〝美根〟『映画の指輪のつくり方』

〝美根〟『映画の指輪のつくり方』

〝美根〟
『映画の指輪のつくり方』
- 第七十三回 -
「エブリシング・エブリウェア・
オール・アット・ワンス」の指輪

2017年から本格的に活動を開始したシンガーソングライター〝美根〟が大好きな映画の世界から作り出す紙粘土細工と指輪の制作過程をお見せします。ミニチュア好きな方、アクセサリーづくりに興味のある方は是非見ていってください。指輪はライブ会場にて展示しております。

動画監督・撮影・編集・演奏・文:〝美根〟

選んできた道は私の道(2022年「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(Everything Everywhere All at Once)」)

月末になると思う。なんで先月、こんな余計な買い物しちゃったんだろって。体重計に乗ると思う。なんで昨日あんなに食べちゃったんだろう!って。あの時こうしてたら、こうしてなかったら、考え出すとキリがない。小さな選択から、大きな選択、私たちは毎日たくさんの選択に迫られ、判断して、時間を進めてきた。もし、「選ばなかった方」の選択の先の自分が、パラレルワールドに存在していたら?

今回は今年のアカデミー賞総なめの映画「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」を紹介する。

全宇宙のために戦え!

エヴリンは夫ウェイモンドとの駆け落ちをきっかけに、中国からアメリカに渡り、コインランドリー経営を始めるも、20年ほど経った現在は破産寸前。領収書とにらめっこの日々だ。娘ジョイは、ガールフレンドであるベッキーとの仲を母に理解してほしいが、エブリンは高齢の父ゴンゴンの世話や経営難にも追われ、娘の話をおざなりにしてしまう。

エブリンとウェイモンドは、車椅子のゴンゴンを連れて、監査のために国税庁に出向く。監査官に厳しく領収書の間違いを指摘される中、エレベーターで突然何かに乗っ取られたかのように豹変したウェイモンドに渡されたメモ通りの動作をしてみると、用具室の中にぐわっとワープ! 別のパラレルワールドからやってきたという“別の”ウェイモンドに「全宇宙を救ってくれ!」と助けを求められ…というところから物語は始まる。

カオス・混沌・カオス!

私はこの作品を映画館で観た。怒涛のカオス展開の連続で、理解すると言うよりかは、ぶつかって浴びるしかねぇ!って感じ。賛否両論あるらしいけど、一見の価値あり。こんな映画体験は初めてだったよ。

自分がエヴリンだったら混乱して爆発しちゃうぜ。訳もわからず、敵に襲われて、逃げまどってさ。別の世界からやってきた夫には「全宇宙を助けられるのは“この世界”の君だけだから、悪の存在ジョブ・トゥパキを倒して!」って言われて。悪と戦うために、色んなパラレルワールドにジャンプ(=バース・ジャンプ)して、ジャンプした先の世界の“別の”自分の能力をもらってこなくちゃいけないってさ! えっ? どういうことー!?

観ていても混乱ですが、これが楽しい! ワクワク・ノンストップ。アクションシーンは、さすがミシェル・ヨーとキー・ホイ・クァン! 私もカンフーできるようになって戦いたい。かっこいい。そしてね、計り知れないほど、パラレルワールドが存在するということ、そして突拍子もないことをするとバース・ジャンプできるという設定が、これでもかとカオスを更にひっちゃかめっちゃかにしてくれるから良き!

全てに意味はなく、全てにある、
そしてそれは全てではない

何じゃそれは〜!な場面や、カートゥーン的なシュールな効果音に爆笑したり、私も他の世界にジャンプしてみたい!と思ったり。そんな中で、この映画のように本当にマルチバースが存在して、色んな自分がいるとするなら、今の、この世界の、この私がしてきた選択はどうだったかな?と思いを馳せる。そして今からは、どうする? どうしたい? …立ち向かうべき人生。それを目の前に、頑張るエネルギーを貰える。

話はここまで!
あとは観るが良い!

色々話しているようで、ここまで、私、話の筋の3分の1も話してませんので、ご安心を。

指輪のど真ん中にある真っ黒なベーグルは、映画を見るとすぐわかるよ!まだ現在上映中の作品なので、ぜひ機会があれば映画館で。

この「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」を観ようと思ったきっかけは、本作で俳優活動復帰&アカデミー賞受賞したキー・ホイ・クァンの受賞の際のスピーチだった。子役として「インディ・ジョーンズ2」「グーニーズ」出演後、機会に恵まれず、一度表舞台からは姿を消し、制作や通訳、武術指導をおこなっていた彼だったが、今回助演男優賞を受賞。

「何度も挫けそうになっていた僕を、妻は20年間寄り添い、『いつか必ずあなたの”時”がくる。夢は信じなくちゃ』と言ってくれた。」そう涙ながらに話すキーの姿、支えてくれた人々へ感謝を伝える彼の言葉に、とても胸を打たれた。ウェイモンドの醸し出す優しさとかっこよさは、キーにしか出せない!

そして主演女優賞を受賞したミシェル・ヨー。「夢は大きく持って。全盛期は過ぎた、なんて誰にも言わせないで。」こんなスピーチ、カッコ良すぎるでしょ…。どんな選択も、何を信じるかも、全て自分次第。無限に広がる宇宙をかき分けて、その中の変わらないものを見つけ出して、自分の道を手繰り寄せていこう。
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モチーフ:ベーグル、ウェイモンドのウエストポーチ、石ころふたつ、ピザの看板、洗濯機、提灯、ディアドロのトロフィ、ソーセージな手
音楽:カバー Son Lux, Mitski, David Byrne「This Is A Life」
   BGM シューベルト「Ave Maria」
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〝美根〟Link集
https://lit.link/minelink
〝美根〟 プロフィール

ミネ:オルタナティブ・シンガーソングライター。6歳の時にピアノで初めて作曲、11歳からはギターでの作曲も開始し、現在はピアノとギターを用いてライヴ活動中。2017年より“みねこ美根”名義で本格的に活動を開始し、22年4月に改名。その後も「零れる光」をはじめ、「本当は人魚」「この世界に」など配信シングルを精力的にリリースし、23年11月に待望の1stフルアルバム『焔心の砦』を発表。同年12月には東京・duo MUSIC EXCHANGEにてワンマンライヴ『A Special Day of Mine 【焔心の砦】』を開催する。〝美根〟オフィシャルSNS

【連載】〝美根〟『映画の指輪のつくり方』一覧ページ
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