日本中の少年少女達をシビれさせたス
トレイ・キャッツのデビューアルバム

日本はもちろん、今も世界中で根強い人気を誇るロカビリー。しかし、ブライアン・セッツァー(Vo, G)率いる3人組、ストレイ・キャッツの成功がなかったとしたら、50年代に生まれたロカビリーは今日まで生き残れただろうか?

 今年5月、ビッグバンドを率いて、日本各地を回ったブライアン・セッツァー(名義はブライアン・セッツァー・オーケストラ)のライヴ会場には老若男女、実に幅広いファンが集まった。その中で一際目立っていたのが50年代ファッションでビシッとキメたおじさん、おばさん…いや、大変失礼しました。かつての不良少年・少女達だった。
たぶん、ブライアン・セッツァーがストレイ・キャッツのフロントマンとして、この“涙のラナウェイ・ボーイ”という邦題が付けられたセルフタイトルのデビューアルバムを引っ提げ、颯爽とロックシーンに現れた時、ファンになって以来、彼らはブライアンに変わらぬ忠誠を誓い続けているに違いない。デビューアルバムのリリースが81年だから、それから33年。30年経っても変わらない忠誠心には脱帽するしかない。
しかも、彼らはただレコードを聴いているだけではない。ブライアンが来日すると聞けば、ちゃんとオシャレして、ライヴを観にやってくる。そういう熱心なファンが日本中にいるから、ブライアンの来日ツアーは毎回、どこに行っても大盛況だ。そこまで愛されているミュージシャンが果たして、どれくらいいるだろう? その後、30年にわたって、その人の趣味・嗜好を決定してしまったんだから、いかにストレイ・キャッツの影響力が大きかったか窺える。
 確かにストレイ・キャッツの登場は衝撃的だった。個人的な思い出を書かせてもらうと、その頃、毎日楽しみにしていた『ザ・モンキーズ・ショー』をテレビで観ていた時、番組の間にこのデビューアルバムのコマーシャルが流れたんじゃなかったかな。記憶が曖昧だが、そこで流れていた「ロック・タウンは恋の街(Rock This Town)」を聴いた時、なんだこれは?!と全身に電流が走ったことは覚えている。そんな音楽(いわゆるロカビリー)、それまで聴いたことがなかったし、ブライアンの金髪のポンパドール(アルバムのジャケット参照されたし)も見たことがなかった。
もちろん、ブライアンが今日まで精力的に活動を続けているからには違いないが、日本における根強い人気は当時の少年少女達にとって、ある意味、未知の音楽だったロカビリーを、「こいつが今、一番イカしてるんだぜ!」と言わんばかりに奏でた、その時の衝撃の大きさによるところが大きいように思う。冒頭に書いた来日公演で老若男女、幅広いファンが一番盛り上がるのは、デビューアルバムに収録されている「ロック・タウンは恋の街(Rock This Town)」と「悩殺ストッキング(Fishnet Stocking)」だった。
それは海外でも同じ、いや、日本以上に大きかったはず。ニューヨークからロンドンにやってきたストレイ・キャッツが演奏していたロカビリーは新しいロックンロールとして、かの地のパンクシーンで大歓迎され(このアルバムは全英6位を記録。3曲のヒットシングルが生まれた)、その後、ストレイ・キャッツを追いかけるように新しいロックンロールを演奏するバンドが次々に現れてきた。ネオ・ロカビリー・ブームの誕生だ(この時期、日本でも多くのロカビリーバンドがデビューしている)。50年代半ばに生まれたロカビリーは、たぶんストレイ・キャッツがいなければ、オールディーズとして一部の人が楽しむものになっていただろう。
 しかし、ストレイ・キャッツが現れたことで、ロカビリーは当時の最新スタイルだったパンク/ニューウェイヴと結び付き、まさにロックシーンの新しい波として、見事、息を吹き返したのだ。このアルバムをリリースした翌年の82年、ストレイ・キャッツはローリング・ストーンズのUSツアーでオープニングアクトを務めている。ストーンズのメンバーたちはきっと、こんなにカッコ良いロックンロールを演奏する若い連中がいるのかと驚いたに違いない。
その後もロカビリーはハードコア/メタルと結び付き、より過激化したサイコビリーを経て、グランジ/オルタナ・シーンに現れたレヴァレンド・ホートン・ヒートやグリーン・デイらメロコアバンドとステージをともにしてきたリヴィング・エンドらによってアップデイトされていった。
 そして、現在ではジェフ・ベックのアルバムにゲスト参加したことによって、より一層注目されるようになった女性シンガー、イメルダ・メイやロンドンの若き4人組、The Caezars、そして『FUJI ROCK FESTIVAL '10』に出演したフランスの伊達男3人組、ムスタングらによってしっかりと受け継がれ、進化を遂げている。もちろん、ブライアンもブライアン・セッツァー・オーケストラをはじめ、数々のプロジェクトを使いわけながらロックシーンの第一線で活躍している。ストレイ・キャッツが蘇らせたロカビリーが廃れるなんてことはもはや考えられないのである。

著者:山口知男

OKMusic編集部

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