『コロシアム・ライヴ』は、
ブリティッシュロック界の最強集団
コロシアムが生んだ壮絶な作品

『Colosseum Live』(’71)/Colosseum
コーナー、メイオール、ボンド
グレアム・ボンドは当初はサックス奏者としてアレクシス・コーナーのブルース・インコーポレイテッドに参加、63年に自身のバンドとなるグレアム・ボンド・オーガニゼーションを結成し、ここではジャズキーボード奏者として頭角を現している。ボンドを支えるメンバーはジンジャー・ベイカー、ジャック・ブルース(クリーム)、ジョン・マクラフリン(マハヴィシュヌ・オーケストラのリーダー)、ディック・ヘクトール・スミス、ジョン・ハイズマンら強力なアーティストが参加し、ブリティッシュ・ジャズロックの原型を作り上げる。
グレアム・ボンド・オーガニゼーションのメンバーはクリームとマハヴィシュヌ・オーケストラという、後に一世を風靡するグループのメンバーが在籍していたわけだが、残りのジョン・ハイズマンとディック・ヘクトール・スミスが結成するのがコロシアムである。グレアム・ボンド・オーガニゼーションの解散後にリリースされたベスト盤的な作品『ソリッド・ボンド』(‘70)を聴くと、まだまだジャズの要素は強いがロック的なスパイスがちりばめられた素晴らしい作品に仕上がっており、ジャズロックが生まれる前夜の気配が感じられるのである。
コロシアム結成
同年にリリースされた2ndアルバム『Valentine Suite』は前作よりジャズ寄りのサウンドになり、グループとしてのまとまりが感じられる力作となったが、それだけにやはりギター&ヴォーカルとベースの弱さが際立ってしまっている。クリームのギターとベース&ヴォーカルがエリック・クラプトンとジャック・ブルースというすごいメンバーであるだけに、どうしても比べてしまうのだ…。
本作『コロシアム・ライヴ』について
実はこの『Daughter Of Time』の前、メンバー交代が中途半端な時期に3rdアルバム『The Grass Is Greener』(’70)がアメリカのみでリリースされているのだが、この作品は未聴なのでコメントはしないでおく。それにしても、『Daughter Of Time』はメロディーを重視したアルバムになっており、ジャック・ブルースの代表曲のひとつでマウンテンがヒットさせた「Theme For An Imaginary Western」をカバーしたのもその意識の表れに違いない。
そして、出た! 『コロシアム・ライヴ』(‘71)。LP当時は2枚組でリリースされ、日本でもロック少年たちに支持された。というか、僕が中学生の頃、コロシアムのアルバムでレコード店に置いてあったのはこれだけだった。まぁ、そんなことはどうでもいいが、これを最初に聴いた時、こんなにカッコ良いロックサウンドと出会ったのは初めてで、毎日聴いていた記憶がある。
ハイズマンのやたら手数の多いドラミング、クレム・クレムソンの超絶ギターテク、デイブ・グリーンスレイドの歪んだハモンドオルガン、ヘクトール・スミスのフリーキーなサックスプレイ、ファーロウのパワフルなシャウトなど、ロック本来のパワーとテンションに満ちた音がたっぷり詰まっていたのだ。今でもこれだけの熱を帯びたロックはなかなかない。本作は彼らのこれまでのスタジオ録音盤とはまったく違う次元のサウンドであり、本当のテクニックを持ったアーティストが本気を出すとこれだけの演奏ができるということを認識させられた作品である。
もしコロシアムを聴いたことがないなら、ぜひこの『コロシアム・ライヴ』を聴いてみてください。冬でも汗だくになるほどの熱〜い音楽がここにあるのだ。ロック史上に残るライヴ盤のひとつであることは間違いない。
TEXT:河崎直人