ディランをして
「彼は自分にとってのメンター」と
言わしめた、
カナダのSSWの至宝、
ゴードン・ライトフット

駄作なしのライトフットの
オールタイム・ベスト

アルバム『ゴーズ・ゴールド』は1975年にリリースされたベスト盤だ。本当はオリジナルアルバムを選びたいところなのだが、ヒット曲が分散し、特に初期のユナイテッド・アーティスツ時代のアルバム、70年代のリプライズと、どちらにも名盤があり、とても1枚に絞れない。苦肉の策で編集盤を選んだのだが、本盤収録の22曲はまさに捨て曲がひとつもない。リプライズ時代の曲を中心に組みつつ、60年代のユナイテッド時代の代表曲の“再録音”を収録するという工夫が凝らされた傑作コンピレーションと言えるものだ。とはいえ、2000年代になっても旺盛な活動を続けたライトフットの、わずか最初の10年ほどのキャリアを紹介したのに過ぎないわけではあるのだが。
※1988年には続編となる『Gord’s Gold, Vol.2』がリリースされている。彼の最大のヒット・シングル「The Wreck of the Edmund Fitzgerald」はこちらに収録されているので、ぜひ併せてお聴きいただくことをおすすめします。

「Early Morning Rain」「If You Could Read MY Mind」「Sundown」「Carefree Highway」「Rainy Day People」と、ライトフットならこれは!と、外せない代表曲が並ぶ。とはいえ派手な作りの曲はなく、万人が知るヒット曲もないものの、渋い歌声や技巧を凝らさないシンプルなアコースティックギターの響きからは、揺るぎない一本筋の通った強さを感じさせる。この人にも実はアル中の泥沼でもだえ苦しみ、さらには病で死の淵を彷徨ったこともあったのだ。

今回取り上げたコンピレーションでも聴けるが、1966年のデビューアルバム『Lightfoot!』(66)に収録されている「Early Morning Rain」が最初にヒットした曲で、彼のデビューのきっかけにもなった最もよく知られる彼の代表曲のひとつだ。1964年頃に書いたとされるが、時はまさにフォークブームで、シーンの中心はボブ・ディランを中心に回り始めており、この曲はライトフット本人のデビュー作が出るより先に、65年にピーター・ポール&マリー、イアン&シルヴィア、ジュディ・コリンズら(以外なところでグレイトフル・デッド)が取り上げてヒットしている。ライトフット自身より先に曲のほうが世に知られるという経緯があったところを見ると、当時からソングライターとしての彼に対する評価の高さがうかがえる(もちろん本人のバージョンも素晴らしい)。この曲の評判を聞いたディランのマネージャー、アルバート・グロスマンがデビューを後押しするわけである。

OKMusic編集部

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