アフリカンビートと都市の鼓動の融合
! のちの音楽シーンに多大な影響を
与えたトーキング・ヘッズの『リメイ
ン・イン・ライト』!

トーキング・ヘッズで一番好きな曲と言えば個人的には、1977年にリリースされたデビューアルバムに収録されている「サイコキラー」であるが、アルバムで言うと今、聴いてもこれを約35年前に発表したことが信じられない4thオリジナルアルバム『リメイン・イン・ライト』である。トーキング・ヘッズならではのニューウェイブ的センスとアフリカンミュージックを掛け合わせたことにより、緊張感と野生が融合したような独特のサウンドを生み出した作品、ライナーノーツを執筆している今野雄二氏は“これぞ原始と原子の火花散る出会い”と評しているが、のちのクラブミュージックにも多大なる影響を及ぼしたのではないだろうか。新たな音楽を生み出そうとする開拓精神に貫かれた一枚である。

デビュー当時から異彩を放っていたトー
キング・ヘッズ

 初めてトーキング・ヘッズを見たのは「サイコキラー」のMVだったと記憶しているが、とにかくギターを弾きながら歌うデヴィッド・バーンが強烈だった。神経症的な表情とパフォーマンス、ピリピリ感が漂っているヴォーカル。化学者もしくは奇妙な発明家がロックミュージシャンになって出てきたような印象で、“サイコキラー”というタイトルもハマりすぎだと思った。ちなみにスコットランドで生まれたデヴィッド・バーンの父親は電子工学の技術者だったそうで、何だか妙に納得である。比較的、最近のインタビューでデヴィッド・バーンは亡くなったルー・リードのことに触れ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドが大好きでルー・リードとの交流がなかったら、N.Yに移り住んでいなかったほど影響を受けたと語っているが、トーキング・ヘッズはニューヨークパンクの拠点となったライヴハウス『CBGB』を中心に活動したバンドであり、デヴィッド・バーン、ティナ・ウェイマス(Ba)、クリス・フランツ(Ds)と1975年に結成。翌年にジェリー・ハリソン(key&Gu)が加入し、4人編成になり、パンク/ニューウェイブシーンの中で“インテリバンド”と評され、異彩を放つことになる。そういう評価を得たのはバーンの資質もありつつ、2ndアルバム『モア・ソングス』(原題:More Songs About Buildings and Food)でブライアン・イーノ(ロキシー・ミュージックの初期メンバー。その後、アンビエント・ミュージックの先駆け的存在、名プロデューサーとして活躍する)をプロデューサーに迎えたことも大きいだろう。トーキング・ヘッズはこの頃からリズム、グルーブに傾倒していくようになり、奇才:デヴィッド・バーンと鬼才:ブライアン・イーノのタッグが画期的なアルバム『リメイン・イン・ライト』を生むのである。

『リメイン・イン・ライト』

 前年にリリースされた『フィア・オブ・ミュージック』に続いてブライアン・イーノをプロデューサーに迎えたアルバムで、前作でロバート・フリップ(キング・クリムゾン)をゲストに迎えアフリカン・ファンクを取り入れた曲「Zimbra」を創り上げたことが、このアルバムに影響を及ぼしている。収録されているのはバーンとイーノによるオリジナル曲で、レコーディングを行なったのは数々の名盤が生み出されたバハマのコンパスポイントスタジオ。インスピレーションによりスタジオに入ってから楽曲が生み出され、アフリカ音楽特有のワンコードによるナンバーを収録された。つまり、全ての楽曲にコード展開は存在しないのである。とても、そう思えない代表曲がサビのキャッチーなメロディーが印象的な4曲目の「ワンス・イン・ア・ライフタイム」でバーンの才能を感じさせるが、3曲目「グレイト・カーヴ」では象の鳴き声のようなギターでお馴染みの、これまた奇才:エイドリアン・ブリュー(キング・クリムゾン、フランク・ザッパ、デヴィッド・ボウイなどに参加)がたっぷりソロを聴かせてくれていて、このあたりのミュージシャンが好きな人は必聴の一枚でもある。実験的な作品であることは間違いないので、メロディーに重きを置く人や血湧き肉踊るようなブラックミュージックが好きな人にはとっつきにくいかもしれないが、アフリカンミュージックを都会的にアーティスティックに昇華し、反復するリズムがクセになるコンクリート×土着のダンスロックを生み出したという意味でも、このアルバムは名盤として語り継がれていくだろうと思う。

著者:山本弘子

OKMusic編集部

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