ザ・ビートルズ解散後、
初めてメンバー全員が参加した
リンゴ・スターの代表作『リンゴ』

『Ringo』(’73)/Ringo Starr

『Ringo』(’73)/Ringo Starr

今月27日からリンゴ・スター・オールスター・バンドの来日公演が始まっている。オールスター・バンド名義での第1回目の来日は1989年だったので、今回は30周年という節目の年。そんなこともあってか、リンゴは78歳であるにもかかわらず全9公演(うち2公演は追加公演ではあるものの…)という力の入れようだ。公演の成功を祈念する意味も込めて、今回はリンゴが73年にリリースしたソロアルバム『リンゴ』を取り上げる。本作『リンゴ』はソロ作品としては3枚目となるのだが、その前に出た『センティメンタル・ジャーニー』と『カントリー』の2枚は、彼の趣味的な側面にスポットを当てた企画作品のような性質なので、この『リンゴ』こそが本質的なデビューソロ作だと言ってもいいだろう。なにしろこのアルバム、すごい面子をバックに携えチャートでも好成績を残すなど、彼の代表作となった。

ザ・ビートルズのムードメーカー

ザ・ビートルズというグループの中にあって、リンゴ・スターは地味な存在だと思われがちである。確かに、メンバー4人のうち、強烈な個性を持った天才肌のジョン・レノン、ストイックなメロディーメーカーのポール・マッカートニー、優れたソングライティングの才能を持ち、かつハンサムなジョージ・ハリソンの3人と比べると、リンゴは分が悪いかもしれない。しかし、彼は他のメンバーにはない“癒やし”の感覚を持っている。ジョンとポールの関係が悪くなってピリピリした雰囲気が続いた時、リンゴの緩衝材的な存在はメンバーにとって大きかったはずだ。それは、彼がリードヴォーカルを務めた「オクトパス・ガーデン」「イエロー・サブマリン」「ホワット・ゴーズ・オン」などを聴いても分かる。そのほんわかしたムードは、真っ直ぐで優しいリンゴの人間性を表していると言えるだろう。

とはいっても、ビートルズ末期の頃はストレスも極限に近かっただろうし、実際大きなストレスを抱えスタジオから逃げ出してしまったこともある。映画俳優としての仕事を手掛けたのも、グループ内の人間関係に押し潰されそうになって第2の人生を模索していたからである。彼の俳優としての実力は賛否あると思うが、それでもビートルズ映画の『ビートルズがやってくる ヤア! ヤア! ヤア!』(‘64)『 HELP! 4人はアイドル』(’65)の2本と『おかしなおかしな石器人』(‘81)でのユーモアあふれる演技は、彼ならではのとぼけた味が出ていて素晴らしかった。

30周年となるオールスターバンド

そんな彼の人懐っこい性格は、身近にいる多くのアーティストも知っており、最初のオールスターバンドが結成された時、そのメンバーの層の厚さに驚いたものだ。ジョージとリンゴが共に大好きだったザ・バンドのメンバー3人をはじめ、1971年のバングラデシュのコンサートでリンゴとツインドラムを務めたロック界きっての名ドラマーのジム・ケルトナー、ニューオーリンズ音楽の重鎮で、セッションマンとしても超売れっ子のドクター・ジョン、後期ビートルズでキーボードを担当したビリー・プレストン、ジェームズ・ギャングやイーグルスのメンバーで、ソロアーティストとしても知られるジョー・ウォルシュ、ブルース・スプリングスティーンのEストリートバンドで有名なクラレンス・クレモンズ、元グリンのリーダーで名ギタリストのニルス・ロフグレン(Eストリートバンドのメンバーでもある)ら、アメリカのロック界を代表するアーティストたちであった。このメンバーで初来日したのが1989年、この時僕は大阪公演に行った。詳細は忘れてしまっているが、リンゴがザ・バンドの「ザ・ウェイト」を演奏している事実に大興奮したことだけはよく覚えている。最初のオールスターバンドはアメリカンロックが中心の組み立てであるものの、リンゴがヴォーカルの曲ではビートルズの香りがしっかり漂い、ひときわ大きな歓声となっていた。

この後もオールスターバンドは不定期ながらも継続し、都度メンバーを入れ替えて現在は第14期にあたる。今回の来日公演は、ポールのバックメンとしても活躍したアヴェレージ・ホワイト・バンドのヘイミッシュ・スチュワート、サンタナやジャーニーで活躍したグレッグ・ローリー、メン・アット・ワークのコリン・ヘイ、そしてトトの名ギタリスト、スティーブ・ルカサーらが参加しているので、今回もまた楽しいステージになることは間違いない。

OKMusic編集部

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