デレク&ザ・ドミノズ結成の
きっかけとなったライヴ盤の傑作が
デラニー&ボニー&フレンズの
『オン・ツアー・ウィズ・エリック・
クラプトン』だ
ジョージ・ハリスンと
エリック・クラプトン
ザ・バンドへの加入を打診するものの、あっさりと断られたクラプトンに、ジョージがザ・バンドに負けない本物のロックグループだと紹介したのがデラニー&ボニーだったのである。ジョージはデラニー&ボニーのアルバムをアップルレコードからリリースしようと画策するのだが、契約上の関係でお流れとなり、その代わりというわけではないだろうが、デラニー&ボニーにイギリスツアーの話を持ちかける。快諾したデラニーらは、のちのデレク&ザ・ドミノズのメンバーとなる凄腕のミュージシャンたちを引き連れて渡英、そこにはひと足先にバンドメンバーに収まっていた元トラフィックのデイブ・メイソンもいた。
70sロック界のトレンドとなった
スワンプロック
デラニー&ボニーがやっている音楽はアメリカ南部のブルース、ゴスペル、カントリーをごった煮にしてロック風味をまぶしたサウンドであり、それはいつしかスワンプロックと呼ばれるようになる。スワンプロックという言葉を最初に使ったのはアトランティックレコードのプロデューサー、ジェリー・ウエスクラーだと言われているが、70年初頭のロックシーンはイギリス、アメリカ、日本を問わず、スワンプロックに大きな注目が集まっていたのである。その中心にいたのがレオン・ラッセルであり、デラニー&ボニーだったのだ。
スワンプロックの立役者、
レオン・ラッセルとデラニー&ボニー
本作『オン・ツアー・ウィズ・エリック
・クラプトン』について
本作はロンドン近辺のクロイドンでのライヴの模様を収録しており、ギターはデイブ・メイソンとクラプトンが参加しているために、しかもライヴなだけに、かなりロック色の濃いサウンドとなっている。フレンズのメンバーは、のちにデレク&ザ・ドミノズとなるカール・レイドル、ジム・ゴードン、ボビー・ウイットロック、そして70年代のストーンズを支えるホーン奏者のジム・プライスとボビー・キーズも参加している。
収録曲はデラニー&ボニー本来のサウンドである、サザンソウル混じりのスワンプロックの面(「シングス・ゲット・ベター」「ドント・ウォント・トゥ・ディスカス・イット」)もあるが、ここではクラプトンのギターを前面にフィーチャーした、若々しいギターロックが中心となっている。メイソンとクラプトンのツインリードなども楽しいが、やはり圧倒的なのはボニー・ブラムレットのヴォーカルとプライス&キーズのホーンセクションだ。本作は、歌、演奏ともに充実していて、ロック史上に残る名盤であることは間違いない。それが証拠に、僕は中学生の頃から本作を聴き続けているが、毎回引き込まれているぐらいなのだ。2010年にはツアーの全貌を収録した4枚組のデラックス・エディションがリリースされ、これも大きな話題となった。
余談1:カーペンターズが大ヒットさせた「スーパースター」はデラニー&ボニーがオリジナルなのだが、残念ながら本家はシングルのB面リリースのため、現在ではベストアルバムぐらいにしか収録されていない(タイトルは「グルーピー」)。
余談2:本作のジャケット表で助手席の窓から足が出ているのだが、これはボブ・ディランである。このライヴ時に撮影された写真でジャケ写真にマッチするものがなかったらしく断念し、66年のディランのツアーで撮られた写真を使ったようである。
なお、本作はビルボードチャートで全米29位、全英39位となり、デラニー&ボニーのアルバムでもっとも売れた作品となった。彼らのアルバムはどれも秀作で甲乙付けがたいので、もし彼らのアルバムを聴いたことがないのなら、どれでもいいから聴いてみてほしい。きっと新しい発見があると思うよ♪
僕の個人的なオススメは『デラニーよりボニーへ』(‘70)で、このアルバムにはデュアン・オールマンやリトル・フィートの超絶ベーシスト、ケニー・グラドニーが参加しているし名曲揃い。あ、でも、『ホーム』(’69)にも名曲があるし、『モテル・ショット』(‘71)はロック界初のアンプラグド作品で、こちらも素晴らしい。やっぱり、どのアルバムもオススメです!
TEXT:河崎直人