これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!

これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!

ファンクの帝王
ジェームス・ブラウンが絶頂期に
リリースした名盤『ソウルの革命』

『Revolution Of The Mind』(’71)/JAMES BROWN

『Revolution Of The Mind』(’71)/JAMES BROWN

20世紀に登場したポピュラー音楽家のなかで、ジェームス・ブラウンは最も大きな功績を残したひとりである。彼のぶれない生き様は、後にヒップホップ文化の精神的な支柱になったし、何より“ファンク”という新しい音楽を創り上げたのだ。その圧倒的なグルーブは多くの音楽に溶け込み、文字通り世界を席巻していった。80枚以上のアルバムをリリースしているブラウンであるが、アルバムとして良いものはそう多くない。今回紹介する『ソウルの革命(原題:Revolution Of The Mind)』は、彼が絶頂期にあった71年のリリース。アポロ劇場でのライヴ録音で、完璧なアンサンブルとブラックパワーが炸裂する名作である。

クリフ・ホワイトの編集盤

先ほども述べたが、ブラウンのアルバムは80枚以上リリースされており、中には中途半端な出来のアルバムも少なくないし、インストのみの作品やジャズみたいなものまで存在するだけに厄介である。さまざまな顔を持つ彼の全貌を掴むためにオススメなのが、イギリスのJB研究家として知られるクリフ・ホワイトが選曲した2枚のコンピレーション盤『The CD Of JB』『The CD Of JB II』だ。今から30年ほど前の88年にリリースされたものだが、この2枚でブラウン入門ができるという優れもの。それまですっかり忘れ去られていたブラウンが、このホワイトの編集盤で新たなファンを得て息を吹き返したのだからすごい。この2枚のアルバムの少し前にリリースされたのが同じくクリフ・ホワイトの編集による『In The Jungle Groove』(‘86)。こちらはクラブDJ向きに編集された作品で、ブラウンのファンクアーティストとしての天才的な側面が浮かび上がるような編集となっている。

70年代のファンク

僕が中学生の頃、巷ではロックやポップスといった洋楽に人気が集中しており、ファンクを聴くチャンスはなかなかやってこなかった。おそらく最初に聴いたファンクバンドはタワー・オブ・パワーである。彼らの2ndアルバム『Bump City』(‘72)が出たばかりの時で、最初はタワーもシカゴやBS&Tのようにブラスロックとして紹介されていて、それで買ったのである。今から思えば詐欺のようなものだが、買ったおかげでタワーがブラスロックではなくファンクバンドであることが分かったのだから結果的には良かったのかもしれない。

73〜74年ぐらいになると、コールド・ブラッド、グレアム・セントラル・ステイション、スライ&ザ・ファミリー・ストーン、ファンカデリック/パーラメント、オハイオ・プレイヤーズなど、次々と多くのファンクグループが日本盤でリリースされ、ファンクという言葉は市民権を得たのである。

ジェームス・ブラウンのゲロッパ

まだ僕が中学生のある日、ラジオを聴いているとジェームス・ブラウンという人の「セックス・マシーン」という曲がかかっていて、「あれ、新しいファンクバンドかな?」と思っていたら、彼がファンクを60年代に創ったこと、この曲は70年にリリースされたことなどがDJによって解説され、ジェームス・ブラウンというアーティストを知ることになった。今の時代、“ゲロッパ”でお馴染みの「セックス・マシーン」を知らない音楽ファンはいないだろう。井筒和幸監督の『ゲロッパ!』(‘03)で知られたことも大きいが、ブラウンのファンクは70年代では早すぎたというか、全てが入り組んでしまった21世紀にこそ理解できる音楽のような気がするのだ。

「セックス・マシーン」に惹かれた僕はアルバムを買おうと思ったのだが、2枚組で高価なゆえに断念、結局は持っていた友達に借りた。その頃、ラジオでよくかかっていたオーティス・レディングやウィルソン・ピケットとはまったく違う音楽で、ブラウンのシャウトするヴォーカルとバックの煽りまくる演奏がソウルというよりはハードロックのようであった。彼の音楽を聴いているとアドレナリンが出まくり、いつも異様なほどの高揚感を味わうのだった。

このアルバム『セックス・マシーン』は1枚目がスタジオ録音、2枚目がライヴ録音という構成で、後にパーラメントで名を売るブーチー・コリンズがベース、クライド・スタブルフィールドとジャボ・スタークスが交代でドラム(どちらも名手である)、ジミー・ノーレンがギター、フレッド・ウェズリー、メイシオ・パーカー、ボビー・バードなど、ブラウンのバックを務めるJB’sも、この頃のメンバーが最強である。

