ツアーを開催する。 初恋モーテル オフィシャルHP

L→R 井田恵輔(Dr)、筒井翔平(Gu)、もうぇっぴぃ(Ba&Cho)、ワカメケイナ(Vo&Gu)
アルバム『ピース オブ キッチン』

OKMusic編集部

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