ソロピアノの可能性を拡げた
キース・ジャレットの
『ケルン・コンサート』

『The Köln Concert』('75)/Keith Jarrett

『The Köln Concert』('75)/Keith Jarrett

ピアノ1台のみの演奏はリスナー側に真剣に向き合う気がなければ、単調に流れてしまいやすいフォーマットではないだろうか。かつて、音楽が消費物でなかった60年代〜70年代中頃に日本各地に存在したジャズ喫茶では、重厚なソロピアノ作品であるダラー・ブランドの『アフリカン・ピアノ』(‘73)がリクエストされ続けたことはあるが、通勤や通学途中にイヤフォンやヘッドフォンで気軽に聴くような性質の音楽ではない。かといって、同じソロピアノでもジョージ・ウィンストンあたりになると雰囲気を楽しむBGM的な聴きかたが正しいような気もする。今回紹介するキース・ジャレットの2枚組(LP発売時)大作『ケルン・コンサート』(I75)はライヴでの即興演奏を収めた作品だ。キースはジャズ出身ではあるが、ここでの演奏は張りつめた緊張感とリリシズムにあふれた現代音楽のような独自のサウンドが繰り広げられている。本作はジャズ系のアルバムとしては異例の全世界で400万枚を超えるセールスとなった。

ロックの隆盛とジャズの衰退

R&Bやロックンロールの誕生を皮切りに、ボブ・ディランやビートルズが登場した60年代初頭あたりからポピュラー音楽界は革命的な進化を遂げる。それまで隆盛を誇っていたポップスやジャズの人気に翳りが見えはじめ、大手レコード会社は生き残りをかけてジャズからロックへと大胆にシフトしていくことになる。60年代後半〜70年代初頭には『イージー・ライダー』(‘69)、『明日に向かって撃て!』(’69)、『真夜中のカーボーイ』(‘70)、『いちご白書』(‘70)、『バニシング・ポイント』(71)など、フォークやロックを前面にフィーチャーしたアメリカンニューシネマの世界的流行で、ロックは若者を代弁する音楽となる。

マイルス・デイビスのエレクトリック化

60年代後半、クリームやグレイトフル・デッドといったサイケデリックロックやニューロックの人気グループはジャズの方法論(特にアドリブ)を取り入れることでロックを進化させ、BS&T、シカゴ、イフ、ブライアン・オーガーらのようなアーティストたちは、よりジャズに近いジャズロックを生み出していた。ジャズサイドのアーティストたちもそれに対して、ロックの8ビートを取り入れたり、ロックフェスに参加したりするなど、ロックに興味を示す者も少なくなかった。

中でも、マイルス・デイビスが68年にリリースした『マイルス・イン・ザ・スカイ』では、8ビートの導入と楽器のエレクトリック化を図っている。70年にはロック界にも大きな影響を与えた2枚組の大作『ビッチェズ・ブリュー』をリリースし、ロックとジャズのフュージョンを成し遂げた。このアルバムではチック・コリア、ジョー・ザビヌル、ラリー・ヤングの3人にエレピを弾かせるという画期的なことをやっている。この後、コリアはリターン・トゥ・フォーエバーを、ザビヌルはウェザー・リポートを結成し、それぞれフュージョン黎明期のリーダーとして活躍、マイルスの思考を自分たちなりに昇華させたのである。

OKMusic編集部

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