本作『ソウルの革命』について

『セックス・マシーン』にすっかりはまってしまった僕は「ブラウンを買うならライヴ盤!」と決めていて、お金を貯めて(いや、この時はお年玉かも…)レコード屋に向かった。ジェームス・ブラウンのコーナーを探すとちょうど刑務所の鉄格子のなかでブラウンがこっちを睨んでいる(ように見える)『ソウルの革命』という2枚組のライヴ盤があったので入手。早速、家に帰って聴いてみたら…はい、ぶっ飛びました。

アルバムは名物MCダニー・レイによってミスター・ブラウンの紹介から始まる。全12曲のうちバラードは「Bewildered」「Try Me」の2曲のみで、残りの10曲は全て強烈なファンク。「Sex Machine」をはじめ「Give It Up Or Turn It A Loose」「Soul Power」「Super Bad」「Hot Pants」など、彼の代表曲ばかりがオリジナルよりもスピーディーにかつパワフルに演奏されている。名曲「Make It Funky」に至っては13分近くにわたる熱演だ。ここでのブラウンのヴォーカルとバックヴォーカルの掛け合いは、ゴスペルのようでもありラップのようでもあり、今聴いてもまったく古くなっていない。

ブラウンの生み出したサウンドは、ジャンプブルース、R&B、サザンソウル、ゴスペル、フリージャズなどをごった煮にして、それに迸るようなパワーと喧騒をプラスしたエキサイティングなグルーブ感で勝負している。何より彼の怒りと自己顕示欲、そして几帳面さのようなものがJBsのプレイに乗り移っていて、怒涛のサウンドが延々と繰り広げられている。特に後半5曲の流れは、ライヴ史上に残る圧倒的なパフォーマンスで、リスナーの脳髄を沸騰させるかのような強烈なインパクトがある。

本作は人類が生み出した史上最強のライヴ盤と言っても過言ではないだろう。これは決して大袈裟な表現ではないと思う。嘘だと思ったらぜひ聴いてみてください。

TEXT:河崎直人

アルバム『Revolution Of The Mind』1971年発表作品
    • <収録曲>
    • 1. イントロ~イッツ・ア・ニュー・デイ・ソー・レット・ア・マン・カム・イン・アンド・ドゥー・ザ・ポップコーン / INTRO/IT'S A NEW DAY SO LET A MAN COME IN AND DO THE POPCORN
    • 2. ビウィルダード / BEWILDERED
    • 3. セックス・マシーン / SEX MACHINE
    • 4. エスケイプ・イズム / ESCAPE-ISM
    • 5. メイク・イット・ファンキー / MAKE IT FUNKY
    • 6. トライ・ミー / TRY ME
    • 7. メドレー:アイ・キャント・スタンド・イット~マザー・ポップコーン~アイ・ゴット・ザ・フィーリン / FAST MEDLEY (I CAN'T STAND IT, MOTHER POPCORN, I GOT THE FEELIN')
    • 8. ターニット・ア・ルーズ / GIVE IT UP OR TURNIT A LOOSE
    • 9. スーパー・バッド / CALL ME SUPER BAD
    • 10. ゲット・インヴォルヴド / GET UP, GET INTO IT, GET INVOLVED (PART 1)
    • 11. ソウル・パワー / SOUL POWER
    • 12. ホット・パンツ / HOT PANTS (SHE GOT TO USE WHAT SHE GOT TO GET WHAT SHE WANTS)
『Gonna Take a Miracle』(’71)/Laura Nyro

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

4コメント
  • RT @OKMusicOfficial: ファンクの帝王ジェームス・ブラウンが絶頂期にリリースした名盤『ソウルの革命』 #JamesBrown https://t.co/6KWmJmRtwk
  • ファンクの帝王ジェームス・ブラウンが絶頂期にリリースした名盤『ソウルの革命』 https://t.co/2M7ThuaPZU
  • ファンクの帝王ジェームス・ブラウンが絶頂期にリリースした名盤『ソウルの革命』 - OKMusic https://t.co/M13rcTHc1E
  • ファンクの帝王ジェームス・ブラウンが絶頂期にリリースした名盤『ソウルの革命』 #JamesBrown https://t.co/6KWmJmRtwk