21世紀
ニューオーリンズ・ファンクの傑作、
ドクター・ジョンの
『クリオール・ムーン』
マック・レベナックが演じる
ドクター・ジョン
当初は本名のマック・レベナックでセッション活動していたが、ソロデビューの際にはドクター・ジョン(アフリカ起源のブードゥー教で主要な指導者のひとり)という芸名を名乗ることになった。68年にアトコレコードから『グリ・グリ』でソロデビュー。当時流行していたサイケデリックロックの風潮を見越してかどうかは分からないが、ワールドミュージック的な香りのする前衛音楽といった内容の不思議な作品であった。お断りしておくと、僕が高校生の頃、最初に聴いたドクターの曲は73年にリリースされた『イン・ザ・ライト・プレイス』所収の「ライト・プレイス・ロング・タイム」で、それもギターソロ(ゲストのデビッド・スピノザ)がカッコ良いという理由で好きになっただけで、彼をリアルタイムで追っていたわけではない。初期のアルバム(前述の『グリ・グリ』、2ndアルバム『バビロン』(’68))は大学生になってから聴いたがさっぱり理解できなかった。
3rdアルバムの『リメディーズ』(’70)あたりになるとニューオーリンズっぽい曲が少しは登場するものの、リリース当時に聴いていたら分からなかっただろうと思う。それはまだ日本の(いやアメリカでも)ロックファンの間でニューオーリンズ的なサウンドが流通していなかったからである。この後、しばらくしてザ・バンドの『カフーツ』(’71)や『ロック・オブ・エイジズ』(’72)、リトル・フィートの『ディキシー・チキン』(’73)など、ニューオーリンズ音楽に影響された作品が次々にリリースされ、ようやくニューオーリンズのリズム「セカンドライン」を知ることになるのである。
4枚目の『ザ・サン・ムーン&ハーブス』(’71)はイギリス録音を含み、デレク&ザ・ドミノスのメンバー(もちろん、クラプトンも)の他、ミック・ジャガー、グレアム・ボンド、メンフィス・ホーンズらが参加しており、このアルバムもまた実験的な要素が強いアルバムであった。