レディオヘッドの原石的魅力がここに
は詰まっているデビューアルバム『P
ABLO HONEY』

レディオヘッドの名盤と言われたら2ndアルバム『the bends』、もしくは全世界的に評価された3rdアルバム『OK COMPUTER』、もしくは実験的ながら多くのリスナーに衝撃を与えた『KID A 』を挙げる人が多いかもしれない。実際、アルバムをリリースするたびにバンドは恐るべき進化を遂げていったが、個人的にはレディオヘッドの代表曲のひとつ「CREEP」を聴いていなかったら、このバンドに関心を持たなかったかもしれない。それぐらい「CREEP」のメロディーは切なく美しくギターはそのセンチメンタリズムを一瞬で切り裂くほどに衝撃的だった。だから、やっぱり、記念すべき1stアルバム『PABLO HONEY』抜きに彼らを語ることはできない。

トム・ヨークのシニカルで実は冷静な視

 現在はニューアルバムの制作に突入中。トム・ヨークが新たなソロ作品を発表したばかりのレディオヘッドは、音楽の果てしない旅を続けてきたバンドだ。メンバーはトム・ヨーク(Vo&Gu)、ジョン・グリーンウッド(Gu&Key)、エド・オブラエン(Gu)、コリン・グリーンウッド(Ba)、フィル・セルウェイ(Dr)のオックスフォード出身の5人組。すでに結成から24年以上の月日が流れているが、レディオヘッドの飽くなき音楽への欲求は尽きることがないようだ。ニルヴァーナのカート・コバーンはビッグビジネスの中で苦しみ、手に負えない波の中で溺れてしまったようにも見えたが、神経症だとか躁鬱とか言われていたトム・ヨークは、初期から自分の闇の部分に自覚的だったように思える。
 アルバム『PABLO HONEY』のライナーノーツに非常に印象深い彼のコメントが載っているので引用させていただく。
「俺が思うのはさ、本当に凄い音楽っていうのは、どうしようもなくデカいエゴを持った人間によって生み出されるんじゃないかっていうことなんだよね。それもとてつもなくネガティブなエゴを持った人間——本当に自分自身を憎んでいるような人間こそが偉大な音楽を生み出すことができるんだってね」
 極端な意見かもしれないが、20代で夭逝してしまった偉大なロックミュージシャンのことを思うと、妙に説得力がある。そして、トム・ヨーク自身も間違いなく、そういうタイプのミュージシャンなのではないだろうか。違うのは彼が自分の歪んだ部分や他者との違和感に向き合い続けてきたからかもしれないし、メンバーに恵まれていたからかもしれないし、頭が切れて屈折した性格が幸いして雑音をシャットアウトして純度の高い音楽を創ることに集中できたからなのかもしれない。トム・ヨークはアーティスト気質でありながら、同時に音楽マニアに近いリスナーの視点を持ち続けているタイプの人間なのだと推測する。ナルシスティックどころか自己嫌悪に陥りやすいことは歌詞が物語っているが、シニカルで冷静な目線を持っているゆえにスターのプレッシャーに押しつぶされなかったとも言えるのではないのだろうか。ちなみにレディオヘッドは1stアルバム『PABLO HONEY』に否定的で、なかったことにしたいとまで発言していたようだが、このアルバムは彼らの原点であり、そのメランコリックなメロディとギターサウンドは未完成かもしれないが、今なお、普遍の輝きを放っていると思う。

アルバム『PABLO HONEY』

 リリースされた当初、本国イギリスでのチャートアクションはそれほど芳しくなく、むしろアメリカで高い評価を得たアルバム。その後の大ブレイクの引き金となった2曲目の「CREEP」は憂鬱を絵に描いたようなトム・ヨークの歌と切なく美しいメロディーが素晴らしく、サビに入る前の破壊的なギターを聴いた時は鳥肌が立った。おそらく、この音を真似したギターキッズは限りなくいるだろう。間違いなくレディオヘッドを世界的なバンドに押し上げた神曲である。アルバム全体で言うと確かに「CREEP」が突出している感があるし、名曲盛りだくさんという一枚ではないが、1曲目「YOU」は起伏のあるドラマティックなアレンジと緊張感のある演奏、トム・ヨークの危機迫るシャウトに持っていかれるナンバーだ。ベースのフレーズやギターのカッティングが刺激的なスパイスになっている6曲目「ANYONE CAN PLAY GUITAR」は《天国に行ったって俺はバンドをやっていたい》と歌うトム・ヨークの意志が刻まれた曲で、これも名曲だと思う。ひとひねりあるアレンジがいかにもUKのバンドらしく、ブラーに近いセンスも感じられる「POP IS DEAD」も面白いし、荒削りかもしれないが、バンドサウンドをより強化させていく2ndアルバムへと向かっていくレディオヘッドの原石的魅力がここには詰まっている。その後の彼らの躍進はご存知の通りだが、楽器を持ったことがない少年、少女にバンドを組ませる青臭いエナジーがあるという意味でこれは名盤!

著者:山本弘子

OKMusic編集部

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