全シンガー・ソングライターの鏡、
キャロル・キングの傑作ライヴ盤
『リヴィング・ルーム・ツアー』

 キャロル・キングの名盤を紹介するのなら、『Tapestry / つづれおり』('71)を取り上げるというのが筋だろがッ! と怖い声が聞こえてきそうなのだが、なぜか『Living Room Tour』('05)を選ぶという。すいません。『Tapestry』のほうは万全を期して別の機会にと思います。そりゃもちろん、彼女の…という以上にポップス史上に残る名盤ですから。では、なぜこのライヴ盤を選んだのか。もともとは上がり症で人前で歌うのは大の苦手だったというキャロル。そのわりにはライヴ名作をいくつか残しているなと思ったのがきっかけでした。もっとも、本当は名盤『Tapestry / つづれおり』発売直後に行われた演奏会を記録した『The Carnegie Hall Concert』('96)を取り上げたかったのだが、これも念のためにiTunes Storeをチェックしたら、残念ながら取り扱われていなかった(最近このケースが多い)、トホホ。すっかり落胆してキャロル・キングのアルバム紹介を諦めようかと思っていたのだが、気を取り直してCD棚を眺めていたら、『Living Room Tour』('05)というベスト・ヒッツ・ライヴとも言うべきアルバムを持っているのを思い出し、久しぶりに聴いてみたらこれも名作であることを再確認したわけです。こちらのほうは、iTunes Storeでちゃんとラインナップされていることを確認いたしました、はい。

…といっても未練がましく『The Carnegie Hall Concert』はぜひ入手していただきたいアルバムであることは強調しておきたい。『Tapestry』がミリオンセラーを記録し、凱旋公演ともいうべきかたちで開催された同コンサートは、まだまだライヴ慣れしていないキャロル(それにしちゃ、堂々とした歌いっぷり)の初々しく、シンガーソングライター時代の到来を印象付ける生々しい瞬間をとらえた作品として実に感動的なのだ。ゲストでジェイムス・テイラーも出演し、「You've Got A Friend」をふたりでデュエットもする。そのジェイムス・テイラーと言えば、円熟の域に達したふたりが久々に顔を合わせ、かつてのヒット曲をたっぷり披露する『Live at the Troubadour CD+DVD』('10)も見事なライヴ作品なので、こちらも大お勧め盤…というわけで、のっけから長々と妙なイントロになってしまったのだが…。

OKMusic編集部

